番犬、一生飼います!!
シルクルさんと突然やってきた小神官のカレンズさんが、バチバチと火花を散らして大変怖い。ここは仲良くしようよ〜〜!そう思っていると、カレンズさんがふんと鼻を鳴らし、
「では、早速パトの神殿の皆さんの為に、我が歌の乙女達に歌って頂きましょうか」
カレンズさんの言葉に、シルクルさんが眉間のシワを深くするけど、あ、それはもう気にしなくて結構です。是非ともどうぞ!私は何の問題もございません。
そう思っているのに、シルクルさんはカレンズさんをジロッと睨んで、
「カレンズ様、いささか無礼が過ぎるのでは?」
「おや?随分と王都の乙女でなく、辺境の乙女の肩を持ちますな。ふむ、お見合い相手に推薦しただけありますね」
「なっ!??お見合い??!」
シルクルさんが目を丸くして、私とカレンズさんを交互に見るけれど‥、い、言ってなかったんか〜〜〜い!!!しかも勝手に釣り書きを送ったんか〜〜〜い!!!
どこからどう突っ込んでいいものかと思っていると、パンパンと誰かが手を叩き、ハッとしてそちらを見るとニーナさんがちょっとため息を吐く。
「今は小競り合いしている場合じゃないよね?協力するのが先じゃない?」
「ニーナさん‥」
珍しく真面目な事を言ってる!!
そこに感動していると、ニーナさんはカレンズさんを見て、
「あと、今は歌わない方がいいと思いますよ。どんな条件で呪いが発動したかわかってないんだ。かえって危険に晒すことになる」
「‥フン!一般人が知った口を聞くな!王都の歌の乙女といえば、神に約束された存在!奇跡を必ず起こせる存在だぞ」
おいおい、仮にも小神官様がなんて言い草だ。
私はもう呆れを通り越して、笑うしかない‥。
カレンズ様が後ろを振り返ると、歌の乙女達が静かに部屋へ入ってくる。
誰も彼もがとても綺麗で、キラキラと輝いていて‥、確かにこれは確実に奇跡を起こせる!って感じだ。私は思わずぽかんと口を開けて彼女達に見惚れていると、カレンズさんがその前に出てきて、
「さぁ!乙女達よ、今こそ犬になってしまった神官達の「呪い」を解く為に歌うのだ!」
そう言うと、乙女達は少し戸惑った顔をしつつも、歌い始める。
綺麗な旋律が部屋に流れて、ドヤ顔になっているカレンズ様‥。あの、貴方はちょっとそこ退いてもらえませんかね?私もそばにいるラトさんも聞き入っていると、ポン!と、何かが弾ける音がする。
「え」
音のした方を見ると、端っこに立って歌っていた乙女が犬になってる!!
目を見開いた瞬間、どんどんポンポンと弾けた音がして、乙女達が犬になってしまって‥、最後に乙女達が犬になったのに気付いたカレンズ様が、
「な、何で犬に‥」
と、言った瞬間、ポン!!と音がして、一匹の灰色のチワワになった。
一瞬シンとなって‥、次の瞬間、
「「「「い、犬ぅううううう??!!」」」」
皆で叫ぶと、一人ニーナさんがが呆れたように「だから待てって言ったのに〜〜」と、言いつつ大変面白そうに笑っている。‥ちょっとは隠して!!その顔!!!
ニーナさんは、キャンキャンと鳴くチワワをヒョイっと持ち上げると、ずいっと顔を近づけて、
「私を一般人に間違えるなんて、とんだ田舎者だねぇ。まぁ、ワンコになってくれて仕事がしやすくなっていいわぁ〜〜。あ、そこの騎士さん!こっちの犬だけは檻‥じゃなくて、ケージに入れておいて〜」
‥今、檻って言った。
檻って言ったぞ。
しかし、シルクルさん自らがケージを持ってきてくれて、ニーナさんはキャンキャン吠えるチワワのカレンズ様をポイッと中に放り込んで鍵を閉めると、ものすごくいい笑顔になった。‥怖い。
そうしてニーナさんは王都からはるばるきたのに、速攻で犬になってしまった乙女達を見回して、
「あーあ、上司が最悪だと大変だねぇ。君らはひとまず別室で休んでて。大丈夫、スズがきっと直してくれるから!」
って、私の肩を叩いたけれど‥、あの、今歌った瞬間犬になっちゃったの見てましたよね!??私、犬になっちゃいますよ?ニーナさんに無言で訴えると、ラトさんが私の手を痛いくらいにギュッと握って、
「スズ!!歌は、今は絶対ダメだ!!!」
「あ、それはハイ」
「スズが犬になったら‥、俺が一生見るけれど‥」
そう言うと、照れ臭そうに恥じらうラトさん。
いやいや、そこ恥じらっている場合じゃないし、そうじゃない。
私はラトさんを落ち着かせるべく、頭を撫でると、いつの間にか足元にいた犬のディオ様はため息を吐くし、シルクルさんに至っては、青い顔で立ち尽くしている。
‥‥ええっと、この状況どうすればいいのだ???
昨日、ちょっとダウンしてたので更新できず‥。
うう、寒暖差がきつい‥。




