イケメンだけどヤバかった
イケメン弟現る。
………いやあ、イケメンって現実に生息してたんですね。すらっとした学ランを着た茶髪の今どきのイケメン。尊い。
そんな弟くんは勢いよく開けた扉からかけ足でベッドまで来て、私の両肩を掴み盛大に叫んだ。
「何で事故ってんだよぉぉぉ!事故んなら俺の前で事故れよぉ!」
ん?何かおかしな言葉が耳に届いたのですが?空耳?
「目の前で事故ったら俺が助けられたのにぃぃぃ!!」
空耳じゃなかった!つーか、事故る前提かいっ!普通事故りたくないからね⁉
「しかも記憶が無いんだって⁉」
「う……うん」
「マジで⁉俺の事一つも思い出せないの⁉ショックなんですけど⁉」
「ご、ごめんね?」
イケメンは悲しそうな顔も様になるのね。罪悪感パないわぁ。
「……という事は俺たち姉弟ってのも知らない?じゃあ今なら他人で付き合ってましたとか有り……有りなの…か…?」
がっつり聞こえてますが?有りじゃないからね?しっかり姉ちゃん言ってましたよ!罪悪感持って損したー。
「………よし、いける!…あ痛っ!」
「和真坊ちゃん妄想を口に出し過ぎです」
凄い事口走っているのをチョップで止めた榊さんを軽く睨む弟くん。何その表情、カワユス。
「お嬢は記憶が無いんです。急に入って来た不審者におかしな妄想垂れ流されたらたまったもんじゃないですよ。まずは自己紹介からしてください」
「…木崎和真17歳、高校2年生。趣味は姉、好みも姉のイケメンだ!」
「自分でイケメンって言っちゃうんだぁ」
「お嬢、突っ込む所はそこではありませんよ」
おん?違った?
「じゃあピチピチ17歳!」
「それも違いますねぇ。それにお嬢もピチピチですよ」
「えへへ」
「……やっぱり今までのお嬢とは違いますねぇ」
ドキッ!
「やっぱり前の方がいい……」
「いえ、今の思考の方が面白…いいと思いますよ」
今面白いって!面白いって言った!たまに酷いね⁉
「俺も今の方がいいなぁ」
「ふえ?」
いつの間にか隣に座り抱きしめ肩に頬をすりすりしているイケメンくんはまた榊さんにチョップをされている。ギャーギャー文句を言っているイケメンくんはどうやら美夜にキツく当たられていたらしい。……よくそれで趣味姉って言えるな。Mなの?
そんなちょっとおかしいイケメン弟くんはお見舞いに来たママさんに回収されて行きました。




