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番犬、星拾い。


ラトさんと喧嘩別れしたけど、ラトさんから謝りに来てくれた事でリトさんは安心して家を去った‥と、何も噂してないのに、そういう風に勝手に落ち着いた‥。


パトの神殿から帰って翌日。

村の皆は皆澄んだ目で、


「もう喧嘩しないのよ!」

「スズちゃん、譲り合うって大事よ」

「スズ〜、素直が1番だぞ」


‥素直なのか、なんなのか‥。

ギルドまでニーナさんにチョコパイとミートパイを届けに行く為に村を歩くと、道ゆく村人達に声を掛けられるけれど‥私は大変複雑です。



「第一、なんで私が悪いみたいに‥。いや、でもその方が都合はいいか」



心中複雑だけど‥。

なんて思っていると、今日も今日とて翻訳アプリである私と手を繋いでいるラトさんが眉を下げて微笑む。


「すまない‥。俺の方が悪いと説明したいのだが‥」

「そもそも手を繋がないと犬語ですしねぇ‥」


そりゃ無理だよね。

いや、ここはもう開き直ってこの展開を楽しんだ方がいいかもしれない。喧嘩すると私の方がものすごく怖いとか?‥うーん、でも一応歌の乙女だしまずいか?ちょっと悩んでいると、赤茶色のレンガで出来たギルドの木の扉が大きく開く。



「お、スズ〜!番犬ちゃん!おはよー!今日も寒いねぇ」

「ニーナさん、おはようございます。遅くなりましたがお礼のパイをお持ちしました」

「やった!!ささ、入って!丁度お茶淹れたんだ〜〜」



寒いねぇって言う割には、首元ががっつり開いた大分セクシーなニットを着ているニーナさん‥。寒くないのかなぁ。私なんてしっかりコートを着込んでいるのに。


遠慮なくギルドの中へラトさんと入ると、今日も色々な雑貨が置かれている。

私が売ってる薬も在庫をチェックしておいた。

なにせパトの神殿で歌っても、基本的に奉仕なので賃金は発生しない。今やラトさんのお世話代と薬代と細やかなお給与が私の大事な収入源だ。


ギルドの片隅にあるテーブルと椅子にお茶を出してくれて、私とラトさんは椅子に座ると籠を差し出す。



「はい、お礼のパイでございます!この度は本当にお世話になりまして‥」

「ウンウン、すっごく楽しかったねぇ!!番犬ちゃん、もう事件とかないの?」

「あのですね、ニーナさん?そんな恐ろしい事が何回もあったら問題ですよ」

「えー、スリルとサスペンスって最高のスパイスなのに!」

「平穏が何よりも一番ですよ‥」



そんなスパイスを求める割になぜニーナさんはこの平和な村にいるんだ。

魔物なんて滅多に出ないのに‥。

私がちょっと遠くを見つめていると、ラトさんが上着のポケットからニーナさんから借りたメガネをハンカチで包んでテーブルに置くと私の手を握りつつ、頭を下げた。



「ニーナさん、この度はメガネを貸して頂いてありがとうございます。お陰で反王族派を捕らえることも、獣人国の宰相も抑える事ができました」

「うんうん、こちらこそすごい楽しい時間をありがとう!」

「つきましては、個人的に何かお礼をしたいのですが‥」



ラトさんがそう話すと、ニーナさんはニンマリ笑う。

あ、なんか嫌な予感がするぞ?


「なんでも?」

「‥できる範囲でなら」

「じゃあさ、明日星拾いしてきてくれる?」

「へ???」


星拾いって何??

思わず目を丸くして、ラトさんを見上げると小さく笑う。



「この地域、独特の風習だ。冬になると、池や川の底で石が光るんだ。それを拾って、日中に日光に当てておけば夜発光するんだ。ただ、最近は魔石があるからあまり拾う人はいないが‥」



ラトさんに教えられて、私は感心したように頷いた。

そんな風習あったんだ!神殿にいて、そういう風習を知らないまま生きてたよ。けど‥、星拾いなんて素敵なワードにワクワクしてしまう。



私の顔を見て、ニーナさんがニヤッと笑って「じゃ、番犬ちゃんよろしくね〜」と、めちゃくちゃ大きい籠をラトさんに渡したけど、ちょっと待って??そんな大きな籠に石いっぱい??


「いやぁ〜、仕事で使うことになったんだけど、流石にどれだけ使うか検討つかないからさぁ〜。夜は寒いし、面倒臭いなぁ〜って思ってたんだよね!助かるわぁ!!」

「‥ここぞとばかりにラトさんを使ってるな‥」


まったくもう。

でも、私も助けて貰ったんだし頑張らねば!

ラトさんを見上げて、



「星拾い初めてやるんですけど、頑張りますね!」



そう宣言すると、ふにゃりとラトさんが頷きつつ笑った。

‥うう、この笑み、本当に弱いんだけど。





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