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番犬、撫でるのは自分だけ。


ラトさんがすぐにルノさんへ報告へ行くと、吹き出して‥、


「うちの乙女は、祭りの前に色々起きるなぁ〜〜。まぁ、もう慣れっこだ!こっちは大丈夫!すぐにパトの神殿へ行ってやって下さい」


と、言ってくれたそうだ。

そんな人をアクシデントの乙女のように言われても‥と、思ったけれど、すでに色々と起こしているな。



あれからすぐにニーナさんや、村長さんが馬車を用意してくれて、私とラトさんは他の騎士さんと一緒に飛び乗るように馬車に乗って、一路すぐにパトへ向かう。



ガラガラと車輪の音が鳴り響く馬車の中でも、ラトさんは他の騎士さん達と相談しているけれど‥、本当にどうなっちゃうんだろう。っていうか、私もしかしなくても歌う‥のか?!サーッと顔が青くなって、ラトさんの向かいに座って話を聞いているニーナさんにそっと声をかける。



「ん?スズ、どうしたの?」

「あの、もしかしなくても私、やっぱり歌う必要、ありますよね?」

「そうだねぇ。ペペルの温泉が効けばいいけど‥、それが無理だったらスズの歌が必要だろうね」



やっぱり〜〜〜〜〜!!!!

春の祭りの歌どころじゃない、解呪の歌なんて私は知らないぞ?

だってラトさんでさえ、犬から解放できてないのに‥。どうすればいいんだろう‥と、思わずラトさんの手をぎゅうっと握ると、ラトさんが話をしながら私の頭をよしよしと撫でる。



「‥へ?」



ぽかんとラトさんを見上げると、ポンポンと頭を優しく叩いたかと思うと手を戻し、ラトさんはなんでもないように話を続ける。え、えーと、これはもしかして無意識に励ましてくれたってことかな??ソロっとニーナさんを見ると、ニンマリ笑って、



「あらあら、仲がよろしいですこと」

「ニーナさん!!ちょっと真面目に話しでもしましょっか!?」

「え、私が?」

「何でそんなびっくりな顔をしてるんですか‥。っていうか、あの、神殿で呪いって不可能なはずですよね?それなのになんで犬になってしまったのかなって」

「それなんだよね〜〜。以前もパトの神官が呪術を使ったけど、やっぱりあの石を使ったのかな〜。それとも他になにか方法があるのかなって‥。ただ、そんないっぺんに人を獣化なんて本来できないんだよね」



そうなの?

私が目を丸くすると、ニーナさんはちょっと考え込む。


「人を呪うのにある程度対価が必要なんだよ。血とか、命とか」

「えっっっっ!!??」

「まぁ、敵もバカじゃないだろうし。命を賭けてまで神官達みんなを獣化の呪いを掛けようと思ってないと思うんだ。だから効力はそんなにないと思うんだけどね‥」


血とか、命を対価にして呪術‥なんて物騒極まりない事を聞いて、私は青ざめる。じゃあ、ラトさんに呪いを掛けた人は‥。そうだ、確か消されたって言ってたけど‥、それって、つまり‥。



と、ラトさんが私の手をぎゅっと握る。

まるで大丈夫だと、必ずそばにいるとばかりに手を握ってくれたから‥、ホッとする。うん、今は切り替えていかないと。確かに私の歌で奇跡を起こせるかはわからないけれど、兎にも角にもディオ様や神官さん達を助けないとだ。



「そろそろパトの神殿に着きます!」



馬車を運転する騎士さんが伝えてくれて、馬車の中がより一層緊張感が高まる。お、おおう、私までドキドキしてきた‥。幌の中から久しぶりに見えたパトの神殿。まさかこんな事になって訪れると思わなかったなぁなんて思いつつ、門を通った。



神殿に着くと、ベタルの騎士のマキアさんが待っていてくれた。


「おう!ヴェラート、こっちだ!」

「マキアさん!こっちへ来てたんですね」

「はい。あ、シルクル殿ですね!ベタル第二騎士団の一番隊長のマキア・トーラトです!神官達はこちらに‥」


シルクルさんに挨拶をしたマキアさんは、早速神官さん達を保護しているという場所へ案内してくれて‥、私はラトさんと手を繋いでそこへ歩いていくけれど、緊張で心臓が口から飛び出そうだ。



着いた場所は、中庭に面した部屋で扉を開けると、



色々なタイプの犬達が座っていて‥、騎士さん達に囲まれている。



お、おお、本当に色々なタイプの犬達がいる。

と、一匹の薄茶の毛並みのラブラドールのような犬がスクッと立ち上がる。



「もしかして‥、ディオ様?!」



私が声を掛けると、その犬は「ワン!」と鳴いた。

なんとなく、犬になっても綺麗な佇まいだろうな‥って思ってたけど、当たってた!慌てて駆け寄って、ディオ様の前にしゃがむと、「キュウ‥」と悲しそうな声で鳴くので、頭をそっと撫でる。



「きっと、きっと直しますからね!」

「ワン!」



‥って、言葉は通じるようで良かったけど、私ってば流れるように上司の頭を撫でてしまったな?慌てて、さっと手を話すと、ディオ様は甘えるように鳴くので、ソロっと手を伸ばすとすかさず私の横にしゃがみ込んだラトさんに、



「‥撫でるのは、俺だけで」



拗ねたような顔で言われて、顔が赤くなってしまった。

ちょ、ば、番犬!!??





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