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番犬、エスコート!


気持ちの良い冬晴れ!

ピッカピカの雲ひとつない晴天!

まさに冬祭りにふさわしい天気である!


私はさっと身支度してから、朝一番に祠を掃除して、前世でやったやり方で手を合わせる。



「歌の神様、何卒!!何卒今日の祭りで失敗しませんように!!誠心誠意歌いますので、できればちょっとだけ皆にわかる奇跡も起こしてくれると大変嬉しいです!!」



‥と、本来なら感謝の言葉を述べるのに、私はお願い事ばかりしてしまった。

すみません、まだまだ信心の足りない歌の乙女で‥。


ちょっと冷えた手を擦り合わせて部屋へ入ると、そこはきっちりと腰に剣を携えピシッとした白シャツに黒のパンツ姿のラトさんが立っていた。


「ラト、さん?」

「ワン」

「えっと、なんで剣を‥?」


そう聞くと、ラトさんが板切れに『今日は守護騎士として仕事をする』と書いてあるのを見せてくれた。



「守護騎士‥。でも、体調は大丈夫なんですか?」

「ワウ」



ラトさんが微笑みつつ頷くけれど、これはえーと、元気だから大丈夫ってことかな?


「そうですか‥、じゃあ今日一日どうぞよろしくお願いしますね。あ、そうだ朝食!汚さないようなメニューにしましょうね」


そう話すと、ラトさんはちょっと目を丸くして、それから可笑しそうに微笑んだ。え、だってその綺麗な格好が汚れては大変ではないか。



二人で急いで朝食を食べたら私も大急ぎで着替えて、軽く化粧をしてからラトさんがプレゼントしてくれた髪飾りをつける。



鏡の向こうの自分は、もうここまできたら歌うしかない!と、覚悟を決めた顔をしている。うんうん、そうだぞ私。ぱちっと両手で両頬を叩いて、気合いを入れる。



「よし!頑張るぞ!!」



ケープを羽織って、ドアを開けるとラトさんがそわそわした顔で私を待っている。‥うーん、守護騎士、こんな時でも大型犬っぽいな。私の姿を見るとパッと顔を輝かせて、まるでダンスに誘われるかのようなお辞儀をしたかと思うと、静かに手を差し出す‥。


「ふふ、こんな時でもリードですか?」


眉を下げて笑うと、ラトさんは首を横に振り、私の手を取ると手の平に指で文字を書く。



『エスコート』



文字を書いたラトさんが私を見上げて、フニャッと笑った瞬間、息が止まった。


なんだこの可愛い大型犬は!!!

思わずへなっと腰が抜けそうになって、慌ててラトさんが受け止めてくれて、心配そうに私の顔を覗き込む。‥主にラトさんのせいですよ‥とばかりにじとっと赤い顔で睨む。



「‥歌、今日は頑張りますね」

「ワン」

「‥ラトさん、もし失敗したら慰めて下さい」

「ワン!」

「成功したら、褒めて下さい」

「ワン!!」

「‥一応言っておきますけど、下手でも笑わないで下さいね」



チラッとラトさんを見上げて、そういうとラトさんはちょっと目を丸くして、



「ワン!」



と、まるで「そんなことしない」とばかりに優しく笑ってくれた。

‥うう、うちの大型犬可愛いなぁ。その様子が何だか可笑しくてつい笑ってしまう。


「ふふ、ラトさんがいれば大丈夫って思えますね」

「ワウ」

「じゃあ、エスコートお願いしますね」

「ワウ!」


大きなラトさんの手をそっと握ると、ラトさんがそれは嬉しそうに微笑む。

うん、大型犬に見守られていれば安心だ。



手を繋いで、二人で玄関の方へ向かった瞬間、ラトさんの足が止まる。



「ラトさん?」



ラトさんの名前を呼んだ瞬間、私を後ろに下げ、剣を握る。

一瞬で空気がピリッとしたものになって、私は目を丸くする。窓の外を見ると、何かが家の前に近付いてくるのが見えた。



「ラトさん、今、窓の外に‥」



言いかけた途端、ドアをドスン!!とものすごい衝撃音がして私の体が跳ねた。

な、何!??何が起きたの?

驚いてドアを見つめると、またドスン!!とドアに何かがものすごい勢いで打ち付ける音が聞こえて、私は目を丸くする。



すると、体を固くしている私の手の甲にラトさんがそっと手を伸ばし、



『敵が来た』



と、書いたけど、待って?!!

敵って誰?!!っていうか、どなたでしょうか!??





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