番犬、名犬?
ラトさんとマキアさんで小高い丘でのんびりお昼を食べたけれど‥、小石ってなんだ、小石って。だけどラトさんは微笑むだけで何も教えてくれない。くそ‥、大型犬め。
お弁当をマッハで食べ終えたマキアさんはラトさんの手を速攻で繋いで、
「よし!喋ってみてくれ!!」
「ワン」
「お前、本当は喋れるんじゃないのか!?」
「ワン」
「くそぉおおおおお!!!俺に奇跡が起こせれば!!」
「いや、それはちょっと違うかな?」
私のツッコミにマキアさんは確かに‥と気付いたようだけど、もしかして結構な天然な方なのかな?食べ終えたお弁当箱を片付けると、マキアさんがまだ少し遠くに見える神殿を見つめる。
「‥呪いは、まだ解呪する手立てが見つからないんですよね」
「あ、そうなんですね‥」
「何としても手立てを見つけたいってのに、反王族派がまたあちこち動いてて、本当にあいつらときたら!!」
「お、お疲れ様です」
「まぁ、それが俺らの仕事なんですけど‥」
そう言って、しれっと私の手を繋いでいるラトさんを睨む。
「お前、喋れないだけだし現場復帰しろよ」
「神官長に休めと言われたので断る」
「神官長って‥ベタルの神官長様に??」
私が尋ねると、ラトさんは小さく頷く。
「話せない上に、いつ犬になるかわからないからな」
「そっか‥。どうしたらいいのかなぁ‥」
ラトさんの繋いだ手をまじまじと見つめると、ラトさんは眉を下げて力なく笑った。
「‥犬になったら、飼ってくれるか?」
「終生飼いましょう」
「ヴェラートぉおおおお!!!!そこは人間に戻るだ!!!!」
マキアさんのナイスツッコミに私とラトさんも、ハッとした。
そうだった!人間に戻る方を考えないと。
「ラトさん、私お祭りが終わったら、頑張って歌いまくりますよ!」
「!歌を‥」
「スズさんありがとうございます!!俺も、俺も頑張るからな!!ヴェラート!」
「いや、スズだけで‥」
「ラトさん、ラトさん、そこは感謝しましょうね」
こんなノリで大丈夫なのか、騎士さんってのは‥。
ちょっと元気を取り戻したマキアさんは、胸元のポケットから一枚折りたたまれた紙を取り出す。
「そういや、ディオ様に今日はひとまず神殿に泊まってもらって、その際に明日の冬祭りの詳細を教えるって話らしいです」
「は、はい」
「あ、ヴェラートは俺と同じ部屋な」
「断る」
「あのなぁ!!守護騎士でもないんだから無理に決まってるだろ!」
「じゃあ、誰が警護するんだ」
「そりゃパト神殿の守護騎士だろ。あ、今回はベタルからも来るって話だ。ほら、黒髪の‥」
マキアさんの言葉に黒髪って、結構いないか?
だけどベタルと言われて、ハタっと気付く。
そ、それはもしかしてお手紙待ってますって言ったあの騎士さんの事かな??
瞬間、ラトさんがすっと冷たい瞳をして、
「ダメだ。俺が守護する」
ラトさんが宣言したけれど、いや、そもそも休職中〜〜〜!
マキアさんが遠くを見つめつつ、
「なんとかディオ様に相談するけど、無理だと思います」
と、力無く呟いた。
うん、多分そうだろうなぁ‥。
ラトさんはものすごく複雑な顔をして、私の手をギュッと握るけれど、握力!!握力強い〜〜〜!!
「ラトさん、痛い、痛いです!!」
「‥すまない」
「大丈夫ですよ。お返事は書いてませんし」
そう伝えて安心してもらおうと思ったのに、またラトさんが私の手をギュッと握る。いや、だから痛いって!!!慌ててもう片方の手でラトさんの手をパシパシ叩いたさ。それを見たマキアさんがそれはもう申し訳なさそうに私を見つめる。
「‥スズさん、うちのヴェラートが本当にすみません‥」
「いえいえ、大丈夫ですよ。仕事はしっかりしてますし」
「たまに一息入れたい時は連絡して下さい。こちらで預かります」
「嫌だ」
「じゃあ、もうちょっと落ち着けヴェラート!!!」
マキアさんにそう言われると、速攻でプイッと横を向く大型犬‥じゃなくて、ラトさん。うん、もうこれはご主人の言葉以外聞き入れないみたいな感じだな。私はラトさんを見上げて、
「寝る前まで部屋で話でもしましょうか?」
「それなら‥」
「ヴェラート!!!お前、もう少し遠慮しよっか?!!」
涙目のマキアさんからそっぽを向いて、私の手を優しく両手で包み、嬉しそうに微笑むラトさん。うーん、大型犬って育てるの難しい‥。いや、守護騎士って難しい?これから本番なのに、こんなんで大丈夫なのかな?なんて思いつつ、私達は神殿へと向かっていった。
ラトさん、結構マキアさんと同期ゆえに
仲良しです。(マキアさん「え?」仲良しです!)




