番犬、耳を澄ます。
ディオ様が部屋を出て、パタンとドアが閉まった音が聞こえた途端、
わっと私の周りを取り囲む乙女達。
き、来た〜〜!!!目が爛々としてる!!
「ねぇ!!!なに話してたの?!」
「ええ??!お祭り頑張ろうね〜くらいだよ」
「え、告白とかじゃないの?!」
乙女の一人が言うと、きゃーーー!!と歓声を上げるけれど、もうテンションすっごいな!??私は遠くを見つめると、ラトさんが口を引き結んで私を見ている事に気付いた。
あ、あれ?
なにかあった??
私がラトさんの方を見ると、乙女達がニヤニヤしてラトさんの周りを取り囲む。
「いや〜、まさかスズが1番に神殿を出るとは思わなかったなぁ〜」
「それで彼氏まで連れてくるとか〜」
か、彼氏?!誰が??
慌てて乙女達を見て、ハッとする。
私とラトさんとのことを言ってる、よね。これ。
「い、いや、違くて!ら‥、リトさんはそうじゃなくて」
「え、じゃあマキアさん?」
「そうでもなくて!!!」
もうこの話題やめようよ〜〜!!
私ははぁっと重いため息を吐いて、皆の顔を見回す。
「‥神殿は、神官長様は大丈夫なの?」
そうポツリと聞くと乙女達は顔を見合わせ、さっきから乙女達の勢いに辟易していた神官の爺ちゃんに視線を送ると、爺ちゃんはソファーにゆっくり座って私を見る。
「若いのに聞いたのか?」
「聞きました‥」
「‥まぁ、大丈夫だ。あの方は誰よりも落ち着いている」
「‥そう、ですか」
「あと、お前の歌が大丈夫か心配していた」
「そ、そうですかぁああああ」
神官長様!そこはご自分を大事にして!!
そう思うけれど、ベタル出身の歌の乙女。ポンコツなだけにこの大きなパトの神殿で歌うのは心配なんだろうなぁ。でも、神官長様、落ち着いているのか‥。それなら大丈夫なのかな?ホッと息を吐くと、乙女達はソファーに座るけれど、ちゃっかりラトさんを自分達の隣に座らせた。
おいおい、ラトさんが驚いてるぞ。
しかも今気付いたけど、マキアさんも来てたんだな。
入り口で警護してくれているのか、立っているけれど、その目はどこか虚ろである‥。ごめんねマキアさん‥。
「で、どう?村での暮らしは?」
「快適だよ〜。のんびりしてていい所だよ」
「若い子達が言ってた通り、あんた変わらずのんびりしてるわね〜」
「それで男に捨てられたんでしょ?」
「あのねぇ!!捨てられてないし!付き合ってもないから!!」
頼む〜〜〜!!
すぐ側に神官さんもいるんだから、もう少しオブラートに包んで!!
私は天を仰ぎ、歌の神様に「もうこれどうにかなりませんかね?!」って思わず心の中で叫んじゃったよ。
「なんだ〜〜、やっぱりただの噂か」
「神官さんの言う事、ちゃんと聞いてたスズだしね〜」
「いや、そこはちゃんと聞こうか‥」
思わずそう突っ込むと、神官の爺ちゃんが「もっと言ってやってくれ」と疲れた顔で同意する。‥ここに来るまで大変だったんだろうなぁ。すごいぐったりしてる。
「そういや爺ちゃん、神官長様が首都の神殿の神官長になる話どうなったの?」
「っへ?!そんな話あったの??!」
神官長様って、ものすごくお仕事ができるって話だったけど‥。
首都にある神殿っていえば、王族専用の神殿だよね。
そこの神殿の神官長に選ばれるってものすごい名誉ではないか!目を丸くすると、神官の爺ちゃんが眉をしかめる。
「‥それは、まだ未定だ」
「そっかぁ〜。あの事件もあったしね」
「え、でもいつそんな話が??」
私は噂話をほとんど聞いてないので初耳なんですけど!?
「ん〜、スズが神殿を出るちょっと前かなぁ〜」
「結構噂になってたよね」
「‥何も聞いてないんですけど‥」
「「「「だってスズ、守護騎士と全然話さないじゃない」」」」
またか!!
またそこなのか!!
だって神官の爺ちゃん、守護騎士と話さないように!って言ってたから‥。
思わず口を尖らせて神官の爺ちゃんを見ると、にっこり微笑み、
「うむ、スズだけは言いつけをよく守っていたな。だが神殿から出た途端、捨てられた話を聞いて心配だったぞ」
「う、うぁああああああ!!!違う!爺ちゃん違うんです!!!!」
「大丈夫だ。歌の神様がお前さんを守ってくれる」
「ううううう、違うんですってばぁあああああ」
この胸を抉られる言葉。
私はもう頭を抱えて倒れそうになると、ラトさんが慌てて私の方へ駆け寄ろうとするけれど、乙女達に「リトさんはこっち!」と再び座らされて、目を丸くしていた。
あ、うん、大丈夫だから‥。
乙女達には誰も勝てないから‥。
私は自分で顔を上げて、ディオ様が淹れてくれたお茶を一口飲んだ。うん、甘くてやっぱり美味しい。




