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番犬、考える。


生まれたままの姿で人間に戻ったラトさん。

あれから爆笑するニーナさんを横目に、目を丸くしたルノさんが慌てて着ていた上着を貸してくれて、真っ赤な顔のラトさんはギリギリ尊厳を保たれた。



「すぐうちから服持ってきてやるから、ここで待ってろ!!」



口はあれだけど、面倒見はいいルノさんが急いで村までニーナさんの馬を借りて帰っていき、私とラトさんは咲き乱れた花畑にちょっとだけ離れてお互い座り込んだ。というか、ラトさんは物理的に動けないし‥。



恥ずかしそうに俯いて、ルノさんの上着を抑えて座るラトさんの前で、ニーナさんはというと、枯れてしまった魔物の残骸を拾って、ふんふんと頷きつつそれを持ち上げる。



「あ〜〜、これやっぱり獣人国で見たやつだ!」

「獣人国‥!?」



ニーナさんの言葉にラトさんは立ち上がろうとして、ハッとして慌ててすぐに地面に座った。うん、何も履いてないしね。代わりに私がニーナさんの側へ行く。



「あの、ニーナさん獣人国って‥、リアナ姫の結婚相手の国、ですよね」

「そうだねぇ。リアナ姫の輿入れする国だけど、なんでこんな所に植わってるんだろ‥。本来ここにないはずの植物なんだけど‥」


「え」



不穏な言葉に私の体が止まる。

だって、それってもしかしてリアナ姫との結婚を反対するような動きじゃない?

動けないラトさんを見ると、難しい顔で花畑をじっと見つめている。私はそっとラトさんの方へ歩いていき、手を差し出すとラトさんがちょっと照れ臭そうに私の手を握る。


そうしてニーナさんの手の中にあるゴボウのような根っこを見つめて、


「故意に埋められた可能性もある」

「え」

「それにマキアからの連絡が途切れたのも気になる」

「え?そんな面白そうなイベントあったの?!」

「ニーナさん、違う。食いつくポイント違う」


だめだ。

全然シリアスな雰囲気にならない。それどころか違う展開になりそうだ。

私がラトさんの手を握りつつ、枯れた根っこの魔物を見つめると、ニーナさんはニンマリ笑い、



「まぁ、これはこれで良い素材が手に入ったし、スズの「呪い」の残りも番犬ちゃんが持っていってくれたし、問題解決だね!」

「待って下さい!!解決してない!何も解決してない!!「呪い」の残りをラトさんがまだ持ってるって大問題です!!」

「スズ落ち着いて。ほら、その為に薬草を買ってきたって言ったじゃない?でも、この場合番犬ちゃんに飲ませた方がいいかなぁ。それともスズにすべきかなぁ〜」



迷わないで〜〜〜〜!!!?

私が涙目でニーナさんを見つめると、ニーナさんは面白そうに笑って、ラトさんの方へ行くと耳元でこそこそ話してからクリーム色の袋を手渡した。な、何、気になるんですけど‥。


ニヤニヤ笑うニーナさんにちょっと警戒していると、ルノさんと親戚のおじさんが一緒に馬に乗って花畑へやってきた。



「お〜〜い!服持ってきたぞ!!」

「す、すごい!!こんなに花が!!流石歌の乙女ですね!!」



ルノさんが家に丁度来てたから連れて来た!と、話しつつラトさんに服を貸してくれて、ラトさんは慌てて木の後ろに行って着替えに行き、私はというと親戚のおじさんが涙を流しつつ私の両手を握ってお礼を言うという急展開に目を回していた。



「いやぁ、これで無事に花の香ができます!それについ昨日とうとうリアナ姫の輿入れが決まったそうです!」

「え」


「良かったなぁ!スズ、「祝福の歌」を歌うんだろ?こりゃ楽しみだな」

「え」



ざあっと血の気が引いて、私はルノさんと親戚のおじさんの顔を交互に見つめると、ニーナさんが後ろで大爆笑して、「スズの歌、楽しみだな!」って言うけど‥、言うけど‥。



ごめんなさい。

歌の神様‥。私は文句を言える立場でないって重々わかってるんです。わかってるんですけど、今は叫ばせて下さい。



「嫌ぁああああああああ!!!!!!」



大変声量が出るようになった私の声が花畑に木霊し、慌ててラトさんが駆け寄ったのは言うまでもない。





ちなみにこの世界の服は男性も女性も主にチュニックタイプに

ベルトをしているのでルノさんの服でも

安心して下さい!ちゃんと隠せますよ!

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