第6話
ウクライナ東部戦線の他、キエフの攻防を巡り北部と西部での戦いが激化する中、日本でもウクライナ侵攻の影響を受けていた。
アメリカ・EUと同調し、日本もロシアに対する経済制裁を実施していたが、それに対してロシア側も北方領土問題を含む日本との平和条約締結に関する交渉の中断を一方的に宣言してきたのだ。ロシアに対する経済制裁の報復であることは一目瞭然であり、日本も「ウクライナ侵攻を含めた力による一方的な現状変更は国際秩序の根幹を揺るがし、国際法違反であり厳しく批判、非難する」と表明し、駐日ロシア大使に対しても「極めて不当なことであり遺憾である」と抗議した。
ウクライナ情勢を巡り日本とロシアの関係が緊張する中、ロシア連邦軍東部軍管区のシベリア方面のロシア軍部隊の一部がウクライナへ向かわされる一方で、極東方面のロシア軍部隊が千島列島とオホーツク海で演習を行った。極東方面の陸軍第5軍、ロシア太平洋艦隊、第11航空軍、北方領土駐屯の第18機関銃・砲兵師団の他に親衛空挺師団と北方艦隊の一部も参加する大規模な演習となり、日本とアメリカに対する牽制の意味もあった。
返還を求めていた北方領土で事前通告も無く大規模な軍事演習を行ったことは日本としても到底受け入れられないことであり、「(ウクライナ侵攻の)この時期に我が国が返還を求めていた北方領土での軍事演習に関しては大変遺憾なことであり、安全保障上の観点から重大な懸念を持って注視している」とロシアに強く抗議した。
極東方面のロシア軍の活動が活発化する中、台湾海峡でも中国軍が大規模な演習を行い、朝鮮半島では北朝鮮軍の大規模な部隊が38度線付近に移動・集結させていた。
極東ロシア軍だけでなく、中国軍と北朝鮮軍の活動に対して防衛省・自衛隊は北海道と沖縄・南西諸島方面における監視体制を強化した。