パジャマは普通でお願いします
「お嬢おはようございます」
「わっ!」
目をショボショボさせながら目を覚ますと、ソファーに座っている榊さんから声をかけられ驚いてしまう。どうやら昨日早々に寝てしまった私が起きるまで待っててくれたようだ。申し訳ない。
「まだ眠そうですねぇ。とりあえずお嬢の荷物はキャリーケースに入ってます。もし足りないのがあったら言って下さい、買いに走ります……ってどうしました?」
「なんか榊さん昨日と雰囲気と話し方が違いますね」
「ですねぇ。昨日はお嬢が本当に記憶が無いか試していたのであんな感じにしましたけど、本当はこんなですよ」
そう言う榊さんは昨日の影が薄いオドオドしだ感じが全くない、飄々としたお兄さんになっている。
まあ、性格が違うっぽいから疑うのは仕方ないよね。でももうこの性格でいくから慣れてちょ。
キャリーケースをベッドの上に置いてもらい開けてみると入院に必要な物と……パジャマ……だよね?
「あの〜榊さん?これはパジャマ…でしょうか?」
「あー、姐さんが『パジャマト言ったらこれよね♪』って詰めてました」
「ムリムリムリムリ!!え?19歳だよね⁉ウソでしょ、そんなの着て寝たらお腹冷やしちゃうよ!透けてて何も隠せて無いし!姐さんってママさんの事?ママさん何考えてるの⁉怖っ、私病院の服でいいです!」
「せっかく姐さんが用意したのに…」
「じゃあ榊さんが着てくださいよ!私は無理!」
「んな無茶な……でもその無茶振りキますね」
「ひぇぇぇ」
布団を被り顔だけ出し震えているとクスクスと笑い声が聞こえる。
「あー、やっぱり今までのお嬢と違うなぁ」
「……前の美夜が良かったですか?」
恐る恐る聞いてみると榊さんは少し考えた素振りを見せ
「んー、みんなは今の方が良いって言うんじゃないかな?私は前の黒いお嬢も好きですがねぇ」
そりゃもう後ろから刺されそうな事ばかりしてましたよ、と楽しそうに榊さんは言うけど楽しくないからね!え?私退院したら速攻刺されちゃう?また死んじゃう?ガクブルなんですけど⁉
「大丈夫ですよ、何か無いようにするのが私の役目ですからねぇ。お任せ下さい」
胸に手を当てお辞儀をする榊さんの目の奥がどろりとしてるのが怖いっ!前の美夜の性格が悪いだけだと思ってたけど、これ環境もなかり悪いんじゃない⁉