やっと退院です
あれからイケメン弟の和真は学校が終わると病室へ来て、過度のスキンシップをして榊さんにチョップをくらっている。パパさんやママさんも時間がある時に来てくれて「記憶が戻らなくても大丈夫」と言ってくれる。私のせいではないけど戻らない罪悪感はある。でも大丈夫って言ってくれるしなんとかなるかなって思ってる。
「なぁ、アイツ来てんの?」
榊さんが剥いてくれたリンゴをシャクシャク食べながら和真が聞いてくる。ダルそうにリンゴを食べるのも様になるイケメン。
「アイツ、とは?」
「玲王だよ、玲王!」
あぁ、あのメッチャ睨んでた人!
「来てないけど?」
「一度も?」
「最初に来てから来てないよ」
「はあ⁉ありえねー、アイツ姉ちゃんの婚約者じゃん!来ないなんてないわーマジないわー」
「いやー、来た時凄い睨んでたよ?あの人美夜嫌いでしょ。婚約者でも嫌われてるのに来てもらっても困るし」
眉根を寄せて苦笑いをすると和真が口を開けぽかんとし「マジ記憶無いのな」と複雑そうな顔をする。いや、実際来られてもこっちは初めましてだからホント困るのよー。
「俺は記憶がないままがいいな。前はアイツに執着してたし、こんな事出来なかったから。はい、あーん」
「あーん……シャリシャリ」
私にリンゴを食べさせご満悦な和真に、この距離感は姉弟では無い気がするとは言えずなすがままにしている。言うと面倒くさい事になりそうだしね。
それに今日は退院日!1週間特に何もなかったから退院できるのだ!ヤッタネ。
服も持って来てもらっ……もらった……はて?
「なんじゃこりゃあ!!」
「?姉ちゃんの私服だけど?」
「いや、でも、なんか、うえっ」
「はいはーい、時間もないので脱衣所で着替えてください」
紙袋の中を見てあうあう言う私の背中を押し脱衣所に追いやられ、仕方無しにソレに着替える。フリフリの黒いワンピースにニーハイソックス、小さい帽子がついたカチューシャに黒いエナメル質のショートブーツ。
………ゴスロリっ娘爆誕です。
似合う、似合うけども!私の趣味ではない!
ヨロリと脱衣所から出ると二人ともなんとも思っていないようで後について病室を出る。案の定、病院を出るまでの視線が痛い。痛すぎる。そりゃ病院にこの格好は違和感ですよね、すみません。看護師さんが驚きのあまりバット落としてたけど大丈夫かな?




