夢にみたもの
私の知人に夢について研究しているEというのがいるのだが彼女とは月に1、2回ほど食事をする仲なのだがその際にいろいろな話を聞かされている。そのほとんどが愚痴なのだがときどき興味深い話が聞けることもあ今回するのはそんな話の一つとして聞いた話だ。
Eは研究の一環として夢について相談事を受け付けているそうで、30過ぎの男が不思議な夢を見ると相談に来たそうだ。彼はその夢をほぼ毎日見るそうで内容はこんな感じのものだそうだ。
場所については夢を見るたびに変わるそうなのだが決まって自分は何かを探しているそうだ。しかもそれが楽しくて仕方がないといった感じでしぜんと笑いが込み上げてくるそうだ。ほとんどの夢は結局何も見つけることなく目覚めるのだが、今朝とうとうそれを見つけてしまったそうだ。
それは四十くらいの女性でそれを見つけた自分は彼女を手に持っていたナイフでめった刺しにしたそうだ。自分はもちろん彼女も刺されながら笑っていてとても楽し気な雰囲気だったそうだ。
だからこうして急遽Eの下へと相談に来たそうだ。Eはその男から調書を取りながら詳しい話を聞いてみた。まずは場所だがどこも覚えのない場所だそうで見つけた女性にしても全く覚えのない相手だそうだ。基本夢というのは記憶をもとに構成されるので覚えのない事ばかりというのは珍しい。
無意識化に記憶していたものが出てきた可能性もあったが聞いた限りでは判断に迷ったそうでひとまずはストレスのせいかもと話してその日はストレスの解消法の話をして男を返したそうだ。
それから丁度一週間後再び男がEの下を訪れたそうだ。変わらず夢を見続けているそうでこの一週間で夢の中で3人もの人を手に掛けたそうだ。
それに新たな発見を今朝したそうで殺した相手を見たのだそうだ。Eは最初知っている人が夢の中に出てきたのかと思ったが男はそうではないのだと言った。夢で殺さした相手を現実で見たと言うのだ。
それもテレビで死体で発見されたと報道されていたそうだ。興奮した様子で語る男をどうにかなだめ、Eはそれは気のせいだと諭したそうだ。夢の記憶なんて曖昧なもので偶々似た顔の人をニュースで見たからそう思い込んだだけだと。
男は完全に納得した様子ではなかったがひとまずその日は簡単なカウンセリングをして男を帰したそうだ。
そうして次にその男が現れたのはさらに1週間後だった。その時の男の様子は今までと違って生き生きとした表情でまるで憑き物が落ちたかのようだった。話を聞いてみるとEの勧めたアロマを使ったら例のあの夢を見なくなったそうだ。今回はその報告に来たそうだ。
しばらく世間話をしているとふと思い出したように男が語りだした。それは今朝みた夢だそうで気づいたら知らない森にいて自分は茂みにしゃがんで隠れているそうだが何故かとても楽しい気分で自然と笑みが零れてくるそうだ。それから特に何も起きることなく目が覚めたそうだ。
男はその夢を気にした様子もなく、雑談して男は帰って行ったそうだ。
私は話を終えたEに「その男はその後相談に来たか」そう尋ねるとEは「ここ一ヶ月くらい来てないわね。悩みがなくなってよかった」そう答えた。
こちらの作品は「百日奇談」の一つとして書かれたものです。
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