表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/164

番犬、好きな人。


晴れていたとはいえ、雪も降っているような場所での雨。

神様、私は晴れて欲しいと願って歌ったのに、雨とはどういう見解??


雪の残る場所での豪雨でずぶ濡れの私達は、寒くてガチガチと歯を鳴らしそうになる。ラトさんが冷えないようにと、抱きかかえるように後ろからピタッと体を寄せたけど‥、あ、あの、それはかえって心臓に悪いな??



「ラトさん、そんなにくっつかなくても大丈夫‥」

「だが顔が赤い!熱が出たかもしれない」

「そんな速攻で風邪を引くほどヤワじゃないですよ」



主にラトさんに抱きかかえられているこのスタイルが原因だからね?

でも確かに恥ずかしくて顔が赤くなったけど、それは根本的に温まったとは言えないな。すぐに山を降りて、自警団の人達と別れて宿に戻ると、びしょびしょの私達に宿の人もメルフィラさん達も驚いた顔をしていたけれど、



一番驚いたのは私である。

なにせラトさんが慌てて私を抱きかかえて部屋へ戻るんだもん‥。



「ら、ラトさん!!降りて歩くから!」

「ワウ!」

「あ、そうだった!今両手塞がってた!!ま、マキアさん説得を‥」

「大丈夫ですよ、ヴェラート鍛えてますし!」

「違う!!そうじゃない!!」

「いいじゃん、スズ〜。楽チンで」

「ニーナさん、その顔に思いっきり「面白い」って書いてありますよ?」



マキアさんは見当違いな発言をするし、ニーナさんは面白がってるし、うう、誰か助けてくれ!!!ラトさんは私の部屋へ急いで飛び込むと、浴室までご丁寧に連れて行ってからゆっくりと下ろしてくれた。


「あ、ありがとうございます‥」

「ワウ」

「ラトさんもお風呂に入って温まって下さいね」


そう言ってラトさんを見上げると、嬉しそうに微笑んで私の頬をそっと撫でる。

ちょ、ちょっとそういうの勘違いするからやめてくれ!


ラトさんは小さく笑ってから、自分の部屋へ戻っていったけれど‥、私としてはずっとピッタリくっ付いていたラトさんが急にいなくなって寂しい‥って、おいおい自分の気持ちに蓋、蓋、蓋ぁあああ!!!本当に気をつけないとダメだなこれ!慌てて首を横に振って、私も着替えを持ってお風呂に入った。



「はぁ‥」



大きな浴室にはすぐに入れるようにと、お湯が張ってあったので助かった。

ほかほかと温まって、ポスッとベッドに寝転ぶとすっかり体の力が抜けてしまった‥。考えてみれば半日掛けてペペルに来て、その足で山の中腹まで移動して、調査しに行ったんだもんな。そりゃ疲れるか。



「って、ラトさんは大丈夫かな?」



ガバッと体を起こして、持ってきたカバンからお菓子をいくつか取り出す。

今回も色々迷惑掛けてしまったし、寝る前にでも食べてって渡してこよう。そう思って、体を起こして自分の部屋からラトさんの部屋に通じるドアをノックする。けれど、返事はなくて‥。


「どこか仕事に行ったのかな?」


廊下へ続くドアを開けると、廊下の角でペペルの歌の乙女達が団子のように固まっている。‥えーと、なにしてるのかな?そっと足音を消して近付くと、メルフィラさんが私に気付いて口元に指を当てて、ジロッと睨む。



「静かに!」



え、ええっと?

でも何をしているかくらいは教えて欲しいかなぁ〜?

私もこそっと真似をして乙女達のように廊下の角からそっと顔を出すと、マキアさんとラトさんが何やらボソボソと話している。


あ、なるほど?ラトさんを見てた感じ?ちらっと乙女達を見ると、手にはタオルやらお菓子やら、お茶らしき物を持っていて、私と目が合うとさっと逸らされた。‥お、乙女、いじらしいなぁ!!!


と、マキアさんが不意に声を荒げた。



「だから、一度王都へ行って調べてもらおうって!」



王都?調べる??

と、メルフィラさん達がざっと一斉に私を見て、目が「どういう事?」と聞くので慌てて首を横に振った。


私、何も知らない。

でも多分調べるって、呪いのことかな?

確かにマキアさんはずっとラトさんのこと心配してたしな。マキアさんの必死の説得にラトさんが静かに首を横に振ると、マキアさんは、ハーッとため息をついて、



「そりゃ、好きな人に心配かけたくないのわかるけど、待っててくれるだろ?」



え。

好きな人?



ガンと鈍器で頭を叩かれたようなショックを受けて、呆然とした。



好きな人がいたの?

ラトさんに好きな人‥。



瞬間、笑顔のラトさん、困ったように微笑むラトさん、真剣な表情のラトさん、

そして、星拾いの時「甘えたい」と言っておでこにキスしたラトさんを思い出した。



あの時、どこか少しだけ淡い期待をしていた自分がグチャッと潰れて、

捻じ切れるような胸の痛みに胸を押さえた。



と、マキアさんの発言に一斉にペペルの乙女達が私を見て「「誰!??」」って小声で聞いたけど、それこそ知りません!私だって聞きたいくらいだ!!!!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ