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番犬、安心の設定。


ニーナさんに有り難く変装メガネを継続して借りることになり、なおかつラトさんの事は秘密にしてくれる事になった。



‥ただニーナさんが流す噂がどんな化学変化を起こすのかわからないのが怖いけど。もう全てお任せすることにした。



ラトさんは大手をふって私と一緒に居られるし、パトの神殿へも付いて行ける!!と、すでに確信を持っているらしい。私なんて本当にニーナさんの噂をみんなが信じてくれるのか自信がないのに‥。ラトさんはそれはもう大変嬉しそうだ。まさにご主人の側にいられる!!って感じだけど、歌の神様‥これってどうなんでしょ?



「スズ、今日は何をするんだ?」

「今日ですか?まだ暖かいけれど、寒さもこれから徐々に厳しくなっていくし、薪を集めておきたいし、野菜も収穫して保存しなきゃだし、薬になる材料も取って来ないとだなぁ‥」

「やる事が沢山あるな」

「そうなんですよね、加えてそこに歌の練習です」



嗚呼!!パトの神殿で歌うだけ‥って思ってたら、乙女達に「選ばれた乙女が歌う」なんて聞いちゃったもんだから、私のプレッシャーは半端ないものになっていく〜〜!!一難去ってまた一難!‥って、いやいやそもそもそれが私のお仕事なんだけどさ。


思わず重い、重い溜息を吐くとラトさんが心配そうに私を見つめる。


「大丈夫か?どこか痛むのか?」

「‥そうですね‥、頭痛、腹痛、胸の痛み‥とか?」


そういった途端、いきなり横抱きされてラトさんが玄関へ駆けていく。

ちょ、ちょっと待って!!どこへ行こうとしているんだ!??私は慌ててラトさんの抱き上げている手に触れる。



「ラトさん!?な、何を??」

「すぐに診療所に!!」

「ごめん、ラトさん大丈夫!!すっごく元気になった!!今!!まさに!」

「だが、ちゃんと診てもらった方が‥」

「大丈夫!!大丈夫だから!!」



なんとか説得して、ラトさんの腕から無事私は降り立ったけど‥、うん、迂闊に体調が悪いとも言えないな。ラトさんは本当に大丈夫なのかと心配そうに私を見つめ、



「薪は俺が拾ってくる。薬の原料になる薬草も教えて貰えば取ってくる」

「いやいや、お手伝いして頂けるならまだしも、ラトさんに全部お任せなんてできませんよ。ラトさん、一応静養中って事忘れてませんか?」

「ワン」

「あ、ちゃっかりそんな時だけ手を離して!」



ラトさんは可笑しそうに笑って、私が手を繋ごうとするとひょいっと体をかわして、玄関の扉を開けて逃げようとするので、手を掴もうとすると、オンボロな我が家‥。ちょっとめくれた床の一部に足を引っ掛けた。


「わ、わわ!!」

「ワン!」


転びそうになって慌てて手を出そうとすると、サッとラトさんが体を受け止めてくれた。


さ、流石、騎士さん‥動きもバッチリ。

とはいえ、抱きつくような形になってしまって、思わず私はカチッと体が固まってしまう。う、うわぁあああ、恥ずかしい!あと照れ臭い!どうして私はこうポンコツなのだ。そろっとラトさんを見上げると、ラトさんはちょっと照れ臭そうにしていて‥。



思わず私は顔が一気に赤くなって勢いよく離れた。



「ご、ごめんね、ラトさん!!」

「ワウ‥」

「いや、本当私ってばポンコツだから‥、別に助けなくても生命力はバッチリあるから大丈夫‥」



そう言いかけて、ふと視線を感じた。

ラトさんもそれに気付いて、私とラトさんとでその視線の方向へ揃って一緒に顔を向けると、家のすぐ横の茂みからルノさんの子供達がこちらを見てニヤニヤしてる。


「スズ、もう新しい彼氏できたのか?!」

「なんか前の男と似てないか?」

「お前、また騙されるなよ?」


「ち、ちがーーーーーーう!!!!!!全部違うーーーー!!!!」


私の叫びは外へと木霊したのはいうまでもない。

そうして、ほどなくニーナさんが流した噂が村中に流れたが‥、



「スズ、今度の男は以前いた男の双子の弟で、こっ酷く振られたスズを心配して駆けつける優しいらしい奴らしいけど、手が早いってもっぱらの噂だぞ」


「ルノさん、それほぼ違う」



ラトさんは優しいという所だけ採用し、私はちゃんと「話は出来ないけど、とても優しい人」と「私は振られておらず、ただ相手が理由があって一時的にここを離れた」と説明した。‥ちゃんとその話が流れてくれるとは限らないけどね‥。





田舎ってさ、噂の脚色もすごいよね‥。

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