デンジャラス榊さん
気持ち悪つ、タバコ臭っ!逃げようにも右に避ければ右、左に行けば左とこの2人組は私を通す気はないみたい。
困ったなー、とへにょりと眉尻を下げると困った顔も可愛いね〜と下卑た笑いが返ってくる始末。
「あのっ」
「なーに?遊びに行く気になった?」
「いえ、家に帰りたいので退いてください」
「やーだよ」
笑いながらジリジリと近づいてくるのを同じ距離を保ち後ろに下がる。助けを求めようにも周りには人はいないしこっそり屋敷を出てきたから榊さんに助けてコールをするのも気が引ける。説教・監禁されるのが決定しちゃう。これは絶対自分で切り抜けないと!
イチかバチかで素早く横をすり抜けようとしたら案の定手首を握られて捕まりました(泣)
「逃げちゃだめだよ〜」
ぎゃー、掴まれてる手首がベタベタするっ!手汗?手汗なの⁉鳥肌立つくらい気持ち悪いんですけど!
ひぇぇぇと真っ青になって固まっていると後ろの方でガコッと音がする。もう一度ガコッと音がしたので恐る恐る後ろを振り返ると鼻血を出し頬を腫らした2人のうちの1人が榊さんに首根っこを掴まれて引きずられていた。
「ひょっ!!」
おかしな声が出たのは仕方ないと思う。ボロになってる人よりも榊さんの笑顔が怖い。
「お嬢から手を離せ」
笑顔なのに有無を言わせない声に震えながら手首を離した瞬間、榊さんの拳が男の顔面にクリーンヒット。私、超至近距離で見ちゃったんですけど!
「チッ、汚ねぇ」
いつも使わない言葉にこっちが素の榊さんかと慄いてしまう。
「大丈夫ですかお嬢。…ああ、震えてますね怖かったでしょう。さあ帰りましょう」
震えているのは榊さんのせいですけど⁉殴られ気絶してる人に追い打ちで蹴りを入れないであげて!
後から来た屋敷の人達が2人組をつまみ上げて引きずって行くのを放心状態で見ていたら、歩けなくなったのだと勘違いされ榊さんに抱き上げられてしまった。
「ちょっ、大丈夫ぅ……」
「お嬢、屋敷に帰ったら説教ですよ」
声に重ねて言われた言葉に私は赤べこの如く頭を縦に振り、小一時間説教をされ予想通り当分外出禁止、監禁決定となりましたとさ。
そして私は心に決める。
けして榊さんを怒らせないと!




