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番犬、複雑。


村長さんの家まで馬に乗って行くと、その家の前に大きな立派な馬車が停まっている‥。ちょっと待て、あれって間違いでなければディオ様の馬車では?冬の祭りは中止になったのを知らなかったのかな?



「あれって‥」

「ディオ様もこちらにいらしたんですね」

「ワウ‥」

「仕方ないな、ヴェラート。神殿の人間にはこっちにいるのは内密にしてあるんだ。隠れておいてくれ」

「え!?そうなんですか??あ、そういえばこの前もそうだった‥」



私の言葉にマキアさんが申し訳なさそうに眉を下げる。


「すみません、一応ヴェラートの居場所を王族にバレると困るんで」

「‥そうだったんですか。でもうちの村では結構顔出ししてますけど」

「あ、その辺は大丈夫です。そこまで噂も来ないし。でも、流石にそろそろ変装道具でも渡そうかと思ってたんですよね」


そういうの本当に早く言って‥。ラトさんは私と離れるのをちょっと躊躇っていたけれど、マキアさんに追い立てられて不満顔でサッと何処かへ姿を隠した。それから私とマキアさんで、玄関の呼び鈴を鳴らすと村長さんの息子のルノさんが顔を出す。


「お!来たか!ささ、入って、入って!」

「お、お邪魔します」


ルノさんに手招きされて、私達はぞろぞろとリビングに通されると、すでに大きなソファーにディオ様と村長さんが座っていた。ディオ様は私を見ると、ふわりと笑って私の方へ歩いてくる。



「すみません、遅くなりまして‥」

「いえいえ、今回は大変でしたね。お怪我はありませんか?」

「はい、ラト‥マキアさんのおかげで‥」



チラリとマキアさんを見ると、ちょっと曖昧に微笑む。

うん、秘密だ。秘密。なにせディオ様は偉いし、賢いだろうから、ラトさんなんて一発でわかっちゃうだろうしね。以後、気をつけねば!!ディオ様はホッとした様子で私を見ると、またニコッと笑って、



「しかし今日は残念でしたが、こんなに素敵なスズさんを見られて良かったです。とても綺麗ですね」

「え、い、いやいや、そんな‥」

「ふふ、スズさんは控えめな方ですね」



そう言って、私の手を取るとそのままソファーに座るように促してくれたけど‥、て、照れ臭い!!正面に座っているルノさんがこっちをニヤニヤして見てるから余計に照れ臭いし、殴りたい。マキアさんはその横のソファーに座ったけれど、マキアさんがこちらを複雑そうな顔で見ている。ええっと、何かあったのかな?


とにかくどうすればいいのかわからず、村長さんの方を見ると、ちょっと疲れた顔で私達を見つめ、



「いや、とにかく今回はまさか魔物がまた出るなんて思っていなくて‥、念の為にと騎士達を送ってくださって、本当に感謝しかございません。マキアさん達にもなんとお礼言っていいか‥」



その言葉にマキアさんが「当然のことをしたまでです」とサラッと伝えた。うーん、騎士さんって本当にそういう所格好いいなぁ。ディオ様も嬉しそうに頷いて、


「そうです。念を入れておいたのがたまたま功を奏しただけです。けれど、今後は乙女が歌う時はこちらからも騎士を送るようにしましょう。また何かあれば大変ですからね」


ディオ様はそう言ってにっこり微笑んだけれど‥。

ちょっと待ってくれ!!ポンコツの乙女の為に毎回騎士を送る!?



「え、そんな流石にそれは‥」

「いいえ、何が起こるかわからない状況ですし、それくらいはさせて下さい」

「そうだぞ、スズ!うちの小さい村じゃあギルドはあってもそこまで対応できないし‥」



ちょ、ちょっと!!ルノさん!!何を言い出すんだ!!

私はこれ以上目立つのは嫌なんだけど!?


「いや、それは‥」

「ああ、それと冬祭りの歌はせっかくですし私共の神殿で今度歌って頂けませんか?」


「え」

「せっかく練習したのでしょうし、なんの機会もないまま春の祭りまで歌う機会がないのも寂しいでしょうし」


全く寂しくなーーい!!!

しかし、その話を聞いた村長さんとルノさんは嬉しそうに目を輝かせて私を見る。



「すごいですね!ディオ様の神殿といえばパトの街で1番大きい所‥」

「頑張れ、スズ!奇跡の大きさはこの際横に置いておけ!」

「スズさん、うちの隊もそちらへ警備に行きますよ!」

「ううう、ちょっとプレッシャーを更に掛けないで下さい‥」



ディオ様の手前、怒鳴らなかった自分を褒め称えたい‥。

あれよあれよという間に、私は2週間後にパトの神殿で冬の歌を歌うことが決定してしまった‥。マジか!!その前に色々解明したい事があったのに!!そう気が遠くなりそうになりつつも、ディオ様へ「辞めたいです」とも言えないポンコツ乙女。



「‥精一杯、歌わせて頂きます」



としか言えなかった。

っていうか、それしか言えないよね!??




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