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番犬、お仕事引き受ける。


とんでもない案件を持ってきたニーナさんと、ちょっと申し訳なさそうな村長さんを我が家へ招き、お茶を淹れると村長さんはニーナさんをじとっと見つめるけれど、ニーナさんはどこ吹く風である。



「っていうか、温泉を戻すなんて私には無理ですよ。奇跡だって、普段はポンコツだって知ってるじゃないですか」



‥自分で言っててなんだけど、切ない。

しかしニーナさんはニンマリ笑って、


「ちなみに成功しなくても、報奨金は出ます」

「え、待って?成功しなくても報奨金が出るってどういう事?」

「だから温泉地に最近魔物が出るんだって〜。だからそれを追い払ってくれるだけでも大助かりらしいよ」

「そっち先に言って下さいよ!!」


しかもそれは私達に頼むより、騎士団案件なのでは?

私がラトさんを見ると、ちょっと眉を下げる。



「‥反王族派の動きもあったしな‥。色々調査しているらしいから人員を割くのが難しいのかもしれないな」

「あ、そっか‥。調査ってまだまだ終わってないんですね」

「なにせ姫自身がしっかりと問題を解決したいと宣言したからな」



そうだったね‥。

でもまだまだ終わらないなら、それはそれで安心かもしれない。

なにせ問題解決したら、リアナ姫は獣人国へ輿入れ‥、私は祝福の歌を歌う‥?


「う、ううう!!!!胃が痛い!!」

「スズ、疲れもあるのでは?」

「いや、もうこれ完全にプレッシャーです〜〜〜」


私とラトさんのやり取りにカラカラとニーナさんは笑って、「いいじゃ〜ん、湯治!」っていうけど、そもそも温泉が枯れているのに湯治も何もあったもんじゃないでしょうに‥。


でもニーナさんにお世話になった手前、それを断るのも悪いし。

あと純粋にペペルの神殿が動かないなら、それは確かに街の人にとって困った事態だよね‥。そう思うとやっぱり行った方がいいかな‥って悩んでいると、目の前に座っていた村長さんが私に、



「スズさん、無理しなくていいんですよ。スズさんはうちの村の大事な乙女ですからね」

「村長さん‥」



思わずジンと胸が温かくなると、ニーナさんが


「えー、スズ行こうよ!私も温泉入りたいし!」

「ニーナさんも行く気だったんですか?!」

「温泉入りたいし、飲みたいしね!」

「ニーナさん!!酔っ払い運転はダメですよ!!」

「大丈夫!壊れたのは馬車だけだし!!」


ニーナさんの言葉に村長さんと私、ラトさんの3人でため息を吐いた。

違う、そうじゃない。


‥しかしそんな断りづらい中、村長さんは私の力を守ろうとしてくれたのか。

そう思うと今後は要望は聞かないとしても、今回はなんとかした方がいいかな。‥確かにニーナさんにはお世話になったし、村長さんもなんだかんだでラトさんの事を秘密にしてくれていた訳だし。



私はラトさんを見上げると、ラトさんはまるで私の言いたい事がわかったのか、小さく頷く。



「‥スズ、行こう」

「本当にいいんですか?ラトさんだけが働く結果になっちゃうかも‥」

「それでも構わない」



ラトさんがテーブルの下で私の手をぎゅっと握ってくれて、それだけでホッとする。私はラトさんに微笑むと、ニーナさんと村長さんに顔を向ける。



「‥歌で温泉が復活するとは思えないし、私は魔物も倒せないけど‥、頑張ります」



そう話すと、ニーナさんは「よっしゃ!」って喜ぶし、村長さんはちょっとホッとした顔をしてた。‥まぁ、確かに断りづらいもんね、話の内容。ラトさんを見上げると、嬉しそうに微笑んでいて、



「スズがいれば大丈夫だ」

「いやいや奇跡は多分っていうか絶対起きませんからね?」

「‥俺にとってはスズがそばにいれば問題ない」

「う、うう‥、ちょっとタイム!!」



だからぁ!!そういう勘違いするような発言は控えてくれ!!

ただでさえ顔を見ればドキドキしちゃうってのに‥。

じとっとラトさんを睨みつつ、心臓をなんとか落ち着かせようとするけど、温泉地に2人で行くなんてもしかしたら早まった判断だった?あ、でもニーナさんも行くから大丈夫かな?



そんな事を考えている横でニーナさんが村長さんに呑気に「お茶、もう一杯飲む?」って聞いてるけど、あのですね!?ちょっとは反省しましょうか?





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