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番犬、お礼をする。


乙女達は、ラトさんやマキアさんに頬にキスをすると風のように馬車に乗り込み、ニヤニヤ笑って、



「またね〜スズ!!歌、頑張れー!!」

「祝福の歌は練習してなんぼよ!!」

「マキアさん、ヴェラート様また会いましょうね!」

「ディオ様、応援してますわー!」



見送りをしてくれたディオ様や私達に言いたいことを言って去っていった‥。

もう泣きそうな顔の神官の爺ちゃん、多分1番胃が痛い思いをしたであろう。今度、胃薬を作って送ってあげよう。遠ざかっていく馬車に手を振って、横を見ると真っ赤な顔で呆然としているマキアさんとラトさん。‥本当にあやつらは‥。


「さ、じゃあ私達も行きますか」


そう言って用意された馬車を向かおうとすると、ラトさんにちょっと手を後ろに引っ張られる。


「ん?ラトさん、どうしました?」

「‥あ、あの」


ちょっと赤い顔で目をウロウロと泳がせるラトさん。



「言っておきますけど、乙女みたいにしませんよ」

「!そ、それは‥」



ラトさんは言葉が詰まったように、オロオロするけれど‥。

さっき乙女達に寄ってたかって頬にキスされて赤い顔してたくせに‥。なんだよもうデレデレしちゃってさ。さっと手を離すと、ラトさんが慌てて私の後ろを追いかける。



私はお見送りをしてくれるディオ様の側へいき、頭を下げた。



「色々とお世話になりました。春の祭り‥、奇跡はあれですけど、歌だけなら頑張ります!」

「ふふ、あれだけすごい奇跡を起こした人が言いますね」

「いや、いつもはあんな奇跡起こせないんで‥」

「‥十分、素晴らしいですよ」



にこやかに微笑んでくれたディオ様がそっと手を差し伸べるので、握手かな?と思って、私を手を差し出すと、そのまま手の甲にディオ様にキスされて、目を見開いた。



ま、またキスされーーー!???



私の真横で「ワウ!!!」とラトさんが叫ぶけど、ディオ様はそんな私とラトさんにニコニコ微笑みつつ、そっと手を離す。



「乙女に感謝を」

「あ、あ、ありがとうございます??」

「お気をつけておかえり下さいね」

「は、は、はい!!」



真っ赤な顔でもう一度頭を下げると、体をギクシャクさせながら馬車に乗り込むと、ラトさんはもうそれはわかりやすいくらいムスッとした顔でディオ様を睨みつける。‥あの、一応上司なんで‥。


マキアさんが「出発します!」と声を掛けると、ガタガタと馬車が揺れ始め、小さな窓から顔を出してディオ様に手を振ると、どこか寂しそうに微笑むから‥、



「絶対!絶対歌いに行きます!だから‥頑張って下さい!」



言葉が口をついて出てきて‥、一生懸命手を振ると、ディオ様は眉を下げて笑ってくれた。


歌の神様、ディオ様をどうか守ってあげて。

そう願って、大分小さくなるまで手を振ると、馬車の中へ体を戻した。



と、横を見るとラトさんが私の方をじっと見つめている。



「ラトさん?どうかした?あ、もしかして疲れてます?」

「ワウ‥」



私に手を差し出すので、翻訳アプリを起動させたいのか?

そう思って手を握るとラトさんの方へ体ごと引き寄せられて、慌てて体を直そうとすると、



チュッと音がして目を見開く。



「へ?」



柔らかい、ちょっと熱い唇の感覚が頬にして、一気に顔が赤くなる。

もしやラトさんに頬にキスをされた??


瞬間、ガラガラと馬車の道を進む音が全く聞こえなくなって、体が固まってしまう。ラトさんは私の頬からそっと唇を離し、ちょっと赤い顔で見つめて、



「‥歌ってくれた、から、お礼‥」



いや、それをいうなら私じゃない?!

そう思うんだけど、言葉が出てこない。

あの!!私はね、貴方が好きなんですよ?!それなのに、これ以上迷惑を掛けたくないから気持ちを閉じているのに、こじ開けようとしないでもらえますかね?!!



多分、ものすごく真っ赤な顔の私はラトさんを睨みつける。

‥本当にこんな男性に耐性もない女子に、勘違いさせるような行為はやめて頂きたい。どうするんだよ、これ。心臓はバクバクいうのに、嬉しいとか‥。



「もう、無理〜〜〜〜!!!!!」

「スズ!?何かあったのか?!」



原因は貴方ですよーー!!

でもそう言えない私は馬車の座席にズルズルと顔を埋めて、心配して私を揺するラトさんから顔を背けた。もう歌の神様、これどーすればいいですかね?





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