表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/164

番犬、褒めるのは大事。


ラトさんは歌の神様によって正式に私の番犬として認められた。

‥と、いうことになったんだけど、本当にいいんでしょうか、歌の神様‥。



いや、そりゃさ、自分の気持ちに確かに気付いて、「私の番犬」って言っちゃったけどさ、ラトさんの呪いの解呪の方法は依然としてわかってないんだよ?早まってないかな?っていうか、本当に良かったのか??



あれから呪いやら魔物が出たので、歌の乙女達と一緒にその場を清める歌を歌った。ええ、もちろん私はなんの奇跡も起こせませんでしたけどね。



そうして現在、王族騎士からの調書を終えて、私とラトさんはパトの神殿の神官さんに通された休憩室のソファーでグッタリと座りつつ、悩んでしまう。だって、私はラトさんのこと、す、好きだなって思ってるけど、ラトさんはそうじゃないのにも関わらず「番犬」でいてくれる事になったしさ。



「‥これでいいんだろうか‥」

「スズ?」

「あ、い、いや、とりあえず事件は解決したんですよね?」

「そうだな。物的証拠も抑えたようだし、大丈夫だろう」

「そ、そうですか‥」



首都から派遣された王族騎士さん達と、密かに証拠探しをしていたベタルの騎士さん達で物的証拠と、何よりも今回、現行犯で大神官様が捕まえたのが大きかったそうだ。本当にいつの間にそういう活動してたの?まじですごいな騎士さんって‥。



本当、そこは素直に感心する。

ただ‥、ただね?!お姫様の輿入れの際に祝福の歌を歌うのをご指名されて、私は絶賛胃がキリキリする。多分、事件の真相を解明して、言葉通りスッキリ整えてからリアナ姫は輿入れするんだろう‥。だけど、それはいつ!??いつ入籍するの?祝福の歌って、いつ、どこで歌うの?!!


「う、うううう!!!心の臓が痛い!!」

「スズ、大丈夫か?」

「祝福の歌とか‥、無理〜〜!!もう絶対無理〜〜!!」

「‥大丈夫だ。スズ、側にいる」


ラトさんが嬉しそうに微笑んで私の手をぎゅっと握るけど、‥それ本当に勘違いしちゃうからやめて。



あくまで私の番犬として側にいてくれるのに、そんな優しくされたら「もしかして好きなのかな?」って思っちゃうけど、ラトさんは優しいからなぁ。勘違いだったら、恥ずかしくて間違いなく息の根が止まると思うから‥、しっかりせねば!



そう思うのに、ラトさんの繋がれた手をちょっと見てから、まるで尻尾をものすごく振っているかのような顔をしたラトさんを見ると、いつもの光景に思わずホッとしてしまう自分がいる。‥なんか、一日しか経ってないのに、いつものラトさんの姿に会えてホッとしちゃうとか、私ってばどれだけ安心してるんだろう。



「なんかもうすごくまずいと思う‥」

「そうか?」

「‥ラトさん、もういい加減手を離しましょうよ」

「‥無理だ」



なんでやねん。

調書を取る時だけは手を離してくれたけど、それ以外はずっと手を繋いだままで私はマキアさんにも、神官の爺ちゃんにも、乙女達にも生温い目で見られて居たたまれないんだけど?まぁ、今はそれぞれ調書を取りに行ったから二人きりだけどさ。


「明日はどうなるんだろ‥」


私はこれからラトさんとどうなっていくんだろう‥、そんなことを考えて、ポツリと呟くとラトさんはニコッと笑って、



「冬祭りどころでなくなったからな。明日は本格的に神殿の調査をするので、俺達は村に戻ることになると思う」

「あ、そっち‥。って、戻るんですか?」

「?ああ、一緒に戻る」

「いや、あの、ラトさん、一緒に戻っても平気なんですか?仕事は‥」



思わずラトさんに聞くと、ラトさんは目を丸くして‥眉を下げる。


「‥大事では、ないのか?」

「っへ?」

「‥大事な番犬、と‥」


言いましたね。

お姫様にめっちゃ言っちゃいましたね。

ブワッと顔を真っ赤にさせて、俯いてしまう。



「‥大事、です」



ぎゃあああああ、恥ずかしい!!

恥ずかしいけど、そこは本当なんだ!だって好きって気付いちゃったし!

でも、ラトさんの呪いはまだ何一つ解決してない。だから、そこを解決するまでは私の気持ちも封印である。



ラトさんにそんな気持ちを言って迷惑に思われたら‥、それこそ申し訳ない。これ以上、何かを負わせる事はしたくない‥。



でも、ちょっと。

ちょっとだけ‥、そろっと空いた手をラトさんの頭に伸ばす。

柔らかい濃い茶色の髪に触れると、ラトさんは嬉しそうに目尻を下げる。



「‥よ、よく頑張りました?」

「‥ああ、ありがとうご主人様」



な、なんか違う‥。

違うような気もするけれど、ラトさんの私を見つめる優しい瞳に、私はなんだか泣きそうになる。‥番犬は、私が幸せにするんだ。‥と、どこか違う、そうじゃないって突っ込まれた気もするけど、私はひとまずラトさんの頭を優しく撫でた。




褒めて育つ!

もっと褒めてくれ!

そう思って生きてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ