表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/164

番犬、初仕事。


ひとまずそれぞれ身支度して、朝ご飯である。

今日はふわふわのフレンチトーストを作ってラトさんに出すと、それはそれは目をキラキラとさせていたけれど、騎士さんって美味しい物を食べてるんじゃないの?嬉しそうにもぐもぐと食べてくれると、それはそれで嬉しいけどね。



「今日も畑仕事をしてから、村まで行って板とか買ってきましょうか」

「ワン」

「あ、大工道具十分にあったかな。ラトさんあとで一緒に確認してもらっていいですか?」



私の言葉に頷くラトさん。

うん、大工仕事が出来るのは大変有り難い。ここはついでに家の隙間風も防げるか相談してみよう。そんなことを考えていると、家の玄関を叩く音が聞こえた。


「こんな朝早くから誰だろ‥」


ラトさんが心配そうに私を見上げるけど、大丈夫。ここの村めちゃくちゃ平和だから。


「はーい」


玄関をガチャッと開けると、そこには茶色の髪もちょび髭の顔も、全身泥だらけの村長さんが立ってる!?後ろにも村の住民さん達がいるけれど、同じように泥だらけだ。



「村長さんどうしたんですか??」

「牛が、また牛が逃げちまって‥今、やっと戻したんだ‥」

「ええ?!この間柵を直したばっかりじゃあ‥」

「それがどうも魔物がいたずらして柵を壊したみたいで‥」

「魔物!??」



こんな小さな村に魔物なんていたの??

驚いて目を丸くしていると、後ろからラトさんが剣を握ってこちらへやってくる。


「あ、騎士様‥!昨日、マキア様から話を聞いて、その、図々しいとは思ったのですが、魔物をどうにかして頂けないでしょうか‥」


ラトさんは静かに頷くけど、大丈夫なの?

だって話せないのに‥。私が心配そうに見上げると、小さく笑ってくれたけど‥心配しかない。


「あ、あの、私も魔物の所に行きます!」

「え?でもスズさん危ないですよ?」


私の言葉にラトさんが驚いた顔をして私を見る。

わかってるよ、役に立つかなんてわからないけど、でもラトさん話せないのに何かあったらどうするんだ。私は村長さんを見て、


「いざとなったら大声で歌って撃退します!」

「‥撃退、できるんですか?」

「‥ううっ、そんな絶対無理じゃあみたいな目で‥」


く、挫けてたまるか!

私はなんとか心を奮い立たせて、ラトさんと村長さんを見つめる。



「とにかくラトさんは話せないし、何かあったら危険ですから手伝わせてください」

「‥わかりました。でもスズさん気をつけて下さいね」

「それはもう。で、魔物が出る場所ってもうわかってるんですか?」

「ああ、それはもう。村の北にある池の所です。どうもそこに最近住み着き始めたようで‥。人は襲わないからと放っておいたら、余計な知恵をつけてイタズラするようになって‥」



へぇ、そんな魔物いるんだ‥。っていうかどんな魔物なんだろ。

ラトさんを見上げると、板切れに何か書いている。


『兎の魔物だろうか?』

「そ、そうです!見てもいないのにわかるんですか?」

『何度か退治したが、大概そいつらだ』


あ、そっか。

神殿の守護騎士になる前にまず騎士として訓練するんだもんね。

そりゃ魔物にも詳しいか。感心したようにラトさんを見上げると、ちょっと照れ臭そうに微笑む。うん、今日も美形だ。



ラトさんは鞘に入った剣を腰に携えると、板切れに『すぐ行く』と書いたので、村長さんと村の住民さん、私とで早速案内しつつ池まで歩いていくことになった。


「っていうか、なんでこんな村に魔物が来たんですかね」

「それなんだよねぇ‥。特に魔物が好みそうな餌はないんだけど」

「そうですよね。あ、そうだ。魔物っていっぱいいるんですか?」

「私は何匹かは見たけれど、どれくらいいるかは‥」


数匹くらいなの?

じゃあラトさんでも大丈夫かな?

なにせ神殿に守られてぬくぬくと生活していた私。兎って聞けば、前世での可愛らしいフォルムが思い浮かぶ。



捕まえたら、もしかして飼えるかな?なんて思っていたんだ。その時は。



池に着いた途端、兎の魔物が池の周りで土を掘っているのが見えたけど、そのサイズが完全に違うものだった。デカイ。とにかくデカイ。全長1mは確実にある。



「え、あれ、兎って括っていいんですか?」

「え?兎ってあのサイズだろう?」



キョトンとした村長さんに逆に聞かれた‥。

そうだった‥。ここは違う世界だった。

デカイ魔物だし、そもそも額の上にはちょっと突き出た角がついている‥。うん、無理だ。あれは飼えない。あっさりと私は兎を飼う夢を手放した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ