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ポンコツ乙女は今日も歌う。  作者: のん


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番犬、考える。


フルラがくれたのは、お茶かと思ったらお酒だったらしい。

たった一杯飲んだだけで酔っ払ってしまうとは私は今世はアルコールに弱かったんだな。


あれからニーナさんに家まで馬車で送ってもらって、すっかり目が覚めた私は何度もお礼を言うと「奇跡、面白かったよ〜!」とニコニコ笑って手を振られた‥。くそ、今度作っていくチョコのパイ包みにわさびをねじ込みたい。



「ふあぁ‥、眠い」



先にお風呂を頂く事になって、衣装を丁寧に脱いでいると、コトンと青い小石がポケットから滑り落ちた。


「‥あれは奇跡、じゃないよねぇ」


鳥がたまたま咥えていた小石を拾うと、洗面台の前に置いた。

まぁ、キラキラして綺麗だし飾ってもいいかな。

そんなことを考えつつお風呂に入ってサッパリしてからラトさんと交代だ。


お風呂場へ向かっていったラトさんを見て、私はラトさんをどうやってこっ酷く捨てた男から、本当はとても優しくて良い男としての地位返上をすべきか悩んだけど、こればっかりは今考えても思い浮かばない。


「明日、ニーナさんに相談するか‥」


噂を流した張本人にどうにかしてもらう他ないだろう。

お茶でも飲もうと、お湯を沸かそうとすると、急にお風呂場からラトさんが上半身裸で出てきた!


「ら、ラトさん!??」

「ワン、ワン!!」

「え??なんて??」


急いで駆け寄ってくるラトさんの手を繋ぐと、青い小石をずいっと私の前に出した。



「この小石はどこで?」

「え、それですか?今日、歌い終わった時に白い鳥が膝に突っ込んできたじゃないですか。その時に鳥が咥えていた石なんですけど、それがどうかしましたか?」

「‥鳥‥」



ラトさんはそう言って、まじまじと青い小石を見つめるけれど‥。

もしかしてそれって珍しいの?

不思議に思ってラトさんを見上げると、ラトさんは青い小石を握って、


「これを少しだけ預かってもいいだろうか?」

「っへ、別にいいですけど‥」

「ありがとう‥っくし!」

「ラトさん、その格好は寒いでしょうからお風呂に入ってまずは温まってきて下さい」


私がそう言うとラトさんは、ようやく自分が上半身裸だと言う事実に気が付き、顔をちょっと赤らめると「失礼!」と言ってお風呂場へ走り去っていった‥。うん、大変乙女だな。



だけどあんな青い小石どこにでもあるよね?

なんて思いつつお茶を淹れて一口飲むと、ホッと力が抜けた。

そうして、乙女達の会話を思い出す。そういえば乙女達はラトさんが犬になりかけてたって言ってたけど、今は普通に人間だよなぁ。しかも手を繋いでさえいれば話せるし。


「呪いってなんだろ‥」


神官長様は一体なんて言ったんだろう。

何かしたんだろうか。‥なんて考えているとラトさんがお風呂から出てきた。


「ラトさん、お茶飲みますか?」

「ワン」

「はい、どうぞ」


カップに入れてテーブルに置くと同時に私の手を握って、


「ありがとう」


とお礼を言って微笑む番犬。

うん、もう手を繋ぐことに一切の抵抗がない目をしてるぜ。


ラトさんに神官長様のことについて聞こうかな‥と思ったけれど、神官長様がそもそも話さないってことは機密情報漏洩防止なのかもしれない。私ごときがうっかり聞いていい話じゃないかもしれないしなぁ。



「スズ?」

「え、ああ、ラトさんの呪いってどうやったら解けるのかなって‥」

「話はできてる」

「それは私だけ限定では?あ、でもニーナさん辺りに試してもらって‥」

「それはできない」

「なぜ」

「俺のご主人はスズだ」

「ん、んんんんんん〜〜〜????」



迷いの一切ない瞳で言われて、私は大いに首を傾げた。

しかし我が家の番犬は恐らく頑固っぽいし、今晩は時間も時間だ。

この辺の問題はサクッと明日にでも思い出したら、話をしようと思う私も大概だと思う。



ただ、ラトさんが嬉しそうに私と繋いだ手を目を細めて見ている姿を見て、不覚にもホッとしたし、胸がなんだか甘酸っぱい気持ちになったけど、まぁ、番犬だしね‥と、思うことにして、いいよね?




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