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番犬、緊急報告。


急遽明日、王都の歌の乙女が来たらすぐに「春の祭り」をすることになった。

シルクルさんや、ベタルから来た騎士のトーレンさんが集まって、ワクワクした顔のニーナさんと警護や祭りをどんな風に行うか、なんて話をする。



いや〜〜‥、歌の乙女としてはいつも順番が来たら歌うだけだったけど、こうやって周囲の人の協力や警護があったから、平穏無事に歌ってこられたんだなぁって、しみじみと実感する。



「それでは、当日の朝に俺はスズを会場に連れていく」

「わかりました。こちらは王都の乙女達とギルドの方で待機しましょう。スズさんと合流後に祭りの流れを話をして、皆さんで警護しつつ会場へ‥」



シルクルさんとラトさんを中心として、話し合いをするけれど‥、

この二人実力が同じくらいなのか打てば響く‥ような会話をして、どんどん当日の警備について決めていく。それを周囲の騎士さん達は感心したように話を聞いているけれど‥スピード感、すごい。


ただただ会話を頷きつつ聞いている私と、向かいに座っていた優しそうな顔のトーレンさんと不意に目が合うと、にっこり微笑み小声で、


「すごいですよね、お二人」


そう言うので、私はウンウンと頷いて、


「騎士さんって、いつもこんな感じなんですか?」

「そうですねぇ、いつもはもう少し落ち着いているかもしれませんが、なにせ今は先日の根っこの魔物も出た事もあって、警戒が上がってます」


あ、そっか。

根っこの魔物って、あちこちの村や町に出たんだっけ。

そうだよね‥、そんな中で歌の乙女が移動して歌を歌うんだ。騎士さん達は警戒するよね。トーレンさんは優しく微笑んで、


「皆でスズさんや、歌の乙女達をお守りしますから安心して下さい」


トーレンさん、優しいなぁ。

お付き合いして欲しいって言われた時はどうしようかと思ったけど‥。

お断りしたにも関わらずサラッとスマートに接してくれて、有り難いしかない。胸の中がほんわりと暖かくなると、急にラトさんにテーブルの下で繋いでいる手をぎゅっと握られる。



ん?なんだ、ラトさんなにかあったの?

顔を上げると、ラトさんがチラッと私を見て、ちょっとだけ口を尖らせている。‥えーと、もしかしてヤキモチかな?そっとラトさんの手を握り返すと、嬉しそうにニコッと微笑むから、私の心臓に大変悪い‥。か、可愛いなぁ。



思わず叫び出しそうな気持ちをぐっと堪えた瞬間、



「た、大変です!!」



ギルドの扉がバンと勢いよく開き、外から転びそうになりながら騎士さんの一人が駆け込んできた。瞬間、ラトさんとシルクルさんが椅子から立ち上がる。


「どうした!?何があった?」


シルクルさんが騎士さんに聞くと、騎士さんは真っ青な顔で、



「パトの神殿の神官達が、軒並み犬になってしまったそうです‥」

「「「「えっ!!??」」」」



犬!??

私が目を丸くすると、カウンターの横で話を聞いていたニーナさんが一人だけ面白そうな顔をする。こら、不謹慎ですよ。


「犬とは‥、ええと、あの動物の‥」

「はい、犬です!今、ベタルの神殿の騎士もそちらへ調査へ向かいました」

「ヴェラート殿‥」

「そちらへ我々も行った方がいいでしょう。なにせ神官を守るのも私達の仕事です」


ラトさんはそう言うと、私を見て、



「すまない‥。春の祭りがあるのに」

「いやいや、そっちのが大変ですってば!ルノさんにはすぐに伝えておきましょう。それにパトの神殿にはディオ様もいらっしゃるし‥、私も気になって歌どころじゃありません」

「‥そうだな。俺はすぐルノさんに報告を。スズはここで待っていてくれ」

「は、はい」



なんだかとんでもないことになったぞ?

春の祭りどころか、神官達が皆犬になってしまったなんて‥、これではリアナ姫の結婚もどうにかなるの?私はそわそわしてしまうと、ラトさんは急いで外へ駆け出す。


ラトさんも大丈夫かな‥。

犬になったり、人間になったり‥、本当にこれからどうなっちゃうんだろう。

気が遠くなりそうになっていると、ニーナさんが私の横に座って、



「ディオ様は、どんな犬になってるのかな〜〜。呪術かな?楽しみだね!」

「違う違う!!そうじゃない!!気になる所がまるで違う!!って、ニーナさん神殿へ行くんですか?」

「犬種が気になって、春の祭りどころじゃないでしょ」

「だぁああああ!!不謹慎!!!」

「まぁまぁ、さて、忙しくなるぞ〜〜!」



ニッコニコのニーナさんに呆れた顔で見つめると、向かいの席のトーレンさんがどこか複雑な顔をしている‥。す、すみません!!悪気はないんです!多分‥‥?




いつかものすっごいでっかい犬を飼いたい!

もふもふ!!が恋しい。

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