番犬、仕事はしますよ?
ラトさんとマキアさんと一緒に案内された部屋へ入ると、そこには大きなテーブルを囲むようにペペルの乙女達と身なりの良い茶色の長い髭を生やした神官のおじさんが座っていた。
あれ?
玄関にはいなかったけど、神官さんも来てたんだ。
町長のタルトンさんが、ハッと気がついて私達を見て、
「ペペルの小神官様のバレウス様です。今回、乙女達を連れてこちらまで来て下さったんです」
小神官?!
ディオ様と同じく偉い立場の人じゃないか!
慌てて頭を下げると、バレウス様はふふっと柔らかく笑い、
「ああ、スズさんですね。お噂はかねがね。今回、大神官様がようやくこちらへ来るのを許可して下さって‥、いやはやわざわざ来て下さったのに申し訳ないですね」
「あ、はい?」
ん?えーと、これは嫌味‥かな?
私が来たけど、ペペルの乙女がいるからお前はいらんって事?
まさかね〜〜、だって小神官様がそんな嫌味を言う?ラトさんを見上げて違うよねって確認しようとしたら、眉を寄せて睨んでいる‥。あ、やっぱり嫌味だったらしい。
タルトンさんは、バレウス様の発言を聞いてちょっと慌てていたけど、すみません‥。神殿の者なのに一般人を困らせてしまって。私はバレウス様ににっこり微笑み、
「ペペルの乙女の皆さんもいれば百人力ですね!どうぞよろしくお願いいたします」
むしろどうぞどうぞ歌っちゃって下さい!の私は笑顔である。
そっちのが断然私はいいので、喜んで歌うのはお任せします。そう思って返事をするとバレウス様が若干こめかみをひくつかせたけど、あ、これは純度百パーセント嫌味でなくお願いしたい気持ちから出た言葉です。
タルトンさんはなんとも言えない空気をなんとか和ませようと、私達に席を勧めるのでようやく椅子に座った。
「さ、さて、皆様本日は我がペペルの街の為にお集まり頂いて感謝いたします。この温泉ではそうですね、1ヶ月と少し前からお湯の量が減ってきまして‥、ここ最近は本当にほぼ出ない事態になってしまいまして‥。なんとか近隣の村からお湯を引かせて貰って、温泉街として面子を守っているのが現状です」
1ヶ月と少し‥。
丁度パトの神殿で色々起きた辺りかな。
そんなことを考えていると、バレウス様がにっこり笑う、
「確かにそれは大変ですね。本当にすぐに向かう事が出来れば良かったのですが‥」
「あ、いえいえ!とんでもない。ただ、本来ならすぐにでも歌って頂きたいところなんですが、源泉がある洞窟の調査も満足にできてなくて‥」
タルトンさんの声にペペルの乙女達が騒めくと、バレウス様がたしなめるようにチラッと視線を送るとすぐに静かになった。なるほど、結構怖い感じなのね。
「それでは、まず洞窟の調査から‥ですね?」
「そうですね。しかしなぜか源泉が湧く洞窟を調査しようとすると濃霧が発生して、どうにも進めず。そうこうしていると、魔物まで出てきて‥」
ほとほと困り果てた顔をするタルトンさんに、ラトさんが
「それではまずは調査をしに、私達が向かいましょう」
そう話すとペペルの乙女達の視線が一気に甘くなる。‥すごい、ラトさん発言しただけで空気を変えてるよ。ラトさんの言葉にタルトンさんは嬉しそうに微笑み、
「うちの街の自警団も騎士様と一緒に参加させて下さい」
「では、まず話し合いをして、すぐに現場へ向かいましょう」
「ありがとうございます!助かります」
タルトンさんはすぐに秘書らしき人を呼んで声を掛けると、ペペルの乙女達と私を見て、
「それではペペルの神殿の乙女の皆様とスズさんは先に滞在先の宿にご案内しますね。今はお湯を引いてますが、本来厳選から直接温泉を引いて入る事が出来る有名な宿なので、まずはゆっくり休んで下さい」
温泉!!
目をキラキラと輝かせてしまうと、バレウス様はそんな私をチラッと見て、ふっと鼻で笑った。‥ペペルの神官さんってこんなに嫌な感じなの?ベタルの神殿の神官のお爺ちゃん達と随分と違うなぁと思っていると、ラトさんが私の手をギュッと握る。
ん?どうかした?
ラトさんを見上げると、バレウス様を静かに睨んでいる。
ちょ、ちょーーーい!!守護騎士!!そんな目で神官さんを睨んじゃだめ!!一応、一応仕事仲間だからね??
「‥ラトさん?落ち着いてね?」
「‥わかっている。さっさと魔物を倒して、さっさと帰ってくる」
「そんなすぐ終わる問題なんですか?」
「終わらせる」
ラトさんの言葉に隣のマキアさんが「そんな簡単に終わらせられないっての‥」と、ちょっと遠くを見つめて呟いた。‥なんていうか、お疲れ様です‥。




