表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/164

番犬、特性と習性。


ラトさんが話をできるようになったのは喜ばしい。

だって手を繋がないと話ができないとはいえ、会話は大事だからだ。

夕飯を食べつつ、ラトさんを手を繋ぎながら会話するのが大変恥ずかしいけれど‥、まぁ、会話は大事だし‥と思い込んでいる私。



「そういえば今って犬の習性とか、特性はどうなんですか?」

「そうだな‥。会話をしている時はいつもと変わらないが、手を離すと犬の特性が強いことがわかった」

「と、いうと?」

「普段よりも音がよく聞こえるとか、匂いに敏感になる」

「おお、そんなことが‥」



そうか、犬になる呪いなんてとんでもない!なんて思ったけど、そういう特性は便利かもな〜。お肉をフォークで刺してもぐもぐ食べつつ、ふと気付く。


「あれ、そういえば人に寄り添いたくなるっていうのは‥」

「それはある」

「‥そこはあるんだ」


ちえっ、一緒の部屋で寝るのは回避できそうにないか。

流石に恥ずかしいからどうにかしたいと思ってたのに‥。と、ラトさんが繋いでいる私の手をギュッと握って切なそうに見つめる。



「‥一緒にいるのは、ダメだろうか?」

「‥‥‥‥だめ、じゃないですけどぉおお!!!!」



倫理ってもんが世の中にはあるんだよおおおお!!!

お付き合いもしてない男女が一緒の部屋で寝るってなぁ、どうかと思うんだよね!うん、そういうの関係ない人もいますけど、私は今世は神殿と神に仕える身なんで、どうにもきまりが悪いっていうかねぇ??なんて思いつつ、ラトさんの手を振りほどけない私を神よどうぞ許してください。明日、祠の掃除をまた気合入れてやりますんで‥。


「そこは、おいおいどうにかしましょうね」

「‥どうにかするのか‥」

「だってラトさんに恋人でもできたらまずいでしょう」

「!!!!」


私の言葉にラトさんが目を見開いて、私を見る。


「スズは、いるのか?!!」

「え?」

「恋人‥」

「ラトさん、思い出して。私は青春もへったくれもない閉じ込められた神殿で生活してたんですよ?」

「‥しかし、乙女の中には守護騎士と恋仲の子もいる」

「えっ!!!??そうだったんですか!!???」

「‥‥知らなかったのか」


知らないよ!!そんなの知らない!!

うっそ!皆いつの間に彼氏とか作ってたの?!!酷くない??

いっそ一言彼氏できたとか言ってくれても良くない??私なんて神官の爺ちゃんの言いつけをしっかり守ってたのに‥。



「‥知らなかったです‥」

「それは良かった」

「いや、枯れた10代を過ごした身として良かったのか疑問です‥」



そんな衝撃の事実に悲嘆にくれているというのに、ラトさんはなんだか嬉しそうに私を見つめている。なんだよ、彼氏がいないのがそんなに面白いのか。そりゃ、そんなに美人でもないですけどね‥、奇跡も茶柱レベルだし‥。


「神殿の皆、元気かな‥」

「そういえば、ここへきてもうそろそろ2ヶ月か?」

「はい。手紙は最初は送ってたんですけど、手紙を送るにもお金って結構掛かるんですね‥。日々のご飯代に消えちゃって、手紙はここのところさっぱり‥」

「マキアが来たら渡してもらおう」

「え、いいんですか?」

「ああ。だが、俺のことは伏せておいてくれると助かる」

「それはもちろん!わ、じゃあ何書こうかな‥」


思わずワクワクしていると、ラトさんが少し寂しそうに私を見つめた。



「‥神殿に帰りたいか?」

「ん〜‥、ココでの自由な生活もなかなか楽しいですからね。それはないです!なにせ番犬もいますし?」



ふふっと笑ってラトさんに笑いかけると、ラトさんは目を丸くしたかと思うと、嬉しそうにふにゃっと笑って


「ワン」


と鳴いた。あ、それ反則的に可愛いな。

胸が暖かいのに苦しくて、なんだか「一緒にずっといて」と言わんばかりの瞳でラトさんが私を見つめるので、つい手を伸ばしてラトさんの髪を撫でると、それはそれは満足そうに我が家の番犬は微笑んだのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ