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番犬、部屋掃除。


ほとぼりが冷めるまで、こじんまりとした2DKの我が家で犬のようになってしまう呪いを受けた守護騎士であるヴェラート様をお預かりすることになった‥。



マキアさんはそれはそれは喜んで、


「これ、ヴェラートの着替えと武器です。あ、こっちの魔石は連絡用としてお使い下さい。また近く訪ねに参りますね!あ、村の村長さんにはざっくり説明しておきますが住民に不安を煽らないよう、呪いのことは伏せておきます」


晴れ晴れした顔で話すマキアさん。

‥恐らく色々振り回されたのだろうなぁ。静かに頷きヴェラート様の私物を一式受け取る。と、マキアさんはヴェラート様を見て、肩に手を置く。



「ヴェラート!俺は絶対呪いを解呪できるように手を尽くす!だからお前も諦めるなよ!上にはちゃんと話をしておくから‥待っててくれよ!」

「ワン」



‥シュール!!

真剣な顔で熱量のこもった言葉をかけるマキアさんに、「ワン」と鳴いて涼やかな顔をしているヴェラート様。‥私、本当にこの人と暮らしていけるのかな‥。お金に釣られてしまったけど、もはや不安しかない。玄関先でマキアさんを見送るけれども、マキアさんは何度も振り返りつつ、馬を連れて村長さんのいる村の方へ走って行った‥。



と、肩をトントンと叩かれて、ヴェラート様を見上げると板切れを指差す。



『ラトと呼んでくれ』



と書いてあって、私は二度見した。


「え、えええ、いやいや、いきなり愛称呼びは‥」


ましてや花形の守護騎士様をそんな風に呼ぶなど不敬じゃない?

ブンブンと頭を横に振ると、ヴェラート様は板切れにまた何かを書き出す。



『犬の呪いを受けたので、そう呼んでもらえると落ち着く』

「お、落ち着く?」



そう聞くと、ヴェラート様は静かに頷いた。

そ、そうかぁ‥。

騎士になるだけでも大変なのにせっかく守護騎士になったのに、王族を守って呪いを一身に受けてしまったんだもんなぁ。それだけでもショックだろうに、呪いのせいで心穏やかなに過ごせないなんてそれは辛いか‥?



「じゃ、じゃあ、ラトさん‥」



大変小っ恥ずかしいことこの上ないけれど、これでも歌の乙女!

神殿‥いや祠だけど使える身!

神殿や歌の乙女を守ってくれる守護騎士の心を守らずして、いつ守る!今でしょ!!とばかりに私は羞恥心をぶん投げて、ラトさんを名前を呼ぶと、



パッとまたも顔を明るくして、嬉しそうに微笑むラトさん‥。



う、うわ〜〜〜〜!!!!

ビジュが!!ビジュが大爆発や〜〜〜!!!

後ろからフラッシュ焚いたの!?ってくらいキラキラしてる!!

思わず目が潰れそうな自分を叱咤激励し、足に力を入れて踏ん張った。よし!生きてる!!



「ラトさん、私はスズと‥。あ、でも言葉は話せないのか‥」

「くぅ‥」



寂しそうに鳴くラトさん。

やめて、今、萌え死にそうになったから。


「と、とりあえず何かあれば肩を叩くなり、何かして下さいね。あ、村の人には話せないって説明しておきましょうね。あと、えーと、えーと‥、あ、そうだ!うちの中を案内しますね。ベッドとかどうしようかな‥」


そう話すと、ラトさんは少し照れ臭そうに俯く。

あ、大丈夫!ちゃんとどうにかするからね!!家にまた一緒に入って、すぐに見える3つのドア。それを一番左から指さして、



「えーと、一番左がトイレとお風呂。真ん中の部屋がラトさんの部屋にしましょう。あとで確かハンモックがあったので吊るしておきますね。一番右が私の部屋です。何かあれば声をかけて下さいね」



そう話すと、ラトさんはコクッと静かに頷く。


「真ん中の部屋はちょっと物置になっているんで、まずは掃除しちゃいましょうか。ラトさんは掃除は‥」

『できる』


素早く板切れに文字を書いてくれて、心強い。


「良かった。じゃ、箒とちりとり持ってきますね」


真ん中の部屋に入って窓を開けると、ふわりと風が入ってくる。

ああ、いい風だなぁ。ここの国は通年通して穏やかな気候なのがありがたい。ただこの辺りは冬場は雪も降るらしいから、早めに家の隙間をどうにかしなければ。



後ろを振り返ると、ラトさんが周囲を見回したかと思うと、ウロウロと中を歩き回る。‥えーと、もしかして初めての場所に警戒してるとか?犬だけに?そう思っていると、ラトさんは私を見て、



『ここに一人で住んでたのか?』



と、板切れに書き込む。



「はい!もちろんですよ」

「ワウ‥」



まるで「なんてことだ」とばかりにラトさんが鳴いた‥。

ええっと、住めば都だよ。多分。




犬を飼う際にはまず環境整備大事だよね!!!

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