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番犬、楽しみ。


午後はラトさんとドアを直したり、野菜の手入れや祠の掃除をする。

特に祠は念入りにせねばならぬ!なにせ私の願いを聞き入れただけでなく、ラトさんと手を繋がないと話せないとはいえ、話せるようになったのだ。ものすごく有り難い!!



祠の中を水拭きして、歌の神様の像も綺麗に磨き上げる。



「神様、本当にありがとうございます!感謝しております!!でも、まさかのパトの神殿で冬の歌を歌わないといけないのでそこも一つよろしくお願いします!!」


手をパンパンと叩いていると、


「おい、うちの村でも歌うの忘れてねーよな‥」

「ん?」


後ろを振り向くと、ルノさんが馬から降りてこちらへ歩いてくる。


「番犬はどーした?」

「あのですね、番犬じゃなくてラトさんです。今、裏の畑にいて‥あ、戻って来た」


ラトさんが私とルノさんを見て、小さくお辞儀をしつつ私の側へ来ると、ぴったりと横に並ぶ。‥うん、確かに番犬かもしれない。ルノさんの「やっぱ犬じゃん」みたいな顔をするけれど、この人は人間なんでそこんとこよろしく。


「えーと、ルノさん。後日歌を歌ってもらうって話を聞いてましたけど、もしかしてもう決まったんですか?」

「ああ、だってパトの神殿に行くんだろ?それなら早いとこちゃちゃっと歌ってもらった方がいいだろって」


ちゃちゃっと‥。

そりゃ人によってはただ歌を歌ってるだけに見えますけどね、音符や言葉一つ一つに心と魔力を重ねて歌うんで、すんごく疲れるし、集中がいるものなんですよ‥。



「‥わかりました。それで、いつ歌うんですか?」

「明後日の夕方に広場に村のやつらを集めるから、その時に頼む。時間は5時な」

「夕方なんですか?」

「親父がついでに飲み会しよーって」

「飲み会‥」



一応神聖な歌の会のはずなのに‥。

絶対歌よりも飲み会の方がメインだと思う。


「‥わかりました。じゃあ明後日の5時に広場に向かいます」

「おう!あとギルドのニーナが狼の魔物も買い取ってくれたから、その金を明日にでも取りに来てくれだと」

「ありがとうございます〜」


ルノさんはそう言って手を振ると、まだ仕事があるのか足早に去って行ったけれど‥私にはわかる。あれはな、飲み会をするのが決定したから、あちこちに声を掛ける算段をしているんだ。だって鼻歌歌ってたし‥。



それにしても、明後日に冬の歌か。

まずはそっちを頑張らないとだな。そう思っていると、ラトさんがすかさず私の手を繋ぐ。



「歌、楽しみにしている」

「うううううう、プレッシャ〜〜〜!!!」

「大丈夫だ。スズはとても上手だ」

「‥でも、奇跡は起こせないんですよ?」

「今、俺の呪いを解いてるのに?」

「‥それは、一時的ですよ」

「それでもすごい」



そう言ってラトさんが微笑みかけてくれて、ちょっとじんわりと胸が暖かくなる。そ、そうだよね、一時的かもしれないけど、確かに今話せているんだもん。うん、自分すごい!って思おう。


「ありがとうございます、ラトさん‥」

「お礼を言うのは俺の方だ」

「え〜、私ですよ」

「いや、どんな俺でも受け入れてくれて嬉しい」

「まぁ、確かにいきなり来た時はびっくりしましたね」


そう話すと、ラトさんはふふっと笑って、



「やっぱりスズはいつも面白い」

「え、いつも?」



そんなに面白いこと言ったり、やってたかな?

あんまりわからないけれど、まぁ、嫌な奴と思われるより面白いと楽しんでもらえる方がいいか。


「とりあえず、明日はギルドに行ってお金を取って来ましょうね。私も買いたい物があるし‥」

「一緒にか!」

「あ、はい」


一緒にお出かけ!!とばかりに目を輝かせる我が家の番犬ラトさん。

うん、人間だけど番犬でいこう。

じゃないとこの非常に美形な顔面に嬉しそうにされると私の心臓がまずいことになる。そんなことを考えつつ、家の中に一緒に入って行くのだった。




ルノさんも村長さんも飲み会大好きです。

もちろん村の皆も大好きですが、一番大酒飲みはお菓子屋の

おばちゃんで、お酒を隠されるほどのザルです。

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