19年間の美夜
付き人の榊さんの反応に自分がしたのではないが申し訳ない気持ちが湧き上がると同時に、今まで私の体で好き勝手してくれた性悪魂に心の中で舌打ちをし、適当かましてくれた神様にはタンスの角に足の小指をぶつけるよう念を送っておく。
「なんかすみません、私記憶が無いから榊さんにした事分からないですが謝らせて下さい。ごめんなさい」
「いえ!あの…その……」
ホント申し訳なくてペコリと頭を下げると榊さんが慌てたように手を前に突き出し頭と一緒に振っている。
「それでですね、今まで私がどういう人間だったか榊さんの目から見てどうだったか知りたいんです。教えてもらえませんか?」
「えっ?」
「どんな感じだったか…ちょっと……いや、だいぶ不安ですけど聞きたいんです。嘘偽りなく!」
手を組んで懇願するように見つめると榊さんの揺れる瞳が見える。うん、これは酷そうだ。覚悟して聞いた方がいいかも。
「あ…でも……」
「お願いします!!」
口ごもる榊さんに押して押してのお願いをしてやっと聞いた19年間は酷かった。どうやら感情の起伏が激しかったようで昨日言ってた事が次の日には違っていたり、嘘は息をするようにつく、上からものを言い、気にくわないと人の手を使って自分は笑いながら見てるだけ。特に婚約者の玲王さんには酷く、無理矢理婚約し付き合っていた彼女と別れさせ(ぼかして言われたから不明だけど手酷く何かしたのだろう)たり癇癪を起こして罵ったりしていたらしい。途中耐えきれなくてベッドに私が突っ伏したので、話しを止めようとしたけど話すように促し聞いた。
多分これが全てではないだろうけど……酷い。酷いがすぎる。そりゃあ玲王さんもゴミムシを見るような目を向けるよね。やっぱり次死んだ時神様に文句を言わないと。
「美夜ちゃんどうしたの⁉」
榊さんから話しを聞いて虫の息になっていたら、医師から現状を聞いて戻ってきたパパさんが慌てて駆け寄ってくる。ヘロヘロになりながら大丈夫、ちょっと疲れただけだからと言うと安心したようだった。
「大丈夫ならいいけど…事故に遭って記憶を失くしてるんだから無理はしないんだよ。これで僕たちは帰るけど後で榊に入院に必要な物を持って来させるからね。また明日来るよ」
「……はい、お気をつけて」
パパさんが少し驚いた顔をしたけど何も言わず今度こそ全員部屋から居なくなった。
ああああぁ、思った以上に19年間の美夜は性格が悪かった。これは関係を改善するのは大変そうだ。さて、どうしたものか。
うーん、とベッドに横になりながら悩んでいたが思ってたより疲れていたのかそれとも前世のお休み3秒の体質なのか速攻寝てしまう自分を悩んでたのに何寝てんの!という突っ込みをしたのは次の日の朝だった。