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番犬、励ます。


ラトさんと部屋を掃除して、私はお客さん用のハンモックを外で軽く叩いて干しておいた。毛布は先日洗っておいたので、すぐに使える。いや〜〜、こまめに掃除しておいて良かった!



綺麗に掃き掃除して、雑巾掛けもしてくれたラトさん。

守護騎士っていえば掃除をするイメージがなかったけど、ちゃんと身の回りのことができるんだなって思って、ちょっとホッとした。なんでもかんでもお世話する事になったらどうしようって思ってたし‥。


「お掃除ありがとうございます。もうちょっとしてからハンモックを吊るしましょうね。えーと、あと少しでお昼だけどその前に畑仕事をしてきてもいいですか?」


大きなラトさんを見上げてそう話すと、不思議そうに首を傾げる。



「あ、ああ、神殿だったら神様に祈るとか、神殿にお参りに来た人をもてなすとかあるんですけど、ここはご存知の通り小さな村だし、神殿じゃなくて祠なんで朝掃除をしたら、あとは基本自給自足なんで畑をやったり、薬を作って売ったりして生計を立てるんです」



私の言葉にラトさんは驚いたように目を丸くする。

うん、そうなんだ。私のようにポンコツだと神殿から追い出されて、自分で生活しろって言われるのよ‥。まぁ、神殿も鬼じゃないから、読み書き計算、薬の作り方、家事に炊事に裁縫に‥と、一通り教えて家を与えてくれるから良いと思うよ。祠を守ってるという名目で雀の涙ほどのお給与も与えられるし。


「‥もうちょっと歌が上手ければ違ったかもなんですけどねぇ」


ははっと笑うと、ラトさんが私の肩に手を置く。

ん?何か言いたいのかな?

ラトさんを見上げると、ラトさんは私の手を取ってギュウッと握った。



「ら、ラトさん!????」

「‥‥ワン」



ん?

もしかして、これ、慰めてる?

それとも元気付けようとしてる?

うっかり忘れてたけど、「愛称で呼ばれると落ち着く」って言ってたし、心が犬寄り‥なのかな?



そっと手を上げて、ラトさんの綺麗な髪を撫でてみる。

よ、よしよし、いい子、いい子?



ピクリと体が動いたかと思うと、ラトさんはちょっと照れ臭そうにしつつも嬉しそうに私の手をまたギュッと握ってきた。なるほど、これは犬!犬みたいなものだ!!と、思い込むことにした。なにせ絵面がやばいしね。



「‥えーと元気付けようとしてくれた感じですかね?」

「‥‥ワン」

「あ、ありがとうございます。でも、いきなり手を握られると驚きます」

「‥ワン?」

「いや、そんな澄んだ瞳で「なぜ?」みたいに言われても‥」



気付いてます?

貴方かなりの美形なんですよ?

守護騎士でも貴方「歌の乙女」仲間ではかなりの人気だったんですよ?

‥まぁ、私は遠くから見るだけだったけど。



「えーと、距離感って大事なんで、普通に背中を撫でるとか‥いや待てよ、それもかなり恥ずかしいな。肩を軽く叩くくらい?」



なにせ乙女仲間とは完全に女子校のノリだったので、落ち込むとお菓子をあげるとか、バンバン肩を叩いて「まぁ、しょーがねーよ!」なんて言ってたから、普通の男女の慰め方とか検討がつかない。ウンウンと悩んでいると、ラトさんは私の空いている手を取ると、キュッと軽く握った。


「ワン?」


伺うように私をじっと見つめるラトさん。

だから、そう凝視しないでくれ。心臓に悪い。

あと手を握る力加減の話をした訳じゃないって言いたいんだが、「これなら大丈夫?」って瞳でじっと私を見るものだから‥


「そ、それくらいなら?」


と答えた。それでも大分恥ずかしいけれど、まぁ、さっきよりは加減してくれている分、十倍心臓にいい。ラトさんは私の言葉に納得したのか、手を嬉しそうに繋いでそのまま外の畑の方へ歩き出した。



「いや、外では手を離しましょうか」

「ワン!??」

「そんな何故?みたいな顔をされても‥」



小さな村ではすぐに噂になるんだぞ?

私はそう思ってその手を離すと、ラトさんはまるで捨てられた子犬のような瞳で私を見つめた。や、やめろ!!人の良心を斬りつけてくるんじゃない!!





ワンコの「ダメ?」って顔は凶器。

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