番犬、謎だらけ。
草花に体を覆われ動けなくなった狼達、そして言葉を話したラトさん。
私の頭のキャパシティはもう限界一歩手前なのに、ラトさんにギュウギュウと抱きしめられて大変苦しい。あの、騎士の力って強いって自覚して!!
「ら、ラトさん苦しい!あと、今言葉‥」
「ワン!」
「あれ??言葉は??今、確かに名前‥」
「クゥン‥」
「もしかして一瞬だけの奇跡、だったのかな‥」
ラトさんの顔をまじまじと見上げて、そう話すとラトさんは嬉しそうに微笑み、またギュッと抱き寄せるけど‥、ちょっと待て!ステイ!ステイだ!!
「ちょ、ラトさん、待て!!!」
慌ててラトさんの体をバシバシと叩くと、ラトさんはちょっと不満そうに体を離してくれた。‥即座に手を握られたけど。まぁ、この辺でいいことにしよう。そう思って手を繋ぎつつ、草花に覆われた狼達を見る。草花に口元を覆われて死んでいる?そう思ったら、寝息が聞こえてきた。
え、寝てるの??
ラトさんを見上げて、
「寝てるなら大丈夫‥?えーと、ラトさんこれって魔物ですか?」
私がそう聞くと、ラトさんがコクッと頷く。
やっぱり、これ魔物なんだ!でも、なんでこんなピンポイントで我が家を狙うかのようにやってきたんだろう‥。
「もしかして、魔物が活発化してるって言ってたけど、そのせい‥ですかね?」
「ワウ‥」
えーと、そうかもってこと?
ラトさんが真剣な顔をして、狼の姿をした魔物を見ている。
そんなに近付いて大丈夫なの?私はちょっとビクビクしつつラトさんと一緒に見るけれど‥。そういえば無我夢中で歌ったけど、これって大きな奇跡じゃない?!茶柱なんて吹っ飛ぶくらいの奇跡ではないか?
と、ドドド‥と何か地響きがして、ラトさんと音のする方を見ると、マキアさんが馬に乗ってこちらへ駆けてきた!
「マキアさん!?」
「ヴェラート!スズさん!無事ですか?怪我は!??」
「あ、はい、この通り大丈夫です」
「良かった‥!村の池の方でも魔物がまた出現して討伐してきたんですが、こっちにも走っていく姿を見たって話を聞いて慌てて来たんです」
池の方でもまた出たの?
私が驚いてマキアさんの話に目を丸くしていると、マキアさんは眉を下げて申し訳なさそうに私を見る。
「あの、それでですね‥村長さんがこの状態で冬祭りを迎えるのは危険だから、今日はお祭りは中止して、後日小さく歌を歌ってもらうことになりまして‥」
「え」
「あ、でも!ちゃんと歌は歌えるし!!だ、大丈夫ですから!!」
中止!??
あれだけ頑張ったのに!??
気が遠くなりそうな私をラトさんはさっと支え、ニコニコと微笑む。
う、うう、ラトさんはなんでそんなにご機嫌なんだい?あ、そっか、さっき聴きたいって散々言ってた私の歌を聴けたもんね。そこまで思い出してハッとする。
「そうだ、マキアさん!さっき歌ったら草花が突然大きくなって狼達を捕まえてくれたんですけど、あとその歌の後、ラトさんが私の名前を呼んだんです!」
「犬語で?」
「いや、ちゃんと言葉で!!でも、一回だけで‥」
そういうと、マキアさんは目を丸くして私とラトさんを交互に見て、顔を輝かせる。
「歌の乙女の奇跡ですね!!」
「いや、でも一回だけだから奇跡と呼んでいいのか‥」
「一回でもすごいですよ!!解呪が不可能って言われてたのに‥。あの、スズさんもう一度ヴェラートの為に歌を歌って頂けませんか!??」
「えっ‥」
マキアさんの言葉にラトさんの目が期待に輝く。
あ、ちょっと待って?そんなことを言われてもですね、そんな急には歌えないっていうか、また歌っても奇跡が起きる保証はないんですよ?
「そ、その前に魔物!!魔物をどうにかした方が!!」
「ああっ!!そっちもいましたね!では後でまたぜひ!!」
「ワンワン!!」
「ええーーっと、その喉の調子が万全でしたら‥?」
うわ〜〜、どうしよう!!今すぐ逃げたい。
そんな私の思いをよそにマキアさんとラトさんは善は急げとばかりに狼の魔物をすぐに家から持ってきたロープで縛り上げた。だけどなんで草花が私の歌で伸びて狼を捕まえてくれたとか、魔物が何でここに現れたかを話した方がいいと思うんだけどなぁ‥。




