あの日の初詣
貴方は神を信じますか?
神様は気まぐれだ。
元旦。
なんてことはない近所の神社の初詣。
だけれども、その年はいつもと違った。
ちょっと神様がやる気を出したのかもしれない。
***
あの運命の日。
【美奈】
元旦の朝食の後、美奈は神社に初詣に行った。
お賽銭は500円玉。
美奈のお願いは漠然としたものだった。
『幸せになれますように』
昔から美奈はこういう漠然としたことしか願わない。
幸せになりたい。平和でありますように。無病息災とか。
ただ、その時少し別のことも頭に浮かんだ。
『隆にもっと私を見てもらいたい』
たったそれだけ。
そして隆では美奈を幸せには出来ない。
【涼】
午前零時過ぎて、テレビでつまらない番組が放送されてる頃に涼は初詣に行った。
ここは神社だ、鐘がない。静かだ。
朝はゆっくり寝て居たいので深夜のうちに神社でお参りを済ませた。
5000円放り込み、
『もっと金持ちになりたい』
そう願った。
平凡な会社員の単純な願い。
20年後、涼は小規模ながら会社を構えていた。
経営は借り入れ無しで回せるほど順調。
専務である美人で才女で度胸のある妻の功績も大きい。そして愛娘二人に対して涼は妻が呆れるほど過保護だ。娘が嫁に行くと言ったら大泣きするのは間違いないと妻は予想している。
【隆】
昼少し前に神社に行く。
財布の中の小銭を丸ごと投入。合計291円。
『宮田先生の巨乳を見たい!』
男子中学生なんてこんなもの。
【隆の母】
隆と一緒に来た。
『5』に拘り555円入れる。
『家族が元気でありますように』
そしてすこしだけ、美奈ちゃんがうちの子になれば良いのにとも思った。
隆の嫁と指定はしていなかった。それは現実となる。
次で終わります。