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番犬、ずっと聞いていたい。


なんだかものすごーーく甘い空気になってしまったけど、いかん!仕事!今は仕事だ!!なんとか平静を保とうと無心で春の祭りの為に必要なリースの花を摘み始める。



ラトさんもちょっと私を気にしつつも、花を摘んでくれて‥、沢山の花をお互いに持ってきた籠の中に入れていく。



「こんなに花を使うんだな」

「はい。こっちの青い花は「清廉」を意味してて、こっちの白い花は「潔白」、黄色の花は「魔を打ち払う」って言われているんです」

「こっちの薄いピンクの花は?」

「‥えーと、それは「貴方に仕える者」って意味です」



そう言うや否や、ラトさんは辺りにあった薄いピンクの花をものすごい勢いでささっと摘んだかと思うと、ものすごくいい笑顔で私に薄いピンクの花束を手渡す。



「ワン!!」

「‥‥あ、りがとう、ございます」



言葉にしなくても、意味はわかります‥。

「貴方に仕えます」って言ってるんですね。多分。

ちらりと視線だけ上げて、ラトさんを見るとキラキラとした笑顔で私を見つめるので‥、全問正解だと思われます。



なんだかそんなラトさんの笑顔が照れ臭くて、顔から湯気が出ているんじゃないかと思いつつ、そっと薄いピンクの花束を受け取った私をラトさんが嬉しそうにふにゃっと笑ってすかさず私の手を握る。


「スズ、好‥」

「いや、だから言っちゃダメだからぁあああああ!!!!」


慌てて口を手で塞いでラトさんをきっと睨む。



「告白ダメ!絶対!!私のポンコツな奇跡ではラトさんが一生犬のままの可能性の方が大きいですからね!?」

「‥キスができるのは嬉しいが、気持ちを伝えられないのはもどかしいな」

「んなっ‥」



ラトさんの言葉に真っ赤になってしまう。

もどかしいと思ってもらえるのは嬉しいけれど、それはもう十分過ぎるくらいラトさんからの気持ちは伝わっているので安心して欲しい。


「‥ちゃんと伝わってますよ」

「そうか」


一応小声で伝えると、ラトさんは嬉しそうに微笑む。

うう、恥ずかしい。でもその顔には弱い。



「と、とりあえず、摘んできた花を一旦持ち帰って編み込みます!」

「そうだな。家に帰ったらスズの歌が聴けるのか‥」

「そんな楽しみ!みたいな顔をしてますけど、ずっと同じ歌で飽きちゃいますよ?」

「スズの声は飽きない。むしろずっと聞いていたい」

「〜〜〜ラトさん、お口チャック!」



ラトさんは「なんで??」って不思議そうな顔をするけど、スルスルと照れ臭くなってしまう言葉を連発してるって気付いて欲しい。結局、平穏な心はどこかへ行って大変心乱れたまま家に戻った私。歌の神様、こんな歌の乙女ですみません‥。


玄関先に椅子を置いて、籠から花を取り出して編もうとするけれど、その目の前にラトさんは座り込んでワクワクした顔をしているので、大変歌いずらい。あと恥ずかしい。



「‥ラトさん、せめて横を向いて下さい」

「ワン!?」

「いや、流石に直視されるのは恥ずかしいです」

「ワンワン!?」

「いや、いつも歌っている時はそんな事言わないのに!みたいな顔をされても、恥ずかしいので‥」

「キュ〜〜ン」



うぐっ、だからその雨降る軒先きの下で寂しそうに泣くワンコの顔をやめて下さい。心臓に悪いから。ラトさんは少し考え込んで、ハッとすると、私の横に椅子を持ってきて座ると嬉しそうにニコニコと微笑む。


‥これは隣に座っていれば直視してないからオッケーでしょ?って事かな?

私がラトさんを見つめると、ニコニコしながら頷いた。

うん、言ってないけど思いは伝わったらしい。



恥ずかしいけど、目の前で座って聞かれるよりマシか?

私の中の何かが「違う、そうじゃない」って言ってるけど、仕事も差し迫っているのであえて聞かないふりをして、私は一つ深呼吸すると、花を一つ取って歌を歌い始める。



花のリースを作る時に必ず歌う歌。



『花が歌う。春が来たと花が歌う。

冬にしばしの別れを告げ、鳥も獣も人も春を迎えて、神に歌う。

春が来たと花が歌う。』



って、感じの歌を2番、3番とあるんだけど、延々と歌いながらでっかい花のリースを作るんだ。籠から花を取っては歌を歌って、せっせとリースを編んでいると、隣で聞いていたラトさんが嬉しそうに私を見つめながら聞いていて‥、その甘い視線にうっかり歌詞を飛ばしそうになった。



あっぶな!



今は仕事‥、

今は仕事だ私!!

歌の神様、しっかりリースが編みきれるように私の心臓守って下さい〜!!!

そんなことを思いつつ、必死にリースを編むけれど‥うん、いつもの倍疲れるな、これ。





スズの声のイメージは柔らかいガーゼ生地!

って言ったら「何故布」って言われた‥。

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