8.『検査結果をルリに伝えた』
とりあえず、複数持ちとかよくわからない結果が出てしまったけれど、ルリには、結果を教えるよう言われていたので文に綴って伝えなければ。複数持ちって存在するものなのだろうか?その点もルリなら知っているような気がしたので、疑問も一緒に綴った。
すると…
コンコン。
「ごめんくださいな。ルリですけど、エナはいらっしゃるかしら。」
「ルリ!いらっしゃい。何かあったの?」
「突然訪問してしまってごめんなさい。失礼だとは思ったのだけど、検査の結果の手紙を送ってくれたでしょ?それを読んだら居ても立っても居られなくてエナに会いに来てしまったわ。」
「私の家は、特に問題ないけど、ルリこそ大丈夫?あの手紙でこうなるのならもう少し後に出した方が良かったかしら?」
と冗談めかしに言った。
「大丈夫じゃないのに来るだなんておかしな話じゃない。もう!からかわないで頂戴。」
ぷくっと頬を膨らませたルリが可愛い。
「ごめん、ごめん。」
「そんなに慌てて、どなたがいらしたの?」
「お母さん、前に話していた文通友達のルリだよ。」
「まあ、貴女が…そう。ようこそおいでくださいました。小さな家ですし、大したお構いもできませんが、どうぞごゆっくりしてください。」
「いえ、エナのお母様、こちらこそ急に押しかけて申し訳ありません。お気遣いありがとうございます。」
そう言ったルリは綺麗にお辞儀をした。
とても優雅で私には真似ができそうにもない。同じようにお辞儀をしても、ルリの半分にも及ばないのではないだろうか。貴族のレベルを知っているはずもないが、やはり、相当上に位置する家なのかもしれない。イメージとして、位が高ければ高いほど人と比べられ、人より優れていないといけなそうだからだ。前世の世界では、決してお金持ちだからと言って教養があるどころか、人として酷く駄目な者が多かった印象があるけれど。およそ納得できない税金の使い方をしていたり、裏であくどいことをやっていたり。そんな記憶。死んでしまった私では前世に干渉することもできないし、関係のないことであるけどさ。もちろん、この世界でもそういう人物はいるだろうけど、ルリと話をしていると、ルリ自身はそんな者になりそうな気配がないので是非そのままの心で育ってくれたらなって勝手に思ったりしてる。
「エナの報告にはとても驚いたわ。あまりに大きな声を出してしまっていたそうで、お母さまとお父様に何かあったの?って心配されたもの。ふふっ。」
「私だってとっても驚いたのよ?魔法適性検査の結果を伝えられた時、大声を出しすぎて、お母さんに鼓膜が破れるところだったって言われたもの。まさか本当にルリの言っていた通り光適性があるだなんてさ。それに、氷適性もあって、複数持ちだなんて…」
「光適性のことをわたくしは認識していたから、やっぱり。としか思わなかったけれど、それよりも、複数持ち且つその複数が上位格の氷であったことに驚いたわ。」
「複数持ちって珍しいの?本で読んでいても複数持ちのことなんてほとんど見かけなかったから。」
「そりゃあ、珍しいわよ。でも、火、水、草の内の2つを持っている人は数年に一度とかの単位で出るから、そこまで在りえないことではないわ。それでも、複数持ちの中に上位格の適性を持っていることは相当問題ね。たまたまわたくしの周りに1人いるけれど、分かったときには大騒ぎになったわ。まさか同じ時代に2人も出るだなんてね。そもそも、マリナント国ができてからの900百年間には上位格と上位格または、それ以上の力を持つと言われている光・闇適性を同時に持っていた人の記録なんてないの。一体どれほど遡ればエナと似たような人がいるのかしらね。」
そんなに大事だったなんて…。平民である私がそんなたいそれた現象に陥っているのは正直言って荷が重い。魔法適性がある方がうれしいけど、ここまでのものは求めてなかったし、せめて光適性だけでも誰かに譲れないかな…。
しかし、この国が900百年間も続いていることもすごいよね。大体歴史を見ていくと、こんなに長く続く国はなくて、途中で腐敗して革命!新しい国の誕生!また腐敗!革命!誕生!の繰り返しだから、900年間もあれば、9回くらいは新しく生まれ変わってそうなのに。
よっぽど王族の政治が良かったんだろうねってルリに言ったら微妙な顔をされた。なんで?