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番犬、今度こそ。


あれからどうやって家に帰ったのだろう。

気が付いたら私はラトさんと一緒にマキアさんに手を振って、玄関の前に立っていた‥。



「歌‥。神殿で歌‥」

「ワン」

「すみませんラトさん‥。せっかく神官のディオ様もいたから呪いについても聞けば良かったし、私の奇跡の話もすれば良かったのに、もう歌を歌う事実に頭が真っ白になっちゃって‥」



私の横で手をしっかり繋いでいるラトさんを見上げてそう話すと、ラトさんは静かに首を横に振った。


「ワウ」

「えーと、気にするなって事ですか?」


首を縦に振ったラトさんは私を家の中に入れるけれど‥。

そう言えばドアが壊れてたんだ‥!どうしようと思っていると、ラトさんがどこからか板切れを持ってきて、家の前に立てかけてくれた。


「ワウ!」

「そうですね‥、今の所はこんな感じで。あとで、ちゃんと直しましょう」

「ワン!」

「あとラトさん、一旦着替えたらダイニングに来て下さい。歌います」

「ワウ!??」

「あの、奇跡が起こせるかはわからないんですけど、とにかく犬の呪いをどうにかしないとまずいってわかってますよね??マキアさんも明日、団長さんの所へ相談してまた近く来るって言ってたじゃないですか!」


そう話すとラトさんは悲しそうな瞳で私を見つめる。

お、おい、なんでそんな「酷いことをする」みたいな目で私を見るんだ‥。

犬になったら戻れなくなるって言われてる本人が元に戻るのを拒否とかどうなってるんだ。



「‥ラトさん、元に戻ったら話を出来るんですよ?」

「‥‥ワウ」

「それはそれで楽しいじゃないですか」

「ワウ」

「しかも守護騎士に戻れるんですよ?」

「‥‥ワウ」

「途端に顔を曇らせてますけど、もしかして仕事に戻りたくないとか?」



ラトさんに聞くと、ちょっと考え込んで、それから私の手をそっと握る。


「キュウ‥」

「う、うう、そんな辛そうに鳴いて、こっちを見ないで下さい!良心がチクチクするぅうううう!!!」


そうか、つまり仕事に戻りたくないんだな?

まぁ、呪いを一身に受けたんだし、現場復帰を怖がる気持ちはわかる。ミスしたらものすごく怖い上司が待ってる部屋に報告に行く時なんて、これから地獄か‥なんて思ってたもんね。



「‥わかりました。もし、呪いが解けてもラトさんの現場復帰の決心がつくまではうちで面倒をしっかり見ます!」

「ワウ!?」



ラトさんは私の顔を見て、嬉しそうに微笑んだ。

そうか、そんなに大変な職場なんだな。



「なにせ我が家の番犬!ですしね」

「‥‥‥‥ワウ」



あ、なんだその複雑な顔は。

自分から番犬になりに来たのに〜〜。

じとっとラトさんを見上げると、ラトさんは私の手をまた軽く握ったかと思うと、額を肩口にすり寄せる。


「ら、ラトさん??!」

「クゥ‥」


寂しそうな、でも甘えるような声を出してから、そっと私から離れると、手の平に『着替えてくる』と書いてラトさんは着替えに行ってしまった。



な、なんだったんだ?

なんか甘えたい気分だったのか?

ひとまずお茶を淹れてから、ラトさんと入れ違いでいつもの服に着替える。



「‥呪いに、奇跡かぁ‥」



今日の奇跡はひとまず以前いたベタルの神殿に手紙でも書いて聞いてみよう。そんな事を考えて、着替えてダイニングに行くとラトさんが私にすかさずお茶を淹れたカップを渡してくれた。


「ありがとう、ラトさん。でもお茶の前にまず歌っちゃうね!」

「ワウ‥」


ちょっと複雑そうなラトさんは私を見つめて不安そうな顔をしている。

そうだよね‥。私の歌如きで呪いが解呪出来る保証なんてないしね。でも、とりあえず歌っておくのはいいと思うんだ?



二人向かい合って、いざ歌うぞ!!

そう思ったけれど、よく考えたらこれってちょっと照れ臭い。



「あの、ちょっと横を向いて聞いて頂けると‥」

「ワウ!!?」

「いや、だって照れ臭くて‥」

「ワウワウ‥」

「そんな嫌だって言われても‥」

「クゥ〜ン‥」

「あ、ちょっと!その鳴き方反則です!うう、その目も反則です!!」



寂しそうに私を見つめるラトさんに必死に抵抗したけれど、無理だった‥。

私はラトさんに手を繋がれて、目の前で歌を歌うことになってしまった。お、鬼!鬼だ〜〜!!番犬じゃなくて、鬼だ!





ささ、歌いますぜ〜〜!!

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