番犬、ペペルへ。
ちょっと離れたベッドで手を繋いで寝た翌朝。
気が付くと、私はラトさんの分の毛布まで掛けられて目を覚ました。
ラトさん早く起きたなら、起こしてくれればいいのに‥。
もそっと体を起こして、隣のベッドを見て‥、
昨日の自分の行動をふと振り返って、じわじわと時間差で顔が赤くなって、そのまま前のめりに倒れた。
なんだ!おでこにチューって!!!
そんなのお礼でもなんでもないよね?ラトさんにとっては迷惑行為だよね?そりゃ迷惑なんて言える訳ないよね?ああああああ、昨日の私はどうかしてた!ちょっと甘い空気におかしくなってた。
と、倒れていた自分の首元がほんのり明るいので、そちらに目を向けると、昨日ラトさんがくれたネックレスに付いている巾着から光が漏れている。
「あ、そういえば付けたまま寝ちゃったんだっけ」
体を起こして、小さな白い巾着をちょっとだけ開くと、小さな小石がピカピカと光っていて朝でも綺麗だ。‥なんだかラトさんみたいだなぁ。本当だったら私の側でなくてもっとふさわしい場所で、ふさわしい人の側で光っている人だろうに。
「私の番犬なんかで、本当に良かったのかな‥」
いや、今はそういうの止めよう。
なにせ今日はペペルに行くんだ。
ラトさんにとって恥ずかしくないように乙女として、しっかり仕事をせねば!と、手をギュッと握るけど‥、
不安しかない〜〜〜〜!!!!
ペペルって、どんな人達がいるか全く知らないし。
歌の神様?もう少し事前準備が欲しいっていうかね?なんて思いつつ、身支度をして寝室を出るとラトさんが丁度部屋に入ってきた。
「あ、ラトさん。おはようございます」
「ワン!」
ラトさんは嬉しそうに微笑んで私の手を握ると、
「朝食、作るのを手伝う。食べたらニーナさんを迎えに行こう」
「あ、はい」
「あとベタルからマキアが来ることになった」
「え?!マキアさん??」
「ああ、昨日魔石で連絡したら、ペペルから依頼が来ていたのでマキアが行くことになったそうだ」
そうなのか、見知った顔があるならちょっと安心だ。
二人で朝食を作ってテーブルに着くと、
「本当なら俺だけで良かったんだが‥」
「まぁまぁ、ラトさん。仕事仲間がいるって安心ですよ?」
不満そうなラトさんに笑ってそう話すと、玄関の扉がノックされる。
「あれ?ニーナさんかな?」
私がそういうと、ラトさんが確認しに行ってくれた。
と、そこには若干ヨロヨロのマキアさんが立っていて、私もラトさんも目を丸くした。
「お、おはようございます。マキアさん‥、お久しぶりです。大丈夫、ではなさそうですね?」
「う、うううう〜〜、もういきなり!いきなりペペルへ行けって騎士団長に言われるし、ペペルの神殿にも乙女は来られないんですか?って聞いたら「ダメに決まってるだろ」って言われて、いや困ってるからね?って説明しても納得してくれなくて‥」
うん、お疲れ様。
しかし、随分ペペルは反対するんだなぁ。
今から行くのに、最初の一歩の手前から困難な感じに私は遠くを見つめると、ラトさんが慌てて私の手を握り、
「大丈夫だ。ちゃんと守る」
「あ、そこは本当に心配してないんですよ。ただ、これで奇跡が何も起きなかったら、私はもう生きていけるのかな?って‥」
「奇跡が起きなくても問題ない」
「いや、問題大有りですよ‥」
思わずツッコむと、マキアさんはうんうんと頷きつつ、椅子に座って涙目で朝ご飯を見つめ「美味しそう」って呟くので、ひとまず一緒に座って朝食を勧めると、半分泣きながらマキアさんは食べていた。‥騎士さんって本当にお仕事大変だよね。
「うう、俺もここに住みたい‥」
「それはダメだ」
「ラトさん、早い。回答が早い」
「神の使いに「番犬」として任命されているから無理だ」
「「番犬として任命‥」」
いいのか、守護騎士。
マキアさんと声を揃えて突っ込んじゃったけど、それでいいのか。
っていうか、そうだよね‥。神様の使いに任命されたから私の「番犬」として一緒にいるんだ。‥だよね、わかってたはずなのにその事実にちょっと寂しくなってしまった。




