番犬、継続!
白い鳥が一輪の花を私に渡してくれたけど‥。
それがまさかの歌の神様から「ラトさんは私の」って‥、本当、なの???
ディオ様がそうはっきりと宣言してくれたけど、にわかには信じ難くて‥。
だってラトさんは獣人の国に行った方がずっと安心だ。
それを私のわがままで‥、歌の神様、本当にいいの?
思わずシンと静まり返ったステージの上で、私はずっと横で黙っていたラトさんを恐るおそる見上げる。
すると、ラトさんと目が合った瞬間、
いきなり抱きしめられた。
「って、ちょーーー!!!ラトさん!!!人目!!お姫様の御前!!!!」
「ワン!」
「いや、犬語でなくて、そこは言葉で??」
な、なんでいきなり抱きしめる!!!
真っ赤な顔で慌てて、ラトさんを引き剥がそうとするけれど守護騎士の体力に勝てる訳がない。一ミリも動かない。く、くそ!!私に筋肉があれば!!!‥早々に諦めて、ラトさんにギュウギュウに抱きしめられる結果になって、遠くを見つめると、クスクスと笑う声が聞こえて、そちらに視線を送るとリアナ姫が笑っている。
「まあまあ、悪い事してしまったわねぇ」
「え、あの、その??」
「神様にヴェラートを引き止められたのに、獣人の国へ連れて行っては私が今度はフンを落とされてしまうかもしれないし、今回はやめておきましょう」
あ、あれ〜〜??大神官様にフンを落としたのは知ってるの??
私が目を丸くすると、リアナ姫は綺麗なウィンクをして微笑むと、ディオ様を見て、
「あとの掃除はうちの騎士達にも協力してもらうわ。私の輿入れはしっかり整えてから行きたいし」
「承知いたしました」
ディオ様が静かにお辞儀をし、神殿の中へと案内するとリアナ姫はそちらへ歩き出し‥、ピタッと足を止めて振り返ると、私を見てにっこりと微笑む。
「輿入れに行く前に、祝福の歌を歌ってもらうんだけど、その時には貴方にお願いするわ」
「っへ?」
「ふふ、では、またね」
リアナ姫は綺麗にドレスを翻すと、今度は立ち止まる事なくディオ様や騎士さん達と神殿の中へ歩いて行ってしまったけど‥。
ま、待って??
祝福の歌って、ものすっっごい力のある奇跡を起こせる乙女が歌うもので、間違っても私のように茶柱が立つレベルの乙女では無理なものでして‥?
ラトさんに抱きしめられたままの私が呆然としていると‥、乙女達が私を見てニヤニヤと笑う。
「まさかの姫様にご指名されたね」
「っていうか、姫様に私の番犬って‥」
「すごいねスズ。強者だわ〜」
「しかも祝福の歌!!猛練習しないとだね」
「ちょ、ちょっと!!!何を言って‥」
顔が赤くなったり、青くなっていると、ニーナさんがニマニマ笑って、
「いやぁ〜〜、これは村にもいい土産話にもなったし、こんな面白い事があるなんて‥スズってば最高だね!!協力したかいがあるわ〜〜!!」
「めっちゃ楽しんでるぅうう!!も、もうラトさん!ラトさんも一回離れて‥」
もう今最高に恥ずかしいから、本当に離してくれ!
涙目で私の肩口に顔をずっと寄せているラトさんを睨むと、ラトさんが嬉しそうに、甘く微笑む。ううう、その顔反則なんだけど〜〜!??
「ワン!」
「いや、だから言葉にして〜〜〜!あと離して〜〜!!」
「ワン!!」
「もう、ラトさんってば〜〜!!!」
ラトさんはますます私を抱きしめるので、息が!息ができない!!
背中をバシバシ叩くと、マキアさんが慌てて駆け寄って「スズさん、死んじゃう!!死んじゃうから!!」と言ってくれたお陰で、ようやく腕の力を緩めてくれたけど、私の手はもう超強力ボンドでくっつけたんじゃないの?ってくらい、ラトさんの手とガッチリ繋がれたままだ‥。
はぁはぁと、ようやく息ができた私‥。
乙女達の横で一部始終を見ていた神官の爺ちゃんときたら、涙目で私を見て、
「‥番犬は、ちゃんと躾をするように」
「ち、違う!!!何もかも違うーーーーー!!!!!」
私の叫びはステージどころか会場中に響き渡り、そんな空の上を悠々と白い鳥が飛んでいったとか、そうでないとか?歌の神様、こんな感じの乙女なのにいいんですかね?




