表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/164

番犬、叫ぶ。


大きな歓声と共に会場の中へ入っていくと、ステージの前には村長さんやルノさん、それにニーナさんが手を振っている。わざわざ見に来てくれたんだ!!私は嬉しくて、思わず手を振り返す。



「何?スズの知り合い?」

「村長さんと村の友達が来てくれてたの!」

「へ〜、そりゃ気合い入れなきゃね」



乙女達と小声で話しつつ、見にきてくれた嬉しさに心が暖かくなる。

周囲を見回すと、大神官様が壇上の後ろの椅子にデンと座っていて、壇上の前にディオ様が優しく微笑んでいる。うう、ディオ様はいいけど、大神官様がいるよ‥。嫌だけど仕方ないか。


と、ディオ様がこちらへ歩いてきて、私達は一斉に跪くと、ディオ様が私達の頭に一人一人手を置いて、


「冬の歌を、恵みを歌ってください」


そう声を掛けると、また一斉に皆で立ち上がって会場の人達へ顔を向ける。

途端、会場がシンと静まり返り、私達は手に持っていた楽器を用意する。



すっと息を吸って、楽器を一斉に奏でると、会場の中が光がさっと差し込んでくる。あ、やっぱり皆の奇跡はすごいなぁ‥そう思いつつ、私も一緒に歌いつつ竪琴を弾く。



音楽と歌が会場を包み、ふわふわと花びらがどこからか落ちてきて、会場の皆が歓声を上げる。白と薄い淡いピンクの花が雪のように次から次へと降ってきて、ちょっと幻想的な光景に歌いつつも見惚れてしまう。神様が確かに聞いてくれている証拠でもある奇跡。歌うたびに感動してしまう。



そうして、次は私の番だ。

そ、ソロ!!めちゃくちゃ緊張する!!しかし、ここは頑張らないといけない所!!踏ん張れ私!!一歩、皆よりも前に進み出て、竪琴を鳴らす。



集中して、会場の皆へ届くように声を出す。



その時、ズズン‥と、ものすごい地響きがして、会場がざわついた。

え、何!??歌いつつも、皆が一斉に見た方向をちらりと視線だけ動かすと、ステージの横の空中にものすごい大きな黒い渦巻きがあって、その中から5メートルくらいある大きな真っ黒い狐のような生き物が出てきた!


尻尾が5・6本あって、目はギラギラと黄色く光り、噛まれたら即死しちゃいそうな尖った牙が剥き出しでこちらを見ている。



「ま、魔物!!!?」



誰かの叫び声に、神殿の会場が悲鳴に包まれた。

その時、大神官様が私を見て、



「貴様!!奇跡がこれか!!」



そう叫んで睨まれた瞬間、私は目の前が真っ白になった。


奇跡‥。

私が魔物を呼んじゃったの?


その瞬間、黒い狐がこちらへ走ってきて、乙女達と私は咄嗟に身構えた。



「ワン!!!!」



誰かが叫んだ。

いや、違うあれは‥


「ラトさん!!!」


ラトさんが両足を光らせて、もの凄い勢いで黒い狐に剣を持って飛びかかる!!

剣を狐の鼻先を掠めると、狐は後ろに飛んだけれど、今度はラトさんの体に噛みつこうと大きな口を開けて飛びかかる。


「ヴェラート!!前に行き過ぎるな!!」


マキアさんが叫んで、狐の横っ腹に飛びかかり、二人で応戦すると他の騎士さん達もハッとして、剣を構える。ディオ様も周囲を見回して、大きな声で叫んだ。


「会場を開け放して、すぐに市民を避難させて下さい!皆さん!!落ち着いてすぐに避難を!!!」


ディオ様の声に、他の神官達が誘導して皆わっと外へ避難するべく走って行く。私達も避難‥と思ったけれど、目の前で狐の魔物が暴れていて、動けない。ラトさんとマキアさんが庇ってくれているけれど、私達がいるせいで思うように動けないのか、こちらを見ながら戦っている。



と、狐の尻尾が一つグネグネと動いたかと思うと、本体よりも少し小さな狐が出てきた!!


「え!??狐が増えた!?」


それにラトさんがすぐ気付いて、急いで倒そうと駆け寄るけれど、狐の動きは早く的確に私達を噛みつこうとして、飛びかかった。


「わ、わぁああああ!!!」


叫んだその瞬間、虹色のドームのようなものが私達を覆って、

狐の魔物を遠くへ弾いた。


ラトさんもマキアさんも驚いた顔をしてる。

え、これラトさんがやったんじゃないの??



「え、何、これ?」



ぽかんとその虹色のドームを見上げると、会場から誰かが手を振ってる。

そちらを見ると、ニーナさんがニコニコ笑って、



「スズー!!!防御系しかできないけど、攻撃は受け付けない魔法かけておいたー!お礼はチョコパイとミートパイね!」

「に、ニーナさん!!??」

「あとは番犬ちゃんお願いね〜」



番犬ちゃん‥。

それはもしやラトさんのこと??

チラッとラトさんを見ると、コクッと頷いて狐の魔物にまたも飛びかかったけど、番犬ちゃんでいいのか、ラトさん‥。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ