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乙女、歌います!!


私、スズ・ツキルはポンコツであった。


言っておくが見た目はそんなに悪くないと思う。

長い薄茶の髪も、深い森を思わせる緑の瞳も、まぁ顔もそれなりだと思う。身長だけはちょっと小さいのがネックだけど、そこはまぁご愛嬌だ。



ただ私は「前世の記憶」を持っていた為に、神殿に早々に親に売られた。

なにせ子沢山で貧乏!ちょっとでも不思議な力や前世持ちなんかを集めている神殿にサッサと売った方がどちらも良いのだ。なんでかって?



その神殿で私は「歌の乙女」として、歌のレッスンをするからだ。



レッスン?って思うよね。

そう、要するに歌うのだ。なんでかっていうと、この国で信じている歌の神様が選んだ「乙女」に力を与えたと言われているからだ。



選ばれた「乙女」は歌を歌う事で、奇跡を一つ起こせるのだそうだ。それを聞いた時は「はぁ〜!異世界!」と思わず叫んだ。隣にいた子も前世の記憶持ちだったんで、同時に叫んだ。教えてくれた神官長はいつもの事‥とばかりに説明を続けてくれた。



神様曰く、その力でこの国を守ってね!って話らしい。大変ざっくばらんな説明だけどとても分かりやすかった。ちなみに私はそれを聞いて大変張り切った。なんせ前世ではカラオケで高得点を叩きだしてたからね!



しかし、奇跡は起きなかった。



難解な音楽理論を学び、発声練習に筋トレ、毎日の楽器練習と、それこそ血が滲むような練習をしたが、まず今世の私は絶望的に音痴だった。先生がいくら教えても音程を外し、悲壮な顔で先生が私を見つめる時間はいっそ殺してくれとさえ思った。


それでも頑張った。

頑張って、ようやく音程を外さず歌えるようになり、神官長に奇跡を見せる試験があった時、周囲の乙女仲間に励まされ、一生懸命歌った。



奇跡はようやく起きた。



神官長のお茶に茶柱が立った。

大変ささやか過ぎて、しばらくいつもは柔和で笑みを崩さない神官長が固まっていたのは記憶に新しい。



とにかく5歳で売られ、そこから15年。

私は歌っても奇跡は本当にしょぼく、それはもう「ポンコツ」と言っても差し支えない身分であった。‥でも、そんな私のようなポンコツでも神殿は暖かく優しい‥はずだった。



「この都市の外れに小さな村があるんだけど、そこの神殿の管理をお願いしたいと思います」



柔らかい日差しが差し込む神官長の部屋で、私は「左遷」宣言を受けた。なるほど、いきなりポイ捨てせず、神殿の管理を任せてくれるなんてある意味優しい。‥私はあえて前向きに捉えた。でなければ、ショックでまた音程の外れた歌で歌い出しそうだったからだ‥。



「‥わかりました。長い間お世話になりました」

「あ、神殿の横に小さな家があるからそこに住めるからね」

「‥ん?家??神殿に住むんじゃないんですか?」

「うん、まぁ行ってみたらわかるよ!」



白い長い髭を生やした神官長が穏やかに笑って話すけど、これ以上はおしまい!とばかりの笑顔に私は口を閉じた。この人のこの笑顔。もう何も語ってくれないの‥流石にもう知ってる。


かくして、数枚の服と雑貨を風呂敷に包んで、乙女仲間に見送られ神殿を後にした。



そうして紹介された村の村長さんに案内された神殿に愕然とした。



この国の歌の神様の像が祠に入ってる。

わ〜〜、神殿と同じ女神の姿の歌の神様だ〜って、ちゃう!!これ神殿じゃなくて、祠!!小さなお地蔵さんに屋根のついた奴あるでしょ?あれだよ!あれ!!



その隣に申し訳程度の小さな家が立っていて、私は虚空を見つめた‥。まだ花も実もある若い乙女が風が吹けば吹っ飛ぶのが確実ぅ!な家に一人‥。最近の事件といえば、飼っている牛が柵から逃げ出した‥ってくらい平和な村だけど、流石に私は夜に一人は怖かった。


神殿だったら、守護騎士がいてくれたけど、今の私は丸腰だ。

なんだかんだで村で過ごすこと1ヶ月‥私は決意した。村の小さな情報が載せてある掲示板に私は一枚張り紙を貼った。



『番犬募集!強そうなのお願いします!!歌の乙女 スズ』



と、貼った。

犬でもいれば一人の生活も寂しくない。なおかつ夜の物音にビビらずに眠れるはず!まぁ、今の所睡眠不足にはないってないけど、これでなんとかなるかな〜と思って、1週間後。



「こちらで番犬を募集していると聞いて‥」



と、一人の騎士が訪ねてきた。

茶色のふわふわの毛先をした男性が畑仕事をしている私を見て、心細そうに尋ねる。



「あ、はい!ワンちゃんはどこに?」



ワンちゃん!もう来た!?

ワクワクした顔で男性の方へ向かうと、後ろにもう一人男性が立っている。



濃い茶色の髪がちょっと緩くカールしていて、襟足が少し長い。

茶色のまつ毛に縁取られた青灰色の瞳は、どこまでも綺麗で、鼻筋もすっと通ってるし、唇も綺麗な形をしている。つまりなんていうか、えらい美形だ。美丈夫だ。イケメンだ。



そのどえらい美形を茶色の髪をした人が指差して、



「‥こいつなんだけど」

「は?」



私がぽかんと口を開けた時、えらい美形は一言、



「ワン」



と、言った。

ん?どういうこと??




さー、これからものすごく忙しくなるんだけど新作始めちゃった!

今回は途中、お休みしつつも書き上げていく予定です。

ワンコが飼いたい!!撫でくりまわしたい!!できれば美形がいい!!

私の欲望はいつだって小説に突っ込まれています。どうぞお楽しみ頂ければ幸いです!!

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