1.『私の転生先』
私、エナ・サリアナです。
どうやら、死んでしまったみたいで、いわゆる神様のミスのようです。
それはそれは、腰が折れるのでは?というほどの速度で何度も何度も謝られ、他の世界へ蘇らせるから要望ある?と聞かれました。ええ、それはもうあっさりと、あっさりとんこつラーメン並みにあっさりと。先ほどまで平謝りだったのにねえ。
しかし、死んだことを悔やまないと言えば嘘になるが、泣きわめいても仕方がない。死という現象を人間である私がどうすることもできないのだから。
自分で転生先を決めてもワクワク感がないから、神様にお任せすることにした。
それで、「行ってらっしゃーい」と神様に手を振られた。
そして、気が付けば赤ん坊に。最初は話すことができないし、首も満足に動かせない。まさか、赤ん坊からやるだなんて驚いたなあ。そこは、5歳とか、6歳とか、適度な年齢になったら前世の記憶を思い出すというものではないのだろうか。なんだかんだ、赤ん坊を完全な記憶があるときにやるのも楽しいと思ったけど。
それで、今世の母親が今世の自分を背負って外へ出かけたときには景色を見て驚いた。
お城がある。それも見覚えのあるお城だ。前世の中学から高校の時、両親が亡くなる前までやっていた、『僕の夢の中で蝶が舞う~君こそ本物の女神だ~』という乙女ゲーム。通称『夢蝶』。
両親が亡くなった後は、あまりの忙しさにゲームなどやる時間などなく、だんだん記憶から消え去っていたな。転生先に乙女ゲームの中に入るとかどんなラノベだよ。
________今考えると相当意味不明な題名かもしれない。夢の中で蝶が舞ってどうするというのか。うん、変。変だけどあの頃の私は、このゲームに夢中だったのか。若かりし頃ってそうよね。今の方が全然若いんだけどね。
転生したってことはやっぱり悪役令嬢とかの配置なのかしら。それは、ちょっと楽しみかも。どうやって悪役令嬢から抜け出すのか考えるのよね。ええ、みなまで言わずとも分かるわ。バットエンドさえ回避できればそれでよし。さあ、やってやるわよ!
と、勝手に暴走していたが、すぐに自分が悪役令嬢ではないことを知る。
まさか、御令嬢の家がこんなに小さ…じゃなくて、こじんまりとしているわけがない!はあ、モブ中のモブ、平民A?いや、B?C?……どのアルファベットでもいいんだけどね。まあ、気楽でいいけどさ
あ。
と思っていた時期が私にもありました!なんと、ヒロインの妹ではありませんか!
結局モブでした…。