書類を届けるよ
火曜日投稿が出来なかったので1日遅れですがUPします。
いつもより長めです。
デパートの外商で服を買った次の日、今度そこファストファッションの店へ行こうと準備をして玄関へ行くと榊さんが水色の封筒をひらひらさせて待っていた。どうやら昨日玲王さんが忘れたらしく、すぐ必要だからと店に行く前に届けるらしい。玲王さん意外にうっかりさんだね。
「と、いうわけでお嬢が届けてください」
「ふぁっ⁉」
え?何故社屋に着いたタイミングで言うの?榊さんが頼まれたんでしょ?行ってくればいいんじゃない?私喜んで車で待ってるよ。
「運転手の私が行ったら駐禁切られるかもしれませんし」
「だったら駐車場に停めたら…」
「お願いしますね」
「………はい」
榊さんの顔圧に負け仕方なく車から降り、とぼとぼと正面玄関から入る。吹き抜けになっている広いエントランスにはローテーブルに向かい合わせで置いてあるソファーが何組かあり、そこで話している人達や営業なのかビジネスバッグを持ち出入りする人がチラホラいる。みんなスーツなのでレース状の首元まで被う長袖にビスチェを合わせ、スキニーにピンヒールという格好の私は悲しいくらい浮いている。
私は用事があってここに来ているんですよーホントですよーというオーラを出しているつもりでカツカツと受付へ歩み寄るが受付嬢に不審がられているのは丸わかりだ。というか目線があからさますぎてツラい。
「すみません、常務の周さんを呼んでほしいのですが」
「……常務ですか?どういったご用件でしょうか」
おおっと、眉間に皺を寄せてもっと不審者を見る目になったよ。そりゃいきなりラフな格好の小娘がふらりと来て常務呼べだもんね、怪しいよね。
「えっと、れお…周さんの……その…忘れ物を届けに来ま…した。……本人に連絡は多分…行ってると思うのですが……」
キョドって最後声が小さくなったのは許してほしい。玲王さんの名前言った途端、眼光が鋭くなるんだもん。怖い。
「……お名前を伺っても宜しいでしょうか」
「木崎です」
「はあ?木崎ぃ?あんた、あのゴスロリ娘の姉妹?」
いえ、ゴスロリは事故前の本人です。
「あいつしょっちゅう周さんを呼びつけて騒いで大変なんだから!婚約者だか何だか知らないけど周さんも迷惑してるのよ!さっさと婚約解消しろって姉?妹?のあんたから言ってよね!」
ひえ〜、こんなトコでも被害を撒き散らしているとは。歩く公害じゃん。私はやってないけどこの体で性悪魂がやってるから怒りをぶつけられるのは仕方ない。
「あんの性悪……人の体で好き放題か」
しかし美夜なんだけど受付嬢は気づいてないみたい。そんなにゴスロリと今では見た目が違うのかな?ゴスロリで認識してる?
「そこ、何騒いでいるんだ?………お嬢?」
「あっ常務ぅ~お客様が来られたので今お呼びしようと思ってたんですよぉ」
切り換え早っ!そしてぶりぶりだぁ。まあ玲王さんは見た目ワイルドイケメンだもんね。しかも会社だからかスリーピースのスーツを着こなしてほのかな爽やかさまで出てるし、女子社員はキャーキャー言うよね。
「ここで何をしてるんですか?榊は?」
「あー、えっと、榊さんに頼まれて封筒を持って来ました。……中身を確認してください」
会社仕様なのかいつもの険はなく、何か言いたげな微妙な表情をして封筒を受け取り中身を確認する。
うーん。今まで会社にも迷惑かけてたみたいだし私が届けにきたのはマズかったかな?
「……ああ間違いない」
よし、これでミッションクリア!玲王さんの機嫌が悪くなる前に退散だ。
「お嬢、その格好……」
「?変……ですか?」
「いや……いつもの格好じゃないので」
「いつもの?…ゴスロリ?ああ、あれ私の趣味じゃないし。似合わないですか?」
「趣味じゃない?」
「へっ?あー、うん、まあ、………えへっ」
あっ、玲王さんぽかんとしてるっ。笑ってごまかそてみたけど違ったかー。ごまかすの下手くそか私。
「そっ…それじゃあ榊さんが待ってるので」
片手を上げそそくさと小走りでエントランスを抜け自動ドアを軽快に出………れませんでした。
自動ドアの溝にまさかのピンヒールがハマり勢いよく前に倒れてしまった私。ビターン!だよ?ビターン。現実でそんな音が出ると誰が思う?そんな音が出るのを身をもって知るとは……まばらだけど人がいるトコでギャグのように転ぶなんて恥ずか死ねる。
あまりの恥ずかしさにぷるぷる震えていたら玲王さんが駆け寄って来てくれて抱えて車まで運んでくれた。私を嫌っているなら放っておいていいのに助けてくれてホント申し訳ない。
失礼だけど顔を手で覆ってお礼を言ったのは羞恥のあまり真っ赤になっているからです。




