番犬、揺れ動く。
今晩は流石に明日が本番なので早くに休もうと乙女達と話して、ようやく安心して部屋の前で別れ、私はラトさんと一緒に部屋に入った。
「って、ちょっと待て!ヴェラート!!なに自然に女性の部屋へ入ってるんだ!」
小声で速攻でマキアさんが注意して、外へ引き戻そうとして私もハッとした。
危ない‥いつものノリで部屋へ入ったよ。
マキアさんはジロッとラトさんを見て、
「まさか一緒の部屋で寝てなんていないよな?」
という言葉に私はビクッとしてしまい、ラトさんは静かに首を横に振った。あ、そこの大型犬嘘をついてまーす。でも、私も何を言われるかわかったもんじゃないので黙ってます。‥まぁ、だって一緒の部屋で寝るだけだしね‥。
マキアさんははぁっとため息を吐いて、部屋のソファーに座り込む。
「もう勘弁してくれよ、ここの大神官ただでさえ面倒なんだから」
「面倒‥な人なんですか?」
「あ、えーと、まぁ、そうですね‥」
チラッとラトさんを見て、マキアさんが曖昧に頷くけれど他に何かあるのか?‥まったくこの人達は大事なことをちゃんと伝えてくれないからなぁ。
「ラトさん、大神官様が神官長様をよく思ってない感じでしたけど、もしかしてこの間のベタルの事件で何か関係してます?」
私の言葉にラトさんが目を丸くして私を見上げる。
いや、それくらいなんとなく察するよ。
それに前世の記憶もあるからね、そういう怨恨ネタは聞いてたりするんだ。
マキアさんとラトさんは目を見合わせるけれど、多分私を気にして話さない。‥ほほーう、そっちがその気ならこっちだって奥の手使うもんね。
「‥ラトさん、お手」
「?」
私の言葉にラトさんが素直に手を握る。
よし、流石番犬である。
「‥明日、何も知らないままで歌うのは不安だな〜」
「え‥」
「何か知ってる人、挙手〜」
「あ、ちょっと?!スズさん、それずるいです!」
「ずるいのはそっちです〜」
私は手を握るラトさんをじっと見つめると、ラトさんがギクリと顔を強張らせる。
「ラトさん?何か知ってるんですね?」
「え、あ‥」
「わ、わーー!!ヴェラート揺れ動くな!!耐えろ!!堪えろ!!」
「今ならよしよししますよ?あと、ほっぺも撫でようかなぁ〜」
「ぐっ‥!!!!」
ラトさん、思ったよりも揺れているらしい。
‥ちょっと試しに言ってみただけなのに、随分揺れている。私、もしかしてスパイとか向いてるのかな?
ニコッと微笑んで、
「ラトさん?」
と、言うとラトさんがガクッと項垂れる。
よし、これはいける?って思ったらラトさんが顔に手を当てて、指の間から私をちらりと見上げる。
「‥可愛い」
「っへ?!」
今度はラトさんの言葉に私が顔を赤くする。
「な、なん‥」
「歌ってた姿も可愛かった。今は、必死に聞き出そうとする姿も。全部、全部可愛い」
ブワッと頬に熱が集まって、慌ててラトさんから手を離そうとすると、強く握り返されて慌てて手を外そうとするけれど、ラトさんは私の方へ迫ってきて、驚いて目を見開く。
「‥だけど、まだ内緒だ」
「〜〜〜〜ず、ずるい!!!」
「‥スズだってずるい」
じっと熱っぽい瞳でラトさんに見つめられて、私はもう頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだ。だ、ダメだ!!この人ってば、べらぼうにイケメンだし、私は男性に耐性がなかった!!こんなの勝負が決まってた!
真っ赤になった私に、ラトさんがそっと手を離し、マキアさんが「お見事!」って言うけど‥。クソ〜〜!清廉潔白の守護騎士のくせに〜〜!!赤い顔でラトさんを睨むと、ラトさんが私をじっと見て、
「ワン」
「‥ん??なんて???」
だから言いたい事があるなら、教えてくれ‥。
手を差し出すとラトさんはちょっと躊躇いつつ、私の手を握って、
「頭を撫でては‥」
「あ、それはしません」
だって私、負けちゃったし?秘密にされたままだし?
そう言うと、ラトさんはそれはそれはガックリして、マキアさんに引きずられるように部屋を出ていった‥。明日、本番なのになんだか盛り沢山過ぎな一日だったけど、結局大神官様はなんだってんだ。
色々考えつつ大きな布団に入ったけれど、大きな部屋に一人。それに寂しいなって感じて、慌てて布団を顔まで被った。自立!自立だ私!!家に戻ったら、絶対ラトさんと寝室別にしなきゃ!そう思いつつ、どこか犬の遠吠えが聞こえて‥。それにホッとして眠りにつく私だった。
マキアさんは、下に妹がいるので女性の扱いは
結構上手です。(でもあしらわれるっていうね‥)




