番犬、無敵。
そうして、翌朝。
乙女達と結局お喋りして、夜遅く寝た私は眠い目を擦りつつ起きると、皆まだグッスリ寝ていた。
‥そりゃそうだよね。
疲れたよね。私は目が覚めてしまったので、体を起こして身支度する。
歌の神様のところへお祈り行こうかな?と思って、そっと部屋の扉を開けると、廊下で黒い隊服を着た騎士さん達や、神殿の騎士さん達が何やらちょっと怖い顔をして話をしているのを見て‥、ハッとした。
「そうだ、事件があったんだ‥」
ポツリと独り言を呟くと、クスクスと笑う声が横から聞こえてきて、そちらを振り返るとディオ様が白いローブを着て立っている。
「ディオ様、お、おはようございます!」
「おはようございます。昨日は休めましたか?」
「お、お陰様でグッスリ‥」
「それは良かったです」
ディオ様に優しく微笑まれて、そういえば魔物は出るし、お姫様は来るし、そのお姫様に「私の番犬」って言っちゃうし、考えてみると私ってばよくグッスリ寝たな‥と、今更ながらに気付いた。
「‥歌の神にお祈りに向かう所でしたか?」
「あ、はい」
「それなら一緒に行きましょう。私も行く所でした」
「は、はい」
ラトさんいないけど‥いいかな?
まぁ、ディオ様だし大丈夫だろう。なにせお姫様も信用してたっぽいし。
そんなことを思いつつ、一緒に神殿の奥へと歩いて行くと、ディオ様が私をちらりと見て、
「‥本当は白い鳥にフンを落とされるのは私かもしれません」
「え?」
いきなり何を言い出すの??
私はディオ様を見上げて、目を丸くする。
「‥私は、スズさんの奇跡を起こせないことを利用して、今回、反王族派を炙り出す演出をしようと思っていたんです」
ディオ様の言葉に私は目を見開く。
私の奇跡を起こせないことを利用?!‥っていうか、やっぱり私の奇跡がしょぼいことを知ってたんだ。その上で私に声を掛けたのか‥。朝から心の中をゴリゴリと削られたけれど、どこか納得してしまう自分のポンコツっぷりに泣きそうになる。
「あ、そ、そうでしたか‥。いや〜、それはもういいですよ‥」
「いいえ、改めて謝らせて下さい」
ディオ様はピタッと足を止めて、私に向き直ると深々と頭を下げるので私は慌てて周囲を見回す。だ、誰もこんなところ見てないよね??今回の事件の功労者でもあるディオ様がポンコツの私に頭を下げるなんて‥、なんていうか申し訳ないというか??
「ディオ様、その、頭を上げて下さい!!ディオ様は、今回の事件を解決させたくて、そういう事をしようとしたんでしょう?そんなの気にする事じゃ‥」
「いいえ、歌の乙女を利用しようとしたということは、歌の神さえも利用とした事になります。本当なら謝って済む話では‥」
ま、真面目か!!
でも、確かに言われてみると、そうなのか?
私は頭を下げたままのディオ様を見て、どう話そうかちょっと悩んだ。
「‥あの、白い花を白い鳥に、頂いたじゃないですか」
ディオ様は私の言葉にちょっと頭を上げる。
「白い鳥を、ディオ様は神様の使いだってどうしてわかったんですか?」
「‥あの花は国花です。我が国の、歌の神が愛した花だったから‥」
「私、ちゃんとそういうのが分かるディオ様を、歌の神様が信用してたと思うんです。だから、あの白い鳥は堂々と飛んできたと‥」
私の言葉に、ディオ様は目を丸くする。
「以前、冬祭りで歌った時は白い鳥は私の膝に飛び込むように、小石を持って来たんです。今考えると、まるで小石を隠すように‥誰にもバレないように」
ディオ様はハッとした顔をして私を見つめる。
「‥偶然、かもしれないけれど、でも神様って偶然で済ませるものじゃないと思うんです」
私の言葉にディオ様が静かに顔を上げて頷く。
それにホッとして、私はディオ様を見上げる。
「‥あの、だから気にしないで下さい。ほら私って結構図太いですし。それに‥」
言葉を言いかけた時、
「ワン!」
犬の鳴き声に、私とディオ様は振り返ると、慌てた様子でこちらへ駆け寄るラトさんが見えて、私は小さく吹き出した。
「神様に認められた心強い番犬がいるので、無敵だと思います」
ラトさんに手を振りつつディオ様に笑いかけると、
ディオ様が本当に心からの笑顔で微笑み掛けてくれて‥。胸の奥がほっこりとしたのだった。




