私の名前は?
"お名前分かりますか〜?"
はい、分かりません!!( ー`дー´)キリッ
だって聞いてないもん。
この体の名前が出て来ずあうあう言う私に医師が緊張をはらんだ顔になり看護師に指示を出し、バタバタとストレッチャーに私を乗せMRIや脳波検査を一通りやりだした。
でも神様も一応気を使っていた(と願う)ハズだから打ち所は悪くないだろうし、そこは大丈夫だと思うんだけど……問題は体より心の中だ。
意識は私、さっきまで神様や案内人と一緒にいた。凄い適当に体に意識を入れられた。うん、会話もしっかり覚えてる。神様が言ってたように知識以外前の名前や家族、友人、出来事全て思い出せない。そこまでは想定内だ。
しかし!しかしだよ⁉まさかこの体の記憶が全て無いとか聞いて無いんですけど⁉
確かに「あの女性の記憶残してますよね〜?」って聞かなかったよ⁉でも全て無いとは思わないじゃない?え?これ、聞かなかった私が悪いの?せめて名前だけでも置いて(?)ってほしかったわー。神様使えないな。
病室へ戻り遠い目をした私に医師が何かを説明しているが、心の中で神様に悪態をつくのに忙しく耳に入ってこない。
そうしているうちに廊下が騒がしくなり、段々と騒々しさが近づいてくる。
「ちょっと、玲王早く!美夜の一大事なのよ!」
「姐さん大丈夫ですよ。……残念ながら」
「美夜た〜ん今パパが行くからね〜」
バーーーンと病室の扉が勢いよく開く。どうやら廊下が騒がしかったのはこの体の関係者だったらしい。迷惑な。
扉から現れたのはナイスミドルと迫力がある美人が心配そうに立っており、その後ろには顔に『面倒です』と書いてあるワイルドイケメンがいる。
「美夜たん大丈夫⁉」
ベッドにダイブするかのように勢いよく来た顔面偏差値が高い人達に私が言える事は一つ。
「あの……どちら様ですか?」
「「「えっ!?」」」
あっ、皆んな呆気にとられてる。そりゃそうだよね、事故った人間が開口一番「どちら様ですか?」だもんね。ベッドにダイブした人だけじゃなく後ろでゴミムシを見るような目で睨んでた人まで驚いてるし。でも今の私にとっては「初めまして」なんだよね。
「美夜パパだよ!忘れちゃったの⁉」
この人パパなんだ。という事はお隣りの美人はママ?で、後ろでメンチを切ってる方はどなたかしら?ちょっと怖いんですけど。
「あのー、お父様、お母様ちょっとよろしいですか?」
取り乱しかけてるナイスミドルになんとか話かけた医師は私の今の状態を話し始めた。
医師曰く私は健忘症、つまり記憶喪失だという事。事故で頭部は打ってないもののショックで記憶を失くしているのだろうと。すぐ思い出すかもしれないし一生そのままかもしれない。これに関しては何とも言えないだとさ。
………うん、記憶は一生戻らないから。
だって神様が前の記憶ごと魂を握り潰しちゃったし、私の前の記憶もないから。もう赤ちゃんと一緒だね。まあ知識はあるからまだマシなのかも。バブー
「そんな……」
「大丈夫、記憶を失くしても僕たちの子には変わりないよ」
「あなた……」
瞳を潤ませ見つめ合う二人を絵になるなーとぼーっと見ていたら後ろのワイルドイケメンが胡散臭そうな目で私を見ている。ホントニワタシキオクアリマセンヨー
「美夜、お前の名前は木崎美夜。僕たちの子供だよ」
「美夜……」
はい、やっと名前が分かりましたー\(^o^)/