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番犬、慰める。


ラトさんの噂は無事広まったらしい。

でも、あまりにもあまりにな噂で私はどう収拾つけるべきか悩む‥。まぁ、きっとどうにかなるだろう。私はそう思って、訪ねに来てくれたルノさんにお茶を淹れた。



「えーと、それでなんで私の神殿の乙女たちがこっちへ来るか理由は言ってました?」

「ああ、それも言ってなかったな。最近魔物が出て物騒ってんで、ここはいっちょ乙女に歌ってもらって奇跡を起こしてもらおうって、近くの村が歌を歌いに来て欲しいってべタルの神殿にお願いしたらしい。まぁ、それもあってついでにスズの様子も見にくる事になったらしいぞ」



なるほど‥。

と、いうことはラトさんのことはまだバレてないってことか。

ホッと胸を撫で下ろすと、ルノさんが可哀想なものを見るような瞳で私を見て、


「大丈夫だ。村の奴らにはそんな酷い捨てられ方をしたって今日くる乙女や守護騎士達には言ってやるなって話しておいた」

「ご配慮いたみいります〜〜〜〜〜!!!!」


何だろう私の何かがまたもゴリゴリと削られたぞ??

ううう、朝ご飯は自分の好きな物ばかりにしておこう!!と決意をしていると、ルノさんが私の肩にそっと手を置いて、



「うちの嫁が、お前にぴったり合う男を探しておいてやるって息巻いてたから安心しろ」



そう言った途端、寝室からドゴッと何か大きな音がして、私とルノさんが驚いてそっちを見る。ら、ラトさん!??バレてしまうんだけど〜〜!!??


「あ、ああ〜〜〜!!!つ、漬物石がもしかして落っこちちゃったかも!??」

「漬物石!??」

「そ、それで今度そんな目に遭いそうになったら殴ろうかと‥?」


しどろもどろにそう話すと、ルノさんはぐっと口を食いしばり、


「元気出せよ‥!!!」


と言ったけど、ルノさん‥噂をそんな簡単に信じちゃダメだよ‥。

うん、今ので心の中は確実にごっそりと削られてしまった。



心配そうに「無理するなよ!あと夕方迎えに行くから」と言いつつ慌ただしく帰っていったルノさん。


うん、歌の神様ありがとう‥。

とりあえずラトさんの話はバレずに済みそうですが、心の中がやるせない思いで一杯です‥。玄関のドアをそっと閉めて、寝室の扉を見るとラトさんがそっと扉を開けて、こちらをじっと見ている。


「ラトさん、ルノさんに気が付いて良かったです‥。あと、あれなら今日は安心ですね」

「ワウ‥」


私の言葉に笑顔で頷くかと思ったら、寂しそうに見つめるラトさん。

あれ?何かあったのかな?

ラトさんに手を差し出すと、ラトさんは申し訳なさそうに手を握る。



「‥俺はそんな酷い男に見えたのか‥」

「そっちか!!!いや、そんな風には見えませんって!!あれはあれで私のことを心配してるっていうか‥??」

「それでは俺はどんな風に見える?」

「え、普通に守護騎士としてしっかり仕事もするし、優しいし、あ、あと強い!格好いい!!笑顔は可愛い!!」



必死にラトさんに対して思いつく言葉を話すと、ラトさんの目がキラキラと輝く。よし!!これは大丈夫そうだ!ホッとした途端、


「スズ!」


ラトさんが私の体をギュッと抱きしめて、私の心臓が破けそうになった。



「ら、ラトさん!??」

「ワウ!!ワウ!!」

「ん?あ、そっか手が離れて‥」

「ワンワン!!」

「え?えーと、はい?」



何を言っているかよくわからないけれど返事をすると、ラトさんは嬉しそうに目を細めて私をぎゅうっと抱き寄せるけど、あの!!私めは男性に耐性がない仕様でしてね!??真っ赤な顔になっているのが自分でもわかる。まずい!これはまずい!!ドクドクと鳴っている心臓の音が、今や犬の特性が強いラトさんにバレてはしまわないかと焦る。



「ら、ラトさん、く、苦しい!」

「キュウ‥」

「う、またそんな悲しそうにこっちを見て‥。あのですね、ラトさんは力が強いのでもうちょっと優しくしてくれれば‥って、んん?これまずいかな?」



そういうことじゃないよね?って、ハタッと思ったけれどラトさんはそんな私の言葉通り優しく抱きしめてくれた。それはなんだか泣きそうなくらい優しくて、大事に思うようなハグで‥。



これは勘違いしちゃダメだ、絶対ダメだ。



頭のどこかで必死に叫びつつ、私はラトさんの背中をそっと撫でた。

‥うん、だってラトさんは番犬だしね。





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