うっかり神様は意外と手厳しい
「と☆言う事でそなたの魂を生まれ変わらせちゃった肉体にポイッとINしたいと思いまーす☆」
「はっ……はあああああぁ⁉」
何言っちゃってんのこの神様⁉こら、案内人も脇でヤンヤしてるんじゃないっ!私精神的にハチゴフン……だし、今その肉体に入ってるヒトの魂はどーすんの⁉
「ちょっ、ちょっと待ったぁぁぁ!!」
「なんじゃ?」
「私死んだ年齢が高いから19歳の体に入ったら言動とか違和感ありすぎじゃないですか?それに今体に入ってるヒトはどうなるんです?」
「それは問題ない。現世にいる肉体は健康だが環境が少々特殊でな。それに適当に入れた魂の根が性悪すぎて前世の知識を持ってた方が生きやすいだろう。これはサービスだ。あ、でも人間関係や年齢の記憶は消すがの。適当に入れた魂は元は消滅する魂、握り潰す」
盛り上がっている二人に待ったをかけながら質問すると、少しムッとしながら横柄にとんでもない事を言い放った。
なん……だ…と…?特殊?性悪すぎ?のんびりのほほんと生きた私にそれは厳しいのでは⁉そして握り潰すって怖っ!
「……サービスはそれだけですか?なんか…こう、チートな能力とか……」
「知識を持って生まれ変わるのは結構チートだと思うがの。そんなに心配ならたまに案内人を送ってやろう。助けるかは本人に任せるがの」
「えー微妙……」
恭しく礼をする案内人を半目で見つめたのは仕方ないと思う。
「まあ、ここでごちゃごちゃ言っていても仕方あるまい。そーれ」
面倒になったのか神様が目の前の空間に水鏡を出す。
そこに映るのは女性の後ろ姿。どうやら交差点で信号待ちをしているようだ。そして女性の前に車が来た瞬間、「えいっ」と神様が指を弾く仕草をすると水鏡に映っていた女性が押されたように車の前に飛び出し跳ねられる。
「ぎゃーーー!!」
「落ち着け。お前が入る肉体に強い衝撃を与えただけだ」
いや、衝撃って。強すぎるでしょ!てか、これから入る体に何してくれとんじゃ!
「魂を抜くにはこれくらいの衝撃が必要なのだ。よっ……やっぱり汚れておるな。うーん、さすがに適当に入れすぎたかな」
神様の手に乗っている光の玉は鈍くくすんでいる。どうやらそれが代わりに入っていた魂らしく、あっさりと握り潰し消滅してしまった。
それを目の当たりにしビビる私。適当な感じでもやっぱり神様だった。いとも簡単に魂を消滅させてしまったよ。
「そんなに怯えるでない。ほれ、入ってしまえ☆」
「イヤぁぁぁ!雑すぎるぅぅっ!!」
適当な感じで光の玉にした私を軽く水鏡へ投げると、吸い込まれるように倒れている体に入り意識が浸透していく。もっと特別な形で入りたかったなぁと考えているうちに意識が黒く塗り潰されていく。
そして気がついた時、目の前に広がっていたのは白い天井。
「あ………」
本当にあの体に入ったようだ。体中痛いし動かない。いやー、マジ適当すぎない?しれっと車に追突させるとかあの神様無茶しよる。次死んだ時に文句を言ってやろう。
心の中でブツブツ言っていたら看護師さんに話しかけられてた。どう返事していいか悩んでいると医師らしき人が私の意識を確認している。
適当に返事を返していたら次の質問に思考が止まる。
「お名前分かりますか〜?」
名前………私の名前何⁉