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番犬、躾は大事。


ものすごく大きな魔獣と呼ばれるクマを倒したラトさん。


村長さんと住民の皆さんのご好意で馬車に乗せて、ギルドまで売りに行くことになったので、私とラトさんは馬車の端っこに乗せてもらって一緒に行くことにした。



ものすっごい大きな魔獣なのに剣で一発ってすごすぎるな‥。

荷台に乗せられてクッタリしたクマのような魔獣をまじまじと見てしまう。守護騎士さんって神殿では不審人物を取り押さえる所くらいしか見た事ないから、魔物なんてやっつけられるの?なんて思ってたけど、実力がなければそもそもなれないんだったなと思い出す。



「ラトさん、すごいですね‥。こんな大きな魔物を一突きで倒せるなんて‥」

「ワウ?」

「いやぁ、こんなにすごいんだもん。早く呪いをどうにかしなきゃですね」



そう話すと、ラトさんは目を丸くして私を見たかと思うと、寂しそうに眉を下げる。え、な、なんで??だって呪いはどうにかして、守護騎士に戻りたくないの?そう思ってハッとする。


お姫様を庇って呪いを一身に受けてしまったんだもん。

ラトさんだって人の子だ。きっとあんな怖い思いをもうしたくないのかもしれない‥。そんな風に思ったら、騎士に戻らないの?なんて発言、失礼だったかも。



「あの、ラトさん、呪いが解けてものんびりしたかったらいつまでも家にいていいですからね」



またもラトさんは私の言葉に目を丸くする。


「いや、あの、一度怖い思いをした場所に戻るのって緊張しちゃうかなって思って‥。だから、その、ボロい我が家で良ければ気持ちが落ち着くまでいた方がいいかなって」


しどろもどろになりながら、綺麗な顔でじっと私を見ているラトさんにそう話すと、ふにゃっと柔らかい笑顔になる。う、うう、その、顔、可愛いんでちょっと反則です。



周囲を見ているフリをして、横を向くと首元に何かがスリッと擦り寄る。



「へ」



目線をそちらに戻ると、ラトさんが私の肩口に頭をすり寄せている。

すり寄せている!??


「ら、ら、ら、ラトさん!!???」


驚いて、体がカチッと固まってしまう私。

まだ村の手前だけど、こんな姿を見られたら光の速さで噂が回っちゃうんですけど!?いや、そうじゃない!私は乙女なんだよ!!?あわあわしている私を横目に私の肩口に頭を寄せたまま、ラトさんがいつの間にか懐から出した板切れに何かを書き込む。



『犬なので甘えたい。褒めてもらいたい』

「い、犬!!!!!!」



人間ですよ?貴方は人間ですよ、ラトさん?

しかしそうであった。犬になる呪いを受けてたんだった‥。

こういう場合、神殿に使えていた歌の乙女はどうすればいいんだ?正解はどっち?歌の神様‥。一瞬悩んで、ちらりと頭を寄せて私を見上げるラトさんと目がぱちっと合う。



ええい!!ままよ!!

そっと手を伸ばして、ラトさんのふわふわの髪をそっと撫でる。



「よ、よしよし、よく頑張りました‥」



そう言って、そのまま柔らかい髪を撫でると、ラトさんはちょっと驚いた顔をしてから嬉しそうにふにゃっと笑った。わ、ちょ、うわぁあああ!!!声にならない叫びを心の中で上げた。


落ち着くまで家にいていいなんて言ったけど、早まったかもしれない。

こんなに美形と一緒の生活なんて心落ち着かないのは私の方だ。嬉しそうに微笑むラトさんを見て、私はちょっと後悔した。あくまでちょっとだけどね。



「あ、そろそろ村に着きますよ〜」

「はーい!!!!!!」



村長さんが振り返って声を掛けてくれたと同時に、私は高速でラトさんの頭を持ち上げた。うん、私達別に何もしてないよ?ラトさんは私のあまりの素早い動きに驚いたように私を見つめるけれど、あのですね、私と貴方は一応男女でしてね?犬と飼い主じゃないんですよ。


「あの、そろそろ人の目もありますからね?それにラトさんは騎士‥」

「ワン」

「なんですか、「番犬だぞ?」って感じで見てますけど人間ですからね?」


私がそういうと、ラトさんはちょっと不服そうに顔を横に振った。

ラトさん、人間だってば。しかし依然として不服そうに私を見つめるラトさん。



「‥家に帰ったら、番犬に戻って下さって結構ですから‥」



だから人間として村では過ごしてくれ。

そう言葉を繋げようとすると、ラトさんは嬉しそうに笑って、私の肩口に頭をすり寄せた。に、人間ーーーーー!!!!!




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