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番犬、ちょっと嫌。大分嫌。


ラトさんの噂が流れてから3日。

あっという間に噂は広まり、今度は「リトさん」として受け入れられたけど‥、村の住民さんのあっさり受け入れちゃうところを素直と表現していいのか、騙されやすいと表現していいのか‥ちょっと悩む。



「はぁ‥、それでもラトさんを皆受け入れてくれて良かったです」

「そうだな」

「ラトさん、嬉しそうですねぇ‥」



朝食後のお茶を飲みつつラトさんと手を繋いで会話をするけれど、それはそれは嬉しそうである。私としては複雑なシチュエーションな上に小っ恥ずかしい。


「そういえば歌の練習はどうだ?」

「が、頑張ってますぅう」

「大丈夫。スズの歌はとても上手だ」

「うううう、でも奇跡はしょぼすぎですよ?」

「奇跡に優劣などない」


ラトさんは優しく微笑んでくれるけど、私は茶柱が立つとか、ラトさんが話せるようにはなったけど、私と手を繋がないと話せないとか‥、なんていうか違う、そうじゃない感が強い気がするんですが‥。そんな私の複雑そうな顔を見て、小さく笑うラトさん。そっと繋いでいる手に指を絡める。


わ、そ、それすごく照れるんですけど!!

うっかり勘違いしちゃいそうだからやめて欲しい‥。

多分赤くなってしまったであろう顔でラトさんをちょっと窘めるように睨むと、眉を下げて笑って、



「‥スズと話せるだけで俺には奇跡だ」

「‥そ、それは良かった、ですけど?」

「だから、スズは十分すごい歌の乙女だ」



そう言って、私の手をぎゅっと握るので、

私は自分の頬に一気に熱が集まっていくのがわかる。

こ、この大型犬ときたら〜〜!!!!甘いんだよ!!視線とか!声とか!!守護騎士なのにこんな女の子がドキドキしちゃいそうな展開やめてくれ!!いつか現場復帰するんでしょうに!そう思うと、ちょっと冷静になれ‥、うん、無理だ!なれない!!乙女達と男性のいない環境で育って耐性ゼロだもん!!


「わ、わ、わかりました!!わかりましたから、一旦手をちょっと離して頂けると!」

「‥わかった‥」


ラトさんはちょっと不服そうな顔で私の手をそっと離すけれど、心臓がやばい。

隠れモードの太鼓のゲームのようにドコドコ鳴ってる!!!

ラトさんは手を離している時は犬の特性が強いって言ってたけど、私の心臓の音は流石に聞こえない‥よね?



と、玄関の扉がトントンとノックされる。



「あれ?こんな朝早く誰だろ‥」



ラトさんが私の言葉と同時にさっさと長い足を動かして玄関の扉を開けた。

おーい、ラトさん?話せない設定なの忘れてない?

慌てて私も玄関の方へ行くと、配達屋のおじさんが金色のリボンが結ばれている大きな真っ白い箱を持って、ちょっとぽかんとした顔で立っている。



「あれ?スズちゃん、彼氏??」

「いいえ、訳あって家を守ってくださっているリトさんです」

「へぇええ?あ、そういえば噂になってたな!手が早いんだって?」

「そこは事実無根なので、他の人に聞いたら訂正しておいて下さい」



ラトさん(本人)の前でそういうことを言うんじゃない!!

じとっと配達屋のおじさんを睨むと、決まり悪そうに笑って「悪い、悪い。今度直しておく」って言って配達に行ったけれど、今度出なくて今すぐ直してくれ!!


私がはぁっと大きなため息を吐くけれど、当のラトさんは気にすることなく白い大きな箱を持って家のテーブルにそっと置いて、私を手招きする。



「そういえばその箱誰からだろう?」



私がそう呟くと、ラトさんが箱の角に書いてある住所を指差す。


「ん!??これってパトの神殿‥??」


二人で顔を見合わせて、私は金色の綺麗なリボンをスルッと解き、蓋を開けると中には冬の祭り用の衣装だろうか。ものすごい綺麗な刺繍が施されたローブとシンプルな形をしたドレスが入ってる。



「な、なにこれ!??」



衣装の上に金色に縁取られた手紙が一通入っていて、それを広げると、



『パトの神殿で歌う衣装を贈ります。

どうぞこれを着て歌って頂けたら幸いです。ディオ・ヘルベート』


「ふわ!??お、贈り物!???」



贈り物って、えーとプレゼントってこと??

こんな素敵な衣装をぽいっとくれたの?私はポンコツ乙女だぞ?奇跡なんて多分起きないぞ??‥あまりの豪華な衣装に私の頭がパニックになってしまう。


「‥ワウ‥」


ラトさんの声にハッとしてそちらを見ると、ローブとドレスを恨めしそうに見ている。


「ら、ラトさん?」

「‥ワウ」


えーと、そういう時こそ手を繋いで気持ちを伝えて欲しいんだけど。

これはちょっと嫌、なのかな?



「‥髪飾りはラトさんがプレゼントしてくれたのをつけていきますね」



そう言うと、ラトさんはハッとした顔をして私を見る。



「‥ダメですかね?」



ラトさんはブンブンと勢いよく首を横に振り、嬉しそうにふにゃりと笑った。

う、その顔‥私は大変弱いなぁ。慌てて目を逸らすとラトさんが不思議そうに私の顔を覗き込んだけれど、ちょっと今はやめてくれ。




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