4.『転んだ少女を助けました』
私も、もう7歳。もうそこまで受験がやってきている。もちろん、前世の頃の高校受験や大学受験と違い小さい子が受けるものであるからそこまでたくさんの問題があるわけではない。正直、前世で受験戦争を乗り越えた私にとっては左手で受けても受かるレベルである。
ただ、こちらの世界には魔法という前世にはなかった概念があるのでそこだけが心配。本を借りて読んでみると小さい子向けにはそんなに細かいことを要求するような内容ではなかったから大丈夫だとは思うけど。それに、平民にはまず使えないことであるのがほとんどだ。お母さんも持ってなかったし。平民の魔法適性を無償で見る理由としては、稀に持っている子がいて、その力を悪用されないために把握するためなんだとか。昔、どうも悪用された例があるらしい。別に子供が悪巧みをしたわけでなく、魔法の使えない大人がとある計画を立てたと聞いた。まあ、それで、ほぼほぼ魔法が使えない平民も入学しているわけだから、魔法適性の結果はなんでもいいのだと思う。それなら魔法を勉強する意味とは?と思うが、教養の枠に入っているようなので仕方がない。
それと、そもそもの問題としてお母さんが学費を出してくれるかなんだけど…、姉が入学しているので私も行かせてくれるらしい。本当にありがたい。
お父さん?お父さんは一度も見かけたことがない。一体どこにいるのだろうか。私が生まれたときから見かけていないから、私が生まれる前に離婚したのかもしれないし、亡くなったのかもしれない。離婚ならまだしも、亡くなっているのだとしたら、それを思い出して、お母さんは心を痛めるだろうから聞いていないのだ。
それと、姉が入学したというが、どうしてあのアホを具現化したような姉が?と思ったことでしょう。
やはり、ヒロインだからだろう化
魔法適性が光だったそうですよ。
ゲーム内のヒロインも光適正であったので順当かなとは思うけど、光適性とはもはやお伽噺話レベルなので、この国はえらい騒ぎになったそうです。特にご近所さんは騒いでいたかな。だってあの頭の姉の適性が光なんですもの。不正も疑われたけど、不正をできるほどのコネもなければ、お金もない。できるはずがありませんね。
しかし、ここで不思議な出来事が起こりました。なんと学力テストの点数がマイナス一点だったそうで、何を間違えたかと言うと、足し算は愚か、名前まで間違えたらしい。なんでそうなるの?ツッコミどころ満載とかではない。本当になんで光適正なのかみんな気になっちゃうよね。ヒロインだから何ですけどなんて言えない。
因みに、どのような名前を書いたかというと、『ヒロイン』と書いたんだって。あちゃ~言っちゃってるよ。周りの人はただ名前を間違えた姉を痛々しく見てるんだろうけど。ヒロインってなんだ?ってなってるよ。それに対して姉がなんて答えたのかはさすがに知らない。
我が姉の名前を一応紹介しておくと、ナツキ・サリアナ。
おそらく、ナツキは前世の名ではないかなと思う。乙女ゲームだからね。自分で名前を選択するんだよ。でも、仮の名はあったかな?思い出せないけど。
私も自分の名前でやってたかって?ううん、前世の妹の名前でやっていました。ほら、第三者目線の方が楽しかったからさ。
それで、こんなアホというかバカな姉だけど、何とか入学が許可された。なんてったって、光適正だから、ほおっておくわけにはいかなかったんだろうね。
それで、入ったはいいけど、全寮制だから、姉が問題を起こしていないかがすっごく心配。恐ろしいことに、ある一定のラインが合って、そのラインを超えると家へ強制送還されると説明を受けた。ある一定のラインって何?何を基準にしているのかだけでも教えてほしい。貴族の場合は、権力と金で消せるとか消せないとか。
とにかく、ある一定のラインというものを超えると強制送還されるわけだが、その時にまでならないと姉が問題を起こしているのか起こしていないのか分からずじまいなのだ。むしろある一定のラインより、姉がやらかしていないかを教えてほしい。とはいえ、ゲーム内でのヒロインは公爵家の娘だったのだからなんとでもなるのではなかろうか。多分…。
とか考えながら歩いていたら、
「きゃっ。」
ずささあ。
少女が目の前で転んだ。とりあえず手を出す。
「大丈夫?痛いとこある?」
精神年齢に引っ張られていたけど、私も少女だった。あー、でも、可愛いな。なんて可愛いのだろう。前世の妹を思い出す。
「ごめんなさい。ありがとう。」
そう言いながらニコッと笑った。
きゃー‼本当に可愛い!私の中でペンライトを振っている私がいるわ!はぁ、癒し。姉があんなんだから、家の手伝いとか全部私だし。前世に比べれば、そりゃ全部を自分1人でやらなくていいから全然楽なんだけどさ。それにしたってもう少しお母さんの手伝いをしてくれてもいいと思うのよね。実の子じゃないとしてもさ。肩もみとか、いっつも私じゃん!お母さんには感謝することが多いからそりゃあ、私が率先してやっているだけだけよ?……前世では、何かする前に両親とも亡くなってしまったことも大きいかもしれない。
ああ、ちょっと脱線したかもしれないけど、確かに見えた。膝から血が出ているのが。
「痛そう…すぐにでも治ればいいのに。」
って、思っていたらなんと傷が治ったのだ。目ん玉を落とすのかというくらい私は目を開いていたと思う。
もしかしてこの少女光適性の子なのではないだろうか。光の主な内容として治癒能力が挙げられるからだ。でも、そんな光適性を持っている子の話題なんて姉以降にはない。不思議だ。姉のテストとは全然別の種類の不思議だ。
「…よろしければ、今度、助けていただいたお礼をしたいのですけれど」
「え?私は何もしてないよ?」
というか話し方上品だな。もしやいいところのお嬢さん?服装的には、貴族とまではいかない気がするけど、一応敬語で話しておくか。貴族の話し方なんて知らないし。
「では、また今度…明後日なんてどうでしょう。会ってくださります?」
「はい、それは全然大丈夫です!またここに来れば大丈夫でしょうか?」
「そうですね、では、正午頃に集まってランチタイムなんてどうでしょう?食事はわたくしが持ってきますわ。」
「それは楽しそうですね!お弁当なら、自分の分は自分で持ってこられますよ。」
「いいえ、せめてこれくらいはさせて欲しいの。」
「分かりました。それならお言葉に甘えさせていただきますね。お願いします。」
こうして次に会う約束が決まった。