強制二人きり
久しぶりの投稿になってしまってすみません。
気まずい……今とてつもなくコワ気まずい。
長い足と腕を組み、無言の玲王さん。圧迫面接を受ける就活生の気持ちがよくわかりすぎます。SAN値がゴリゴリと削られているのは気のせいではない。玲王さんクトゥルフに名を連ねる方だったかしら?
「あの……先日はご迷惑をおかけしてすみませんでした」
はーう、自分から失態を言うのは恥ずかしいけどお礼はきちんと言わないとね。
「…………」
「………」
「…………」
「………」
いーやー!助けてアン○ンマン!!
ちらりと榊さんの方を縋るように見ると和真の首根っこを掴み「ごゆっくり」と行ってしまった。
オワタ………強制孤立無援フィーバー入ったよ。好感度底辺なのに二人きりにしないでほしい。
無常にもパタリと後のドアが閉まる音が聞こえる。恐る恐る玲王さんを見ると持ってきた鞄をごそごそとしている。
「ほら」
「?」
テーブルに広げられたのは会場の地図と進行表。それと履歴書のような束。
「これが当日の会場だ。その日は迎えに行けないから現地集合。入口から会場までのルートを覚えておけ」
地図を見ると定規を使ったのか手書きで丁寧にルートが引かれている。ふんふん、これくらいならすぐ覚えられそう。それより視界の端に見える履歴書のような束が気になるんだけど。
「そしてこっちは当日挨拶に来るであろう人物だ。顔と名前だけでもいいから頭に入れてろ」
「はあああぁ⁉」
無理!無理です玲王さん!この厚みの中に何十人いらっしゃるんですか⁉人の顔を覚えるの苦手なんですけど⁉
「無理ィ。人の顔覚えるの苦手です」
「いいや、覚えろ」
ふるふると青ざめ首を振る私の頭をガッシリと掴み有無を言わせない眼力で強制的に頷かされたよ。
仕方ないのでトイレの壁に貼り、入る度に目につくようにして覚えようとペタペタ貼っていたら、時たまトイレから悲鳴が聞こえるようになり怖いし見られてる気がして落ち着かないと泣きつかれてしまい、結局普通に覚えることにしたよ。ちぇっ、結構良い案だと思ったんだけどなぁ。
しかも誰か(多分榊さん)が告げ口したみたいで玲王さんから「ふざけないで覚えろ」とお叱りの電話をもらったよ。
いや、本気だったんですけど?




