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番犬、聞き耳をたてる。


あれからすぐラトさんと一緒に食堂へ向かうと、乙女達にニヤニヤされたけれど、私はそれどころじゃないんだわ!!!


なんか、なんかね!?

さっきの空気をなんと表現していいのかわからないから、現在パニックになってるんだわ!!顔はなんとかいつものように笑顔で取り繕っているけど、胸中はもう大騒ぎだよ。なんていうか、サンバでカーニバルだわ。



綺麗に盛り付けられた食事を口に運ぶけれど、なんていうか味がしない。まぁ、それもそうだろう。だってなぜか今はディオ様の隣だし!!向かいの席には鳥のフンを落とされた大神官様がいるし!!なぜ?ホワイ!??


と、ディオ様とぱちっと目が合うと優しく微笑み、


「明日が楽しみですね」

「そ、そうですね‥」


って話すけれど、もう誰か助けて!!!

遠くのテーブルでマキアさんとラトさんが食べている姿が見えるけれど、と、遠い!!いや、ラトさんに助けを求めるのも、今はちょっと考えてしまう。



‥結局、なんであんな風に甘えてきたかも聞くこともできず、私は未だにパニック祭りである。嗚呼、後ろでサンバのお姉さんがマラカス持ってピーピー笛吹いてる〜〜〜。うふふ〜と笑いつつ食事をする私ってすごいな‥と、思っていると、向かいの席に座ってさっきからむすっとした顔の大神官様が私をチラッと見る。



「‥ベタルの歌の乙女といえば、奇跡を起こすことで有名ですからね‥。神官長様もそれは誇らしいでしょうね」

「い、いえいえ、そんな‥。私の奇跡など」

「はは、ご謙遜を。その歌の乙女のおかげで神官長様は昇進も決まってますしね」



大神官様の言葉に、不意に手が止まる。

私達のおかげで昇進が決まる?

それって、私達を利用して昇進を決めたって言いたいのかな?

ディオ様をちらりと見ると笑っているけれど、その顔はどこか困ったようにも見える。‥なるほど、さらっと嫌味をぶっこんできたってことか。



「‥歌の乙女の奇跡は、神によって与えられただけのものです。神官長様の昇進は、神官長様の働きが認められたゆえ、からでしょう」

「‥ほう。本当に謙虚ですな。()()()()()()だとそういった意見なんですな」



っか〜〜〜!!

こんな年端もいかない女の子に更にぶっ込んできたわね!!


と、ガタッと音がしてそちらを見ると、ラトさんが眉を寄せて椅子から立ち上がりかけたのを慌てた顔のマキアさんが止めている。ちょ、ちょー!!!!座って!!座って!!慌てて、アイコンタクトで「私、大丈夫!座って!!」って訴えると、ラトさんが静かに座り直した。



そ、そうだった‥。

今、手を離してるから犬の特性が強いから、こんなに離れてても音が聞こえたのか。座り直したラトさんにホッとして、むすっとしたままの大神官様をもう一度見る。



これ前世の記憶がまだほんのりある私だからいいけど、本当にまっさらな記憶もない女の子が言われたら泣いちゃうからね!!っていうか、私もはっきりポンコツって言われて泣きそうですけどね?



ディオ様が大神官様を困ったように見て、


「大神官様、そこまでに‥」

「‥そうだな。ここでそんなことを言ってもどうにもならん。私は先に失礼する」


そういうや否や大神官様は席を立ち、食堂を出ていったけど‥、

え、ええええ??!神殿のトップがそんな態度しちゃっていいの??と、私は思わず表情を取り繕うことも忘れて目を丸くしてしまうと、ディオ様が申し訳なさそうな顔をする。



「申し訳ありません‥。あのような態度‥気分を害されましたよね」

「い、いえ、自分の奇跡が控えめなのは本当のことなので‥」



私がそういうと、聞き耳を立ててたのか乙女の一人がちょっと離れた席で吹き出した。あ、こら!!盗み聞きするんじゃない!!チラッとそちらを睨んでからディオ様を見て、


「なんだか‥あまり乙女に関しても好意的ではないんですね」

「‥ここは、乙女を持たない神殿ですからね。それもちゃんと意味のあるものなのですが‥、神官長様と同期もあって、少し嫉妬をしているのかもしれません」


嫉妬‥。

はぁ〜〜、早くに出世しちゃうから?

でも、それはそれ相応の働きを見られているからだよね?

そう思うけど、きっと大神官様にとってはそこは気にならないんだろうなぁ‥。



「‥大人でも割り切れない事はありますからね‥」

「スズさんは大人ですね」

「とんでもない、ものすごーく子供です」



なにせ歌を一人で歌うのに緊張しまくって、ラトさんに手を繋いでもらってやっとの私だし。



「できれば早く一人でも平気な大人になりたいです」

「一人でも?」

「まぁ、はい‥」



なにせ自分はすぐ「番犬だ」というラトさんに甘えてしまってる。

そこは自覚してるから、余計に一人でも平気にならないとなぁって‥。ディオ様は私の言葉に小さく微笑んで、「難しいですね」って言うので頷いた。



だって遠くからラトさんが私を心配そうに見ているんだもん。

あの心配性で甘えたがりの番犬からの独り立ちはちょっと難しそうだ‥。




大人になっても甘えたい時あるよね。

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