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番犬、どんな主人も好き。


ちょっと元気を取り戻したラトさんと一緒にお昼を食べて、大きな花のリースを持ってギルドへ向かう。


そう、明日来る王都の神殿の歌の乙女の警護とか、どんな風に歌うかを相談しなきゃなんだけど‥、私は大変気が重い。まだ春の歌の練習だって不十分なのに、エリート中のエリートと果たしてちゃんと仕事できるのかな。



「スズ、大丈夫か?」

「へ?」

「眉間にシワが‥」

「ああ‥、もう明日の事が不安で。だって王都の歌の乙女ですよ?!私のポンコツっぷりも多分知っているだろうし‥。どうしよう、こんなに下手なの?!とか、奇跡も起こせないの?って思いますよねぇ‥」



道すがら思わずラトさんに愚痴ってしまうと、ラトさんが小さく吹き出す。


「え、なんで笑うんですか‥。こっちは真剣に悩んでいるのに」

「さっき、呪いはどうにかなると話したのに、歌になるとスズはすぐ慌てるんだなって‥」

「うっ‥!痛いところを‥」

「いや、そんなところも可愛い」

「っへ?」

「俺を励ましてくれるスズも、弱気なスズも可愛い」


急な甘い言葉に目を丸くして、一拍おいてから顔が急速に真っ赤になる。

そ、そういうのいきなり言うのはいけないと思います!!

慌てて顔を逸らして、


「‥心臓に悪いです」


と、呟くとラトさんが私の手をぎゅっと握る。



「‥やっぱりさっきキスしておけば良かったな」

「だぁああああああ!!そ、それ今は禁止です!!」



頼みますよ!!耐性ないからね!!

本当に心臓破けちゃうからね!?

ラトさんを赤い顔でじとっと睨むと、ラトさんは嬉しそうにニコニコと微笑むけれど、なんでそんなニコニコなんですか。私は注意をしているんですよ??



と、通りの向こうのギルドの扉が開くと、ニーナさんがひょっこり顔を出す。



「あ、スズ!番犬ちゃん、ちょうどいい所に来た〜!リースをルノがいるから持っていってもらって、すぐ話し合いしちゃおう!なんせ明日王都の歌の乙女達が来るんでしょ?!すっごい奇跡起こせるらしいよ〜〜」

「うううっ、心臓が!!抉られたような痛みが!!」

「スズ!!気をしっかり!!」



す、すっごい奇跡を起こせるんですか!!

そうですよね!?選ばれし乙女が集められると言うのが王都の神殿ですしね!

ヨロヨロしながらギルドへ入ると、ルノさんが椅子に座ってお茶を片手に手を上げる。



「お〜、早速リースできたのか!パトの神殿に行く前にできて安心したぜ。あ、花の香はおじさんがすぐ持ってきてくれるらしい。明日、いつでも歌えるぜ!」

「待って待って、明日?!!」

「だって、パトの神殿に行くんだろ?あんま王都の歌の乙女も長居できないらしいぜ」



そんな事情、何一つ知りませーーーん!!!!

気が遠くなりそうになっていると、シルクルさんが申し訳なさそうな顔で私の側へやってくる。



「どうも王都の神殿で、獣人国ルルカの王をお招きする事が新たに決まったようです」

「ああ、それで‥」

「なので、明日歌の乙女を迎えましたらすぐに春の祭りを行い、翌日には馬車でパトの神殿で春の歌を歌うことに」



すっごいタイトスケジュール!!!

しかも私の心の準備時間考慮も何もあったもんじゃない!!!

思わず遠くを見つめると、シルクルさんが眉を下げ、


「本来はこんな風に歌の乙女や、村のお祭りを急かすような真似をするべきではないと思うのですが‥、本当にポワノの村にもパトの神殿にもご迷惑をおかけしてしまって‥」

「いえいえ、もうこればっかりはどうにもできませんから‥」


私がそう話すと、ルノさんが笑って、


「それにうちの村はすぐ祭りの準備できるから、心配ないっすよ!あとはスズの奇跡がなぁ〜〜」

「ええい!!!そこ黙ってなさい!!」


本当に余計なことを言うんじゃない!!

するとニーナさんがルノさんの肩に私が作った大きな花のリースを掛け、



「はいはい、じゃあルノ、お祭りをするできる準備してきて!」

「えー、もうちょっとからかっておきたかったのに‥」

「それは明日!ちゃんとお酒用意しておいてね!ワインは隣の村のセオさんとこのシェリ酒ね!!」



テキパキとお酒の種類まで指示しているけれど、本来祭りは飲み会じゃないからね?春が来た事を感謝するものだからね!?私はジトーッとニーナさんを見つめると、ニーナさんはにっこり笑って、



「スズは酔っ払っちゃうから、ジュース用意しておくね!」

「そうじゃない、そこじゃない」



‥本当にうちの村の住人はマイペースだ。

チラッとシルクルさんを見ると、驚いた顔をして立ち尽くしているけれど、すみません。これ、いつもの事だから‥。




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